No.83 2011年5月  

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『郷土はとがや 67号』より 最新記事

  「鳩ヶ谷の生物十四 クイナの仲間

  「鳩ヶ谷のタンポポの変遷2

  「御鷹場と鳥獣保護員制度

鳩ヶ谷で見られる野鳥シリーズ (96)

アオバズク(フクロウ科) Ninox scutulata

青葉の頃に南から渡ってくるところからアオバズクと名付けられたといわれている。鳴き声はホウホウホウと聞こえるところから、地域によってはホウホウ鳥と呼ぶところもあるようです。餌の種類は豊富でコガネムシ、タマムシ、カミキリムシ、ゴマダラチョウ、蛾の仲間、イエコウモリ等多種多様です。特に、街灯の明かりに集まってくる昆虫類を狙って効率よく採餌します。巣の下や止まり木としている枝の下には餌食となった生物の残骸やペリット(不消化物)が落ちているので、どのような生物が生息しているかをうかがい知ることが出来ます。10年ほど前までは市内でも地蔵院や法性寺の樹林地でも繁殖をしていましたが、現在は稀に通過する時に声が聞こえる程度です。        

緑豊かであった鳩ヶ谷市がこのような小型のフクロウでさえ住めなくなるような環境になるとは夢にも思いませんでした。

 

自然の記録:

 5月 2日 久し振りにゆっくりと庭の昆虫観察を行いました。狭い庭ながら多種多様な植物が生育しているので、昆虫類もそれなりに飛来するようです。昨年隣家の200坪ほどの庭にあった雑木を伐採したために甲虫類の飛来が目立って減少しました。

観察されたのは、アミメアリ、クロヤマアリ、クロオオアリ、オオヒラタエンマムシ、ミツボシツチカメムシ、マルカメムシ、ニジュウヤホシテントウ、ナナホシテントウ、トホシクビボソハムシ、サビキコリ、マルガタゴミムシの仲間、ニホンミツバチ、マガリケムシヒキ、チュウレンジバチ、ニホンヒゲナガハナバチ、シマバエの仲間、モンシロチョウ、ナミアゲハ等が観察されました。

 5月 4日 今日は暖かい天気に恵まれ、庭の昆虫類も活発に活動していました。ブロック塀ではクロフヒゲナガゾウムシ、キケマンの葉上ではキイロナガツツハムシ、ナナホシテントウやハラビロヘリカメムシなどが数カ所で見られました。また、アリを狙ったワカバグモが見事にクロヤマアリを捕獲しました。

ハコベの葉上ではクロウリハムシが交接していました。頭部と胸部が赤みがかった黄色で、上翅と脚は黒いハムシで、あらゆる環境に生息し、人家周辺でも見られる普通のハムシ。カラスウリ類の葉を好んで食べ、エノキでは毎年多くの成虫が飛来してます。幼虫は地中にいて、ウリ類の根を食べて育ち成虫で越冬するといわれていますがまだ越冬中の成虫はお目にかかったことがありません。

近所のマサキにはミノウスバという蛾の幼虫が大発生、マサキやイチョウの葉が丸坊主にされるほど食欲旺盛でした。

夜になって台所のガラス窓にヤモリが這っていました。今年初めて姿を見ることが出来ました。

アリを捕らえたワカバグモ マサキを食べるミノウスバ クロウリハムシ

 5月 6日 ホソヒラタアブがトマトの支柱に留まっていたので正面から撮してみるとトンボのような顔をしていました。顔だけ見ていると、まるでアカトンボの顔かと思うくらいよく似ています。

 5月 8日 今日は今年初めての真夏日となる温かさでした。垂れウメの枝を剪定していたところ、尺取り虫の仲間が歩いていました。ウメエダシャクの終齢幼虫で体を色々な形に伸縮させながら移動していました。スミレの鉢ではツマグロヒョウモンの小さな幼虫がいました。また、今年初めてアオスジアゲハ、クロアゲハ、ツマグロヒョウモンの雌が庭に飛来しました。

ラクダ坂脇の林の縁ではウラシマソウの大きな株が1株花をつけていました。毎年数株出ているのですが今年は雑草を抜いた時に抜かれてしまったのか1株のみでした。

ホソヒラタアブ ウメエダシャク ネズミモチハバチの幼虫

 5月13日 数日来の降雨も止んで、スジモンヒトリの雌がブロック塀に留まっていました。

 5月15日 法性寺の敷地内で40年ぶりにキンラン(埼玉県絶滅危惧種TB類)を確認しました。鳩ヶ谷市内で残っているのは恐らくこの場所だけでしょう。ギンラン(絶滅危惧種U類)も3株が分散して見つかりました。いずれもよく残っていたものです。

湧水公園ではナガサキアゲハの雌、ナミアゲハ、アオスジアゲハ、ツマグロヒョウモン、モンシロチョウ、ヤマトシジミ等の蝶類、マガリムシヒキ、セイヨウミツバチ、ナガメ、ササグモ、ジョロウグモ等を観察できました。植物ではアメリカフウロ、アカバナユウゲショウ、オオイヌノフグリ等が満開となり、草むしり後ということもあり日本産の植物が見あたりませんでした。

