No.130 2015年4月

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鳩ヶ谷周辺で見られる野鳥シリーズ (143)

チュウヒ(タカ科)Circus spilonotus

チュウヒはタカの仲間で主に河川や休耕田などの広い葦原に生息しています。ヨーロッパ南部から、シベリア南部あるいはサハリンなどに広く分布し8亜種に分かれているようです。

チュウヒは英名ではEastern Marsh Harrierといい、東部に生息する沼チュウヒとでもいう名前が付けられています。中央アジアからヨ−ロッパ、北アフリカに分布するヨ−ロッパチュウヒWestern Marsh Harrierとは近縁種である

関東地方では冬鳥ですが、一部繁殖しているものもあるようです。翼を浅いV字型に保って滑空したり、ヨシ原の上をすれすれに飛んだりして鳥や小型の動物などを捕食します。翼の模様は老若男女で多くの個体変異があり、似た種類との識別に苦労することがあります。土の塊や低い棒杭などに止まることが多く、巣は水辺に近い乾燥したアシ原や原野などに営み、アシの枯れ茎を高く重ねて大きな巣をつくります。鳩ヶ谷周辺では芝川第一調節池で毎年2〜3個体が越冬しています。このようなワシタカの仲間が生息できる環境が創出されたことは、都市化の進む県南部地域にとって今後は市民の憩いの場所になるのではないかと思っています。

 

自然の記録

 4月 1日 東縁見沼代用水沿いに新郷の文化放送まで桜並木が続いており、満開で折からの風で桜吹雪も味わいました。途中数か所にユキヤナギが群生して真っ白で、まるで淡雪のような感じでした。

豊田の森ではオオアラセイトウが群落をつくり、竹林の開けた場所にオオタカの食痕と思われるドバトの羽毛が散乱していました。湧水公園ではメダカが群れていました。冬の間はあまり目立ちませんでしたが、水がぬるんできたので活発になってきたようです。

コンフォール東鳩ヶ谷の敷地内ではカラスノエンドウやナガミヒナゲシ(ヨーロッパ原産)、マツバウンラン(北アメリカ原産)等が開花し、タンポポが至る所で開花していました。その中の112株を観察したところ、カントウタンポポ7株、セイヨウタンポポとカントウタンポポの交雑種が105株ありました。

 4月 2日 前川町に住むS氏より、セミの抜け殻の写真が送られてきました。比較的新しい感じでしたが、写真の上の2つは、抜け殻の色が濃くて触角が毛深く、第3節が第2節の1.5近くあることからアブラゼミ、下の色の薄い抜け殻は、触角の毛が少なく、第3節は第2節とほぼ同じ長さで細いことからミンミンゼミの抜け殻のようです。昨年羽化したものと思われます。

 4月 3日 一日中強い南風が吹いていましたが、庭ではニリンソウが1株開花しました。また、キケマンが5株開花しました。ヤマトクロアリも活発に活動し始めました。

昨年のセミの抜け殻 渡ってきたコチドリ コンフォール東鳩ヶ谷のサクラ
オオアラセイトウの群落 オオカワジシャ ツマキチョウの雄

 4月 4日 赤山歴史自然公園予定地を歩いてきました。建設資材の高騰?などを理由に昨年、10月に火葬場建設の入札業者が全て降りてしまったことから、現在は赤山調節池を埋め立てた後、建設工事が進んでいませんが、PAエリア隣接区域を残して周辺の土地の取得、がほとんど終了したことから、植木畑は更地になり、大池の予定地は湿地化していました。埋め立てた後の更地には早くも夏鳥であるコチドリ6羽が飛来して繁殖行動に入っていました。湿地には、アオサギ、ダイサギ、カルガモ、タシギなど、周辺の草地ではムクドリ、ツグミ、カワラヒワ、ヒヨドリ等、残っている数本の古木ではアリスイがよく囀っていました。そろそろ渡去が近いようです。タンポポやヒメオドリコソウの群落している原っぱでは沢山のモンキチョウやモンシロチョウが飛び交っていました。

帰宅途中の市街地では飛来したばかりのツバメ6羽が飛び交っていました。

 4月 6日 今日は暖かい一日となり、旧芝川周辺を散策、三ツ和公園では桜の花の花吹雪を浴びながら花見をしている人立ちが大勢いました。カモ類は殆ど旅立ち、ヒドリガモとコガモが僅かに残り、冬鳥のツグミやオオジュリンが残っていました、川面ではツバメに混じり旧鳩ヶ谷市内では珍しいイワツバメが5羽飛んでいました。飛んでいる方向を見ていると岸辺の土をとって塩入橋の橋桁を出入りしていたので、近づいてみると古巣が5巣ありました。昨年から繁殖をしていたものと思われますが、繁殖は初記録となりました。旧芝川では外来種のセイヨウアブラナ、セイヨウカラシナ、オオカワジシャの群落があり、ツマキチョウ(100頭以上)、モンシロチョウ、モンキチョウ、ベニシジミ、ヤマトシジミ、キタテハ、アゲハチョウ等が飛んでいました。

テントウムシやオオツマグロヨコバイ等が目につきました。その他、シマヘビが温かい植え込みの上で昼寝をしていました。散歩の人が通っても全く動かずに往復1時間の間で同じ場所にいました。ミシシッピアカミミガメは青木水門から青木橋の間で日向ぼっこをしている個体をカウントしたところ100頭でした。また、対岸のオギ原の中に疥癬症に罹患した丸裸状態のタヌキがいました。

抱卵し始めたツバメ ヒトリシズカの群落 イカリソウの花

 4月 8日 雪交じりの冷たい雨が降る中、桜の花びらが風に舞い冬鳥のシロハラが我が家の庭で採餌していました。4月の降雪は何年振りでしょうか。スズメも餌がないのか散りかけた桜の木に集まっていました。

 4月11日 一日中小雨が降る寒い日でした。買い物の途中の民家の庭にレンギョウのような黄色い花が咲いていました。レンギョウはすでに花が終わっているのにと思って近づいてみると、オウバイという花で別名「迎春花」とも呼ばれています。ニワトコの白い花も所々で咲いていました。

 4月12日 今日は久しぶりに晴れ間が出たので、安行方面を歩いてきました。イチリンソウで有名になった斜面林はヤブジラミが満開状態でしたが、肝心のイチリンソウは殆ど咲いていませんでしたが、来週18、19日はイチリンソウ祭りということで10名ほどの人たちが準備をしていました。万葉植物園に隣接した斜面林ではイチリンソウ、ニリンソウ