No.57 2009年3月

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 鳩ヶ谷で見られる野鳥シリーズ (70)

ツグミ(ツグミ科) Turdus naumanni

ツグミは、繁殖地のシベリアから10月頃に日本に渡来して、越冬し、4月末から5月初め頃まで見られます。渡来初期は、山地の林等に群れて、イチイ、ヌルデ、ヤマウルシなどの木の実を好んで食べていますが、次第に低地へ移動し、芝生や畑地など開けた場所で生活し、ミミズなどの小動物や木の実などを食べています。10月中旬頃、頭上からクィーという声が聞こえると、今年も来たかと懐かしい気分になります。庭で越冬していたツグミは8年間同じ個体が来てキンモクセイの茂みで塒をとっていましたが9年目には別の個体になりました。野生で8年も生きるということは相当長生きの個体です。小鳥類では4〜5年が長生きと言われるくらいです。

ツグミは個体差が多く、翼の模様や胸の縦斑が、赤、黒、淡色など様々ですが、よく観察すると興味深い鳥の一つです。

ツグミは、霞網が全盛期の時代大量に捕獲され、焼鳥屋などに卸されていたことがありますが、今は、霞網も全面禁止となり、網を張っているだけでも鳥獣保護法違反になります。

 

自然の記録:

 3月 1日 本町でフキノトウが開花し、ヤブカンゾウの芽が出てきました。

 3月 3日 庭の垂れ梅にメジロが飛来し、頻りに蜜を吸っていました。

 3月 4日 昨夜来の降雪は、日陰に僅かに残っている程度でした。隣家の藪でウグイスが移動していましたが、まだ春告げる声は聞こえてきませんでした。

 3月 6日 今日も1日中雨が降っていましたが、スズメがびしょぬれになりながら路上で餌を啄んでいました。ブロック塀の隙間に枯れたエノコログサがあったので、こぼれた種子でも啄んでいたのでしょう。

 3月 7日 三光稲荷保存樹林の枝が剪定されて林が明るくなりました。先日まで、通路の舗装工事が行われていましたが、同時に枝も剪定したのか?日中でも薄暗い道なので防犯上の問題かも知れませんが残念。夏に枝や葉が茂ってくれることを期待しています。

鳩ヶ谷中央病院のイチョウの頂でシメ2羽がピシッピシッと言う感じの声で鳴いていました。

15時30分、中央病院方面より我が家の上空をオオタカの雌が1羽通過しました。市内での記録は初めて(112種目)です。

 3月 9日 桜町3丁目の水道局付近でアオジ2羽を観察、鳩ヶ谷市内では今年初めての観察記録です。

家の周りでは、カラスが繁殖期に入ったのか雌雄が追いつ追われつ、空中で飛び回っています。

 

 3月12日 ムラサキハナナが早くも咲き出しました。そろそろモンシロチョウも出始めるかなと期待しています。

 3月16日 安行慈林の保存樹林地でウグイスが鳴き始めたとの情報をいただきましたが、バードリサーチの季節前線調査では、大阪が一番早く関西を中心に中国地方では2月1日〜20日にかけて記録が集中しています。関東でも早いところでは2月11日以降記録されています。

 3月17日 今日は5月初旬の温かさとか、カタバミ、ノゲシ、ヒメオドリコソウ、カラスノエンドウ、タネツケバナ、ハコベ、クサイチゴ、などが市内の各地で開花しました。

 3月18日 本町2-3(水道局ポンプ場)横の空き地および本町2-4民家脇敷地でツクシがそれぞれ300株ほど出ていました。ゴミ山が土で覆われ沢山のツクシが元気に顔を出しています。破壊されつつある市内の環境でも健気に生きている植物を見ると自分も元気を貰った気分になります。ポンプ場脇のヤナギも開花し、ジョウビタキの雌が出入りしていましたが、そろそろ旅立ちの季節です。

庭で体長10ミリ前後のトラフコメツキ(コメツキムシ科)が今年初記録。虎状のしま模様があるのが特徴です。アリの動きも活発になり、ヒメオドリコソウの花序やカの遺骸などを一生懸命に運んでいます。

ツクシとヤナギ ゴミ山に出てきた元気なツクシ トラフコメツキ

 3月19日 今日も暖かい1日となり、キチョウ、スジグロシロチョウ、成蝶で冬越しをしたキタテハなどが飛び回り、隣家でようやくウグイスの初鳴きを聞きました。芽吹き始めたアジサイにツマグロオオヨコバイが止まっていました。

 3月21日 茨城県の鹿嶋に転居したHa氏より頂いたヒゴスミレが開花後3日で満開となりました。冬の間は野良猫の座布団代わりに使われていたので発芽するかどうか心配していましたが、見事に咲いてくれました。市内ではモモ、サクラ、ボケ、ロウバイ、ハクレン、コブシなどが一斉に開花しました。

本棚とブックケースの隙間にヤモリがいました。じっと動かずにいたのでそのままにしておきました。

 3月23日 江川の土手も緑で覆われ、カラシナの黄色い花やアラセイトウの紫の花などが満開となり奇麗になりました。オナガガモ雄1、カルガモ2羽が泳いでいましたが、自転車・大量の新聞紙・廃材などの大型ゴミの投棄が目立ちます。折角、水の浄化を行っていても心ない住民がいるのは残念です。

