No.134 2015年8月

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鳩ヶ谷周辺で見られる野鳥シリーズ (147) 

ケリ(チドリ科) Microsarcops cinereus

ケリは漢字で書くと「鳧あるいは水札」という難しい字になり、読むのも書くのも難しいが俳句などでは希にこの字が使われており、知っていて書いているのだろうか?わざわざ、辞書を引いて書いているのだろうかと思うことがあります。本州の水田、河原、草地などで繁殖し、巣の近くに人や犬・カラスなどが近づくとキリッキリッキリッという感じの鋭い声で鳴きながら頭上を飛び回り威嚇します。大型のチドリの仲間で、遠目に見るとハトに似ているが足が長く、黄色いのが特徴です。

大阪に住んでいる時に新幹線で往復をしている途中で、岐阜羽島から彦根あたりまでの水田地帯を通過する時によく見かけましたが、近年は宅地化が進んだためかケリを見る機会が少なくなりました。

川口市周辺では差間地域の水田で越冬している個体を見ることがありましたが、これも過去の話となりました。

      水札(けり)なくや懸浪したる岩の上  去来

 

自然の記録:

 8月 1日 岐阜県多治見市では今年最高の39.9℃を記録したそうです。庭ではアブラゼミの合唱が1日中続いており、盛夏の感じになってきましたがセミの声の賑やかさは例年に比べて遅いようです。

 8月 4日 今週だけで熱中症で搬送された人が1500人を超えたとか、家の中でも一日中30℃を超えています。外へ出ただけでも、じりじりと焼ける感じがするほどです。オーシイツクツクとツクツクボウシが鳴きだし、カブトムシをようやく見ることが出来ましたが道路上で干からびていました。暑さのためか庭の昆虫類も少なく、アオドウガネ、ツマグロヒョウモン、トウキョウヒメハンミョウ等が目立っています。

 8月 5日 毎日暑さが続いていますが、市内の路上ではアキノエノコログサが咲き始め、オヒシバ、メヒシバ、ヒナタイノコヅチ等が開花していました。庭隅の草地にルリシジミとマメコガネが2匹飛来しました。八幡木地区の道路沿いでは街路樹のエンジュが満開でした。ハナバチの仲間が吸蜜に訪れていました。夜になって、居間の壁を小さなヤモリが這っていました。毎年、生まれているようですが猫にやられたり、ドアに挟まれたりして死ぬものが多いので、ドアや雨戸の開け閉めにはかなり注意をしています。

 8月 6日 庭のボタンクサギに今年もシモフリスズメの幼虫がいました。大きさは10pほどになっていました。いつものことですが糞が落ちていたので気が付いたのですが、それまでは探していても見つかりませんでした。昆虫類は少ないがオオカマキリ、ハラビロカマキリ、コスズメバチ、セグロアシナガバチ、ハラナガツチバチ等が餌の昆虫を探して飛び回っています。

 8月 8日 夕方になって裏庭でハタケノウマオイ(キリギリスの仲間)が鳴きだしました。暑い暑いと言いながらも季節は着実に秋に向かっているようです。ツクツクボウシの鳴き方も数日前に比べ日中でもよく鳴くようになりました。

 8月10日 久しぶりに夕立があり、まとまった雨のおかげで庭の草木も生き返ったようです。夜になっても家の中は30℃を超えていますが、窓から入ってくる風は涼しい風が入ってきました。

雨の降る前に玄関の前にコフキコガネが落ちていました。今年初認ですが、毎年1度は庭で確認しているので、今年もまだ健在であったと喜んでいます。

タマムシの産卵 ショウリョウバッタ コフキコガネ

 8月11日 台所の入り口で、クモの巣にかかって身動きが出来なくなったヒバカリ(10p程の体長)がいました。クモの巣から外してやると、頸を振るようにして暴れまわったあと側溝の落ち葉の影に隠れました。

各所でウスバキトンボ(ベニガラトンボ)が群れるようになりました。お盆の頃になると目立って増えるので、昔の人は、死者の精霊が姿を借りて帰ってくるとみて「ショウリョウトンボ」と呼んだと言うことを、何かの本で読んだ記憶があります。ウスバキトンボは、ほぼアジア全域に生息しており、日本でも沖縄から北海道まで各地で観察されています。