また、バナナツリーとも呼ばれるカラタネオガタマ(トウオガタマ)の花が咲いていました。この木は「招霊の木:オキタマノキ」と呼ばれており中国原産の樹種で、甘い香りがします。

 5月16日 コンボウヤセバチが姿を見せました。イトトンボのような形をしていて、なかなか留まらないので写真が撮れませんでした。

 5月19日 クサイチゴの実が赤く熟してきました。その葉上ではササグモ、ギンメッキゴミグモ、マミジロハエトリ等のクモ類が活発に活動していましたが、ムシヒキアブの仲間にササグモが捕らえられていました。庭の片隅でも弱肉強食の世界があります。

昨年までは無かったナガミノヒナゲシが我が家にも生育し開花しました。ゲンペイコギク、アメリカオニアザミ等もいつの間にか庭の住人になっていますが、アメリカオニアザミはトゲが危険なので、見つけるとすぐに駆除をしています。 

 5月20日 先月、食べられる野草を掲載したところ、四国の鳥仲間の、そのまた友人よりカキドオシのパスタの作り方をご教示いただきましたので紹介します。

 > 生葉をすりつぶせばできます。
  > 保存用には私の作るようなバジルのジェノベーゼと同じ作り方(塩・
  > リーブオイル・ニンニク・チーズ・松の実を入れる)もいいけど、
  > フレッシュなうちに楽しむならシンプルに塩のみの味付けがおすすめ。
  > 乾燥してお茶にしても利尿作用があり結石・糖尿病・気管支炎などに効
  > 果あると言われています。

カキドオシ(垣通し)は、シソ科の植物で、古くはカントリソウ(子供の疳によく効く)と呼ばれており、更に壺草あるいは坪草とも呼ばれていました。

鳩ヶ谷博物誌のような非常にローカルなものでも全国的に見ていただいているのは嬉しいですね。

*  今日はもう一つ特別ニュースです

安行慈林にある両親の墓に墓参に出かけた帰途、近くの樹林でゴマダラチョウと一緒に飛んでいるウスバシロチョウを観察し、ビックリです。数年前に平林寺の林で見かけたことがありますが、川口・鳩ヶ谷市内では今までに観察したことがなかった蝶です。本来は山の方に生息している蝶ですが自然に飛来してきたものか、人為的に放蝶されたのかはわかりませんが?

 5月21日 今年は少し遅いのかなと思っていましたが、庭でスジグロシロチョウの姿が目につくようになりました。

 5月23日 シャガの葉にメイガの仲間が留まっていました。夜になって別のメイガの仲間が窓ガラスに留まっていました。

 5月25日 ネズミモチの葉でウメエダシャクの幼虫が蛹の準備のためか繭の糸を数本出していました。数日中に蛹になるかも知れません。別のネズミモチの葉裏ではネズミモチハバチ?の仲間の幼虫がいました。また、トウネズミモチハマキワタムシという4mmくらいの大きさのワタムシが寄生していました(葉を萎縮させて巻いた内側で生活し大量の綿状のロウ質物質を分泌するそうです)。ウメの木にはムギワラギクオマルアブラムシ、ツバキの葉にはコミカンアブラムシというアブラムシが沢山付着していました。

トウネズミモチハマキワタムシ
が寄生
コクワガタの雌 ムギワラギクオマルアブラムシ

 5月27日 桜町2丁目のE氏より、コクワガタ雌の情報をいただきました。市内からはずいぶん激減した甲虫類ですがまだ僅かに残っているようです。

明日の環境講習会で使用するため、庭で作っている堆肥を掘り起こしていたところ、年末に潜り込んだと思われるクロメンガタスズメの蛹がありました。触ると、嫌々するように体をぴくぴくと動かしていました。堆肥を採取した後に残りの堆肥をかぶせておきました。恐らく10隻以上の蛹がいるものとおもわれます。

 5月28日 環境講習会の会場に持ち込んだ庭の堆肥の中からスジクワガタの雌、コメツキムシ、オカダンゴムシ、ミミズ等が現れて参加した子供達は大喜びで手づかみしていました。このような生物にでも興味を示す子供達は良いですね、と参加していた大人達の感想でした。

 5月31日 台風の雨風も漸くおさまり、良い天気になりました。庭で育てている小松菜が全て丸坊主になっているので、近づいてみると真っ黒なカブラハバチの幼虫が群がっていました。4月〜5月中旬までは我が家で食べていましたが、後半は全て幼虫の餌となりました。来るものを拒まずの庭ですので農薬も使わず自然のままに任せています。

 

鳩ヶ谷から消えた生物・消えつつある生物 47

ヒゲブトハナムグリ

コガネムシの頭にトナカイの角を乗せたような感じのハナムグリです。この特徴は雄だけで、雌は普通のコガネムシと同じような形をしています。5月頃に良く姿を見せるハナムグリの仲間ですが、最近では市内で姿を見ることが稀になってきています。市内から草原が消失したのが原因の一つと考えられます。草原というと雑草の原っぱというイメージが強く、市議の中には公園の雑草を全て除去して、土を入れ替えるという発言をしている人もいるそうですが?

公園は子供達の唯一の遊び場であり、球技だけが子供の遊びでは無いことを考えて欲しいものです。生物多様性が叫ばれている昨今、小さな昆虫の居場所も考えるのも議員さんのお仕事ではないかと、トナカイさんもいっていると思います。

 

地球温暖化を考える(38)

原発と温室ガス 「25%削減」の撤回が不可欠だ(4月5日付・読売社説)

「環境省の南川秀樹次官が、「2020年までに1990年比で25%削減する」という日本の温室効果ガスの削減目標について、「年限、削減量とも見直しの対象になる」との考えを示した。東京電力の福島第一原子力発電所の事故を受けた発言だ。地球温暖化対策を推進する省の次官として、現状を見据えた妥当な認識と言えよう。原発は発電時にほとんど二酸化炭素(CO2)を出さない。温室効果ガスの排出を削減するうえで不可欠なエネルギーだ。政府は、エネルギー基本計画の中で、09年に約65%だった国内原発の稼働率を、20年までに85%に引き上げ、さらに、9基の原発を増設する方針を決めている。今回の事故により、CO2排出削減の前提となるこうした政策の遂行が、当面、困難になったと言わざるを得ない。電力不足を補うためには、原発よりもCO2を多く排出する火力発電などへの依存度を高めねばなるまい。温室効果ガスの排出源の状況が大きく変わる以上、政府にまず求められるのは「25%削減」の撤回である。そのうえで、エネルギー政策全体の見直しと同時に削減目標についても再検討すべきだ。25%削減は、鳩山前首相が国内の合意なしに打ち出した。2大排出国である中国と米国を含む「すべての主要排出国による公平な枠組みの構築」と「意欲的な目標の合意」を削減の前提条件としているが、数値だけが独り歩きしているのが現状だ。国内だけで25%を削減しようとすれば、省エネ設備の導入などで年9・6兆円の追加負担が必要だとの試算もある。経済活動に悪影響を及ぼすとして、産業界からの批判も強い。東日本大震災からの復興には経済の活性化が大切だ。25%削減に拘泥することは、復興への足かせとなる恐れがある。福島第一原発事故は、京都議定書に続く13年以降の枠組み作りにも影響するだろう。各国の原発政策に変化が生じれば、排出削減量も変わってくるからだ。今年末の気候変動枠組み条約第17回締約国会議(COP17)では新たな削減ルールが決まる予定だ。日本が25%削減を掲げたままでは、極めて不利な削減義務を負わされかねない。25%削減の撤回が急がれる理由である。(2011年4月5日01時19分  読売新聞)」

この発言の趣旨や理由はわかるが、非常に短絡的な発言ですね。将来的・長期的な展望に経って計画しているはずの温暖化防止対策が、地震と津波の影響とは言え人為的なミスが多い問題もかかえていますので、簡単に出来ませんというのもおかしな話である。今だからやれるのではないかという逆の発想にならないのだろうか。今後の復興に際して再生可能エネルギーの割合を増やし、古くなっていく原子炉を順次廃止あるいは大規模な緑化を行うなど25%削減目標を達成する方法は幾らでもあるはずである。

@ 日本全土の海岸線に100m幅以上の緑の防波堤(森林)を

A 地球温暖化防止とバイオエネルギー

バイオエネルギーが地球温暖化対策として注目されている根拠は、それが二酸化炭素を排出しない、カーボンニュートラルなエネルギー源である点にあります。

勿論、バイオマスをエネルギー利用する際、例えば燃焼する際には二酸化炭素が発生するが、その量はそのバイオマスの起源である植物が成長する過程で大気中から固定した二酸化炭素の量に等しい。つまり、ネットで二酸化炭素排出はゼロである。これはバイオマス資源をエタノール、メタノール、バイオディーゼルなどの液体燃料として用いる場合でも本質的に同じである。もともと、バイオエネルギーはエネルギー源として再利用できる動植物から生まれた資源である「生きた燃料」です。震災で出た多くの廃棄物もバイオマスとして有効である。

4月10日現在、津波により海水に使った水田や原発により高度汚染された地域の作物の作付け制限が打ち出されているが、これらの地域でもナタネ、トウモロコシ、ヒマワリあるいはムギや米を作付けして当面の間はこれらの作物をバイオエネルギーの材料として国が買い上げる方法もあるのではないだろうか。これからのエネルギーを考える上でも重要なことで、第一次産業者にとっては人の口に入るものも、バイオエネルギーになる材料も貴重な収入源となり、今後の農業の発展にも繋がるのではないでしょうか。