No.96 2012年6月

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鳩ヶ谷で見られる野鳥シリーズ (109)

トラツグミ(ツグミ科) Turdus dauma

トラツグミは鵺(ぬえ)と呼ばれて暗い森の中でヒー、ヒョーと聞こえる細い声で鳴くため気味悪がられることがあった。「鵺鳥の」は悲しげな言葉の枕詞となっており、トラツグミの声で鳴くとされた架空の動物は鵺と呼ばれ今ではそちらの方が有名になってしまいました。

主に丘陵地や低山の広葉樹林に好んで生息するが、林の多い公園などでも観察されることがあります。積雪の多い地方にいるものは、冬は暖地へ移動するので鳩ヶ谷地域で観察されるのは主に移動の時期か越冬期です。40年以上も前には東川口駅が出来る前の雑木林で夏期にも生息していたことから繁殖していた可能性があります。現在は宅地化されて広大な雑木林の面影もありませんが、毎年サンコウチョウも繁殖していました。トラツグミの食性は雑食。雑木林などの地面で、落ち葉などをかき分けながら歩き、土中のミミズや昆虫類などを捕食することが多い。冬季には木の実も食べています。

体長は30cmほどでヒヨドリ位の大きさ。頭部から腰、翼などの上面は、黄褐色で黒い鱗状の斑が密にあり、それがトラの模様をイメージさせるところからトラツグミの名がついているようです。体の下面は白っぽく、雌雄同色です。

自然の記録:

 6月 2日 家の網戸にチャハマキ、ブロック塀にムラサキツマキリヨトウという蛾の仲間が留まっていました。ジャガイモの花にはキンケハラナガツチバチが飛来しました。家の周りではヒルガオの花も開花し始めました。

 6月 4日 庭ではビロードコガネを久し振りに観察しました。

 6月 5日 先日、アドバチックで紹介された鳩ヶ谷の辻の水田でホウネンエビが発生したとの情報を得て見てきました。ホウネンエビは、鰓脚綱(ミジンコ綱)サルソストラカ亜綱 無甲目(ホウネンエビ目)に属する小型の動物で、エビとは名ばかりミジンコの仲間。水田に残された卵が水を入れることによって沢山出てきます。ハサミのような尾とメダカのように見える目が特徴です。写真を撮ってもなかなかピントが合わないのが難点です。

 6月 7日 湧水公園では初記録となるクロスジギンヤンマが確認できました。ショウジョウトンボ(雄、雌)、シオカラトンボ、オオシオカラトンボ、アジアイトトンボ、モンシロチョウ、アゲハチョウ、ツマグロヒョウモン等も飛んでいました。池の中には大きく育ったキアゲハの幼虫が浮かんでいました。

昨年植栽した3本のハンノキの苗木は順調に生育していますが、かなりの葉がハンノキハムシの真っ黒な幼虫に食べられて惨めな姿になっています。

ここの所、各種のハバチの幼虫が見られるようになりました。アケビの葉にはアケビコンボウハバチ、エノキにはアケビコンボウハバチとよく似ているホソアシブトハバチ、ヘクソカズラにはチャイロハバチ、その他、蛾の仲間でアゲハモドキの幼虫に似たミツクリハバチ(ワタムシを大きくした感じの幼虫)等、いずれも蛾の幼虫なのかと思わせるほど似ているものが多く、ハバチの仲間とは思えないほどです。

ミツクリハバチの幼虫 チャイロハバチの幼虫 ホソアシブトハバチの幼虫

 6月10日 ピラカンサの葉上で蛹化していたウメエダシャクが羽化しました。羽化したばかりの成虫はとても品がある感じがしました。

先日出かけた多摩森林科学園で出会ったオオシマカラスヨトウの幼虫と幼虫の体の中に産み付けられた寄生蜂の幼虫が体を食い破って出てきて蛹になり体にぶら下がっているものをいくつか観察しました。寄生された幼虫は栄養分を吸収されて死に至ります。いくつか見つかった幼虫の一つは体が乾燥して干からびていました。