夕方、6時半ころに庭のカキの木でヒグラシが鳴きました。鳴いたのは短く3度だけでしたが、ここ数年声を聞かなかったので嬉しくなりました。ヒグラシは夕暮れに鳴くところから涼しさを感じる鳴き声で、古来より親しまれてきました。このセミに限り「蜩」という漢字があります。

       蜩や夕日の里は見えながら 正岡 子規

今日の夕食では、シジミの味噌汁を飲みましたが、江戸時代の薬学・健康書である「本草綱目」に薬効的な食料として紹介されています。昔から体に良い食べ物とされ、旬は8月頃の土用のシジミと1月〜2月の寒シジミが知られています。

 8月12日 裏庭においてある空き缶回収用の容器の中に50pほどの長さのシマヘビがいました。家人は何度か自転車の荷台やアジサイの根元などで見かけていたようですが、確認したのは初めてです。先日のヒバカリに続いて今夏2種類目のヘビを確認しました。容器の近くで死んでいる昆虫を手にしてみると、コユミアシゴミムシダマシという黒色のゴミムシダマシ科の昆虫で前胸背板に浅い正中溝がある甲虫の仲間でした。旧鳩ヶ谷市内で見たのは初めてでした。

 8月13日 お盆の墓参に出かけて帰宅時に上を見上げるとアジサイが咲いていました。5月下旬に咲いた後で枯れたものが沢山あったので見逃していたのかもしれませんが、8月にアジサイの花を見たのは初めてでした。花の周りをチャイロスズメバチが飛び回っていました。

 夜になって庭隅でルルルルというカンタンの声とハタケノウマオイの鳴き声が聞こえてきました。お盆になって夕方から涼しくなったので秋の虫が少しずつ鳴き始めました。

 8月14日 今夜はジジジジジジジジというササキリの仲間の声がカキの木の近くから聞こえてきました。カキの木の下は下生えの草が茂っているので、見つけるのは大変ですが声だけはよく聞こえてきます。

 8月15日 今夜は7時30分頃より、リッリッリッリッリッと30分以上に亘ってミツカドコオロギが鳴いていました。

 8月20日 リーリーリーリーとアオマツムシが鳴きだしました。この声を聞くと秋を感じるようになります。鳴くセミの声もかなり少なくなりました。

クモの巣にかかったヒバカリ アオマツムシ

 8月19日 ここの所、昆虫類が少ないので久しぶりに秋ヶ瀬公園に出かけました。蒸し暑い一日でしたが流石に環境に多様性があるので生物も豊富でした。特に珍しいものはいませんでしたが、以下のような生物が観察できました。

蝶、蛾の仲間:アゲハチョウ、キアゲハ、クロアゲハ、カラスアゲハ、アオスジアゲハ、ツマグロヒョウモン、モンキチョウ、キチョウ、アカボシゴマダラ、ゴマダラチョウ、コミスジ、イチモンジチョウ、キマダラヒカゲ、ヒメウラナミジャノメ、イチモンジセセリ、キマダラセセリ、ルリシジミ、ベニシジミ、ウラギンシジミ、ヒメアトスカシバ、ミノガ、カノコガ、コシロシタバ、オオミズアオ、ハスミエダシャク、モンクロシャチホコ、ムクツマキシャチホコ、ヒメアシブトクチバ(幼虫類)キイロスズメ、セスジスズメ

トンボの仲間:オニヤンマ、ギンヤンマ、シオカラトンボ、ウスバキトンボ、ナツアカネ

セミの仲間:アブラゼミ、ミンミンゼミ、ホウシゼミ

甲虫の仲間:コクワガタ、カナブン、シロテンハナムグリ、マメコガネ、クワカミキリ、キボシカミキリ、ウスバカミキリ、ウリハムシ、クロウリハムシ、ナナホシテントウ、オオニジュウヤホシテントウ、テントウムシ、

カメムシの仲間:ホオズキカメムシ、ハラビロヘリカメムシ、ホソヘリカメムシ、オオクモヘリカメムシ

バッタやコオロギの仲間:トノサマバッタ、クルマバッタ、オンブバッタ、ショウリョウバッタ、アオマツムシ、エンマコオロギ、クビキリギス、オオカマキリ、ハラビロカマキリ、エダナナフシ、

アブ、ハチ、ハエ、カの仲間::コスズメバチ、セグロアシナガバチ、ホソアシナガバチ、ヒラタアブ、オオクロバエ、ヒトスジシマカ、シナハマダラカ

その他:カナヘビ、アマガエル、ミシシッピアカミミガメ、ジョロウグモ、ナガコガネグモ、オニグモ

野鳥:スズメ、カワラヒワ、ツバメ、キジバト、セッカ、ハシブトガラス、ドバト

 8月22日 クマバチ、スズメバチ、ハラナガツチバチ、オオフタオビドロバチ、ハラナガツチバチ等が庭を飛び回っています。オンブバッタも今年は数が多く、カノコガも飛んでいます。

種類の異なった昆虫でも似た者同士がいます。ハチに似た種類の昆虫は、ハチの仲間に擬態することで身を護っているのでしょう。気を付けて見ると結構似たものがいます。

ヒメアトスカシバ(蛾) キスジトラカミキリ       オオフタオビドロバチ(蜂)

 8月25日 台風15、16号の影響か、ここ2、3日急に涼しくなった感じです。セミの声もわずかに聞こえる程度となりました。ヤブガラシのツルにセスジスズメの幼虫がいて、頻りに葉を食べては体に似合わぬ大きな糞を排泄していました。庭隅ではノシラン、キンミズヒキ、ミズヒキソウ、ゲンノショウコ等が開花しました。

 8月27日 湧水公園へトンボを見に行きました。シオカラトンボ、オオシオカラトンボ、ギンヤンマが幾組も交接しながら飛び回り、産卵をしていました。来年は沢山のトンボが羽化することを期待したいです。アジアイトトンボも数匹飛んでいました。

庭の完熟したイチジクに無数のアリ、サビキコリ、サトキマダラヒカゲ等が集まっていました。イチジクの一部を舐めてみると砂糖の塊でも舐めたような甘さでした。

 8月28日 庭のヤブガラシのツルにセスジスズメの若齢幼虫、柑橘類にアゲハチョウの幼虫、その他クサカゲロウ、ヒメジャノメ、アカボシゴマダラなどが雨もよいの中で飛んでいました。8月31日 25日以降、毎日梅雨空のような日が続いていますが、夜になるとミツカドコオ 

ロギとアオマツムシの共演が賑やかに聞こえてきます。ガラス窓にはヤモリが時々張り付いています。

 

地球温暖化を考える(87)

飯能市 天覧山周辺

天覧山は、昔は「愛宕山」と呼ばれていたが、徳川5代将軍綱吉の時に羅漢像を寄進されたことから「羅漢山」となり、その後明治天皇が軍の演習を視察したことから「天覧山」となった。

今回は、天覧山山麓にある谷津田に目を向けた。谷津田はいくつかあるが、2009年9月にNPO法人「天覧山・多峯主山の自然を守る会」が休耕田約580uを県知事の農地転用許可を得たうえで取得した場所です。天覧山・多峯主山地域は県立奥武蔵自然公園の中にありますが、開発行為が強く規制される「特別地域」ではありません。

守る会の会員らは、1998年から地主の農作業を手伝っていたが、耕作を断念しつつあった地主から土地の売却を持ちかけられてNPOの法人格を取得して土地を購入した後、湿地環境を整えビオトープとして活用している。市街地に接した里山の一角に多様な生物が生息していることが素晴らしい。

昆虫類をはじめとして、ニホンジカ、カモシカ、イノシシなどの大型獣をはじめムササビなども多く生息している。このような里山は大量のCO₂を吸収して涼しさを与えてくれます。真夏の暑さの中でも一歩林の中に足を踏み入れると涼しさ抜群です。 

天覧山麓のホタルの里 鬱蒼とした沢筋 沢の中のイノシシの足跡
ウスイロトラカミキリ キマダラミヤマカミキリ