開花したヒゴスミレ ヒメオドリコソウの花序を運ぶアリ

 3月24日 寒々とした日であるが、近所の道路脇で交雑タンポポが数株開花しました。ナガミノヒナゲシの若葉も目立ってきました。

 3月28日 コンポストを空けて山積みにしている堆肥置き場にツグミが来て、足で掻きだしゴミが散乱。生ゴミは既に変化して匂いも少なくなっているのでかえって空気の入れ換えができて良い堆肥になるかなと思っています。こういう場所はハエの蛆やミミズ等の餌生物が多いので渡去までの間に十分な腹ごしらえができることでしょう。

伸び始めたクコの若葉にムナグロナガハムシがいました。そのうち、若芽はボロボロにされることでしょう。

シジュウカラは繁殖期に入ったらしく2羽で仲良く訪れるようになりました。

黒いネクタイが太いシジュウカラの雄 カクモンヒトリの仲間

 3月30日 ゴミ箱の隅にアオオサムシの遺骸が1つ、ゴミ箱の底に生きているものが1頭見つかりました。コウガイビル3隻も一緒にいました。日溜まりではオヘビイチゴとキケマンが開花し、今年初記録となるモンシロチョウが庭を横切って飛んでいきました。

17時頃、我が家の上空をツバメ4羽が通過しました。鳩ヶ谷市での観察は今年初記録となりました。ちなみに2000年以降の記録を見ると以下の通りです。

2000年3月27日 南3丁目畑上空

2001年4月13日 芝川(鳩ヶ谷高校付近)

2003年3月29日 桜町6丁目

2004年3月29日 桜町6丁目

2006年4月5日  桜町6丁目で初認

2007年3月29日 坂下町で初認

2008年4月3日  桜町6丁目

 3月31日 5時30分頃畳の上でカクモンヒトリ(蛾)の仲間が死んでいました、蛾の仲間も早くも活動を始めたようです。コンフォール東鳩ヶ谷の敷地内でナガミノヒナゲシが開花、早いものは散り始めていました。  

 

鳩ヶ谷から消えた生物・消えつつある生物 21

 レンゲ(マメ科)はゲンゲとも呼ばれ漢字では蓮華草、紫雲英と表されます。俳句では春の季語で、かつては鳩ヶ谷市内でも水田に緑肥として栽培されていました。花はハチミツの源となる蜜源植物として利用されています。若芽は茹でて、おひたし、汁の実、油炒めなど食用にもなり、かつては民間薬として利尿剤や解熱剤などに利用されることがあります。よく知られているのは窒素肥料としての“根粒バクテリア ”です。 田植えの前に田圃を耕し、レンゲをそのまま鋤きこんで肥料としました。化学肥料を使わない時代の自然の知恵です。

 

地球温暖化を考える(13)

 武田信玄の三分水

地球上にある水量は,海水と淡水を合わせて約14億km3あるといわれています。

国連水会議資料によると、海全体水量に占める割合は海水約96.5%、淡水は3.5%しかありません。  

その淡水も、氷雪、地下水、凍土地下水および大気中水蒸気が淡水量の99%以上を占めていますので、人が利用できる淡水量はごくわずかで、地球上の約0.8%に過ぎません。

今年も冬期の降雪量は少なく、夏場の水不足が懸念されますが、江戸時代には水戦争などもあり、武田信玄の時代でも水は農民にとって貴重なもので山から流れ出る水の配分をどのように行うかは難しい選択であったようです。八ヶ岳の山麓にある三分水公園には湧き水を三分水する施設があります。

三分一湧水では、毎日 8500トンもの湧水が流れ(写真右側)、その名が示すとおり、湧き出た水の流れが、ここを起点に、三方向へと分かれていきます。

写真左のように湧水の水源から流れ出た水が、分水マスにより、3方向へと分かれ流れて行く様子が見てとれます。

分水マスの中に三角柱が見える 豊富な湧き水が流れ出ている

どこにでもありそうな水の流れなのですが、この三分一湧水の違うところは、この分水マスに「三角柱」が立っていることで、水源から流れてきた水がこれに当たり、左右へ大きく分かれていくようなしくみになっています。

これは、水争いが絶えなかった下流の三方の村が、農業用水の取り合いで、争い事を起こさないように、三つの村に平等に湧水を分配できるように、武田信玄が造らせたものといわれています。

見た目には、この三角柱があっても無くても、マスが大きいため、ほぼ同等に三方向へ水は流れていく感じなのですが、この“しかけ”が平等感を感じさせます。 三角柱に当たった水は、左右に分かれて行き、このしくみならば、誰が見ても、文句は言わなかったことでしょう。

単純なことのようですが、現在でも納得のいく、目で見てわかる、視覚に訴えるすばらしいアイデアに、信玄の知恵の深さを感じます。

“限りある水を汚さず、無駄にせず、大事に利用していきたいものです。”