 6月12日 庭のゲッケイジュの葉にヒカゲチョウが留まっていました(今年初記録)。26日迄毎日飛来していました。カキの木の日陰が好みのようでした。

黒い卵のように見えるのが寄生蜂の蛹 ヨツボシホソバ

  6月14日 クリの花の香りが強く虫が集まっているかなと思って近づいてみると案の定多くの昆虫がいました。クリの花のスイーブにアオカミキリ、ベニカミキリ、アオカミキリモドキ、キバネカミキリモドキ、アカスジカメムシ、ヒカゲチョウ、ルリシジミ、キマダラセセリ、モンシロチョウ、アゲハチョウ、ヒメハラナガツチバチ、アキアカネ、等が集まり、あっという間に1時間が経過しました。クリの花の香りはかなりのものでクリの花の蜂蜜でも独特の香りがします。その他周辺では、ビロードハマキ、ヨツボシホソバ、ゴマフシロギバガ、ウスベニヒメエダシャク、シラオビアカガネヨトウ等の美しい蛾の仲間も見ることが出来ました。

 6月15日 湧水公園では花菖蒲が満開となり都内や近隣の安行地区などからも見に来るようになりました。菖蒲田にはイタチの足跡があり、クロアゲハが足跡の水分を吸水していました。スズメ、カワラヒワ、ツバメなども湧き水の細い流れで吸水をしていました。

池の周囲ではショウジョウトンボ、シオカラトンボ、オオシオカラトンボ、コシアキトンボ、クロスジギンヤンマ等のトンボの仲間が飛んでいました。

 6月17日 子供達が江川で魚採りをしていたので見ていると10cmほどの長さのドジョウがとれて小さな子供達が5人で取り合いをしていましたが、手づかみ出来るのには感心しました。最近は、蝶や蛾で目だつのが温暖化に伴う南方系の種類です。初認日を一覧表にすると以下のようになります。すでに、これらの蝶は普通種として留蝶化しています。      

和    名   初認 年月日   市内での初めての確認場所

ツマグロヒョウモン  

2006年8月17日   鳩ヶ谷小学校裏門付近

ナガサキアゲハ  

2006年9月24日   天神橋付近の芝川

ムラサキツバメ  

2008年1月14日   鳩ヶ谷本町4丁目18付近

アカボシゴマダラ  

2010年9月4日   旧芝川

クロコノマチョウ  

2008年4月26日   西新井宿松山

クロメンガタスズメ  

2010年7月26日   桜町6丁目自宅庭

ビロードハマキ  

2011年6月20日   桜町6丁目自宅庭

ナカグロクチバ  

2010年9月25日   行衛地区

 6月18日 アカタテハが飛来し、ヒカゲチョウが常連となりました。湧水公園の斜面林ではトキワツユクサが群落を形成していました。

 6月20日 台風4号の通過の影響で各所で木の枝が折れていました。桜町6丁目の貸し農園脇の道路端のエノキでアカボシゴマダラの幼虫、チャの木の陰ではアシブトクチバ(蛾)、法性寺の墓地ではビロードハマキ、クロアゲハ、アゲハチョウ、コミスジ、サトキマダラヒカゲ、モンシロチョウ等、湧水公園ではオオシオカラトンボ、シオカラトンボ、クロスジギンヤンマ、ツマグロヒョウモン、藤棚の下のイスにアカボシゴマダラの1令幼虫、等がいました。庭のカキの木の下でアトモンサビカミキリが歩いていました。

 6月22日 朝からの降雨が止んだので庭に出てみるとゲッケイジュの葉にキクキンウワバという蛾の仲間が交接していました。茶褐色で、前翅に大きな黄色い紋がある蛾で、黄緑色の紋の部分は光があたると金色に輝きますが、交接していたため枯れ葉があるのかと思って近づいたところ前後に足がついているので蛾であることが解りました。

 6月24日 湧水公園の環境整備作業を行っていたら大きなウシガエルが2匹飛びでてきました。声は聞こえていましたが、コウホネが密集していて姿を見るチャンスがあまりありませんでした。開水面が広がった途端にシオカラトンボ、オオシオカラトンボ、ショウジョウトンボ、ウスバキトンボ、クロスジギンヤンマが集まってきました。今まで生息していなかったニシキゴイ、オオカナダモ等人為的に放流されたものも目立ちます。

 6月26日 庭ではヒルガオが枯れてコヒルガオが開花しました。コカマキリの幼生が歩いていましたが今年は羽化したところを見られませんでした。

 6月27日 久し振りにゴマダラカミキリを観察、ホオズキの葉裏でニジュウヤホシテントウ数匹が脱皮していました。近くの葉裏では宝石のような奇麗に輝く卵が沢山産み付けられていました。夕方になってアキアカネが3頭およびオオシオカラトンボが庭に飛来し休んでいました。近くの荒れ地ではオオマツヨイグサが開花しました。

湧水公園ではノシメトンボを初認、コシアキトンボ(♂)、24日に整備した水路ではオオシオカラトンボが交接あるいは産卵したりしていました。その他アカタテハ、キタテハ、アゲハチョウ、クロアゲハ、スジグロシロチョウ、ヤマトシジミ、ウラギンシジミ等が飛んでいました。帰宅途中のラクダ坂付近の林縁でイノコヅチの葉上にクモの糸にからまった体長5mmのチビコブカミキリの仲間を見つけました。あまりにも小さいので最初はカミキリムシの仲間とは思いませんでした。

 

鳩ヶ谷から消えた生物・消えつつある生物 60

   アサギマダラ(マダラチョウ科)

 渡りをする蝶として知られており、日本列島を縦断し、沖縄や台湾まで延べ2000キロb以上を飛んでいくことが知られています。2012年には香港まで2500`飛んだことが確認されました(読売新聞)。翌年春には、その逆のコースを日本に渡ってきます。近年その不思議な旅が明らかになりつつあります。1962年に尾瀬に出かけたおりには、普通に飛んでおり帽子でも採集することが出来ました。しかし、1962年頃から蝶の採集が禁止の方向に向かいました。アサギマダラは高原地帯で繁殖し、幼虫はガガイモ科の植物を食べることが知られています。平地では渡りの時期に記録されることがありますが、近年は温暖化の影響か東京都下や中心部でも観察される機会が多くなってきました。

1983年には「大阪のアサギマダラを調べる会」という会が発足しました。

 

地球温暖化を考える(51)

仮称・はとがやの湧き水の里に関連して(13)

公園内の水路を確保するための環境整備作業を数日間行いました。公園脇の水路が一部止水されていましたが、コンクリートの塊や汚泥などを除去して水路が環流できるように作業を行いました。その作業中に汚泥の中から小さなヤゴが出てきました。流れのない汚泥状の中でも生育しているのには感心させられました。通水した後にはメダカが泳いでいたり、オオシオカラトンボが頻りに産卵したりしていました。しかし、定期的に水路の管理をしていかないとヘドロが堆積するので力仕事が増えそうです。

昨年、11月に見沼田んぼで育成しているタコノアシの種子を散布しておいたところ発芽してきました。囲いをして名札をつけておきましたが、雑草と間違われて抜かれてしまいました。それでも遅れて発芽してきたものがあり、何とか生育し始めているようです。現在、6cmほどの高さに生育しています。

タコノアシ育成中 発芽したタコノアシ 菖蒲田
池のヘドロや芥の除去作業 通水された水路

 昨年植樹した3本のハンノキの葉が枯れているので見るとハンノキハムシが増殖していました。以前からあるハンノキの大木3本がハンノキハムシにやられているので自然の成り行きに任せるしかないかと思っています。

ハンノキハムシに食べられたハンノキ  葉に産み付けられた卵塊
ハンノキハムシの幼虫 ハンノキハムシの成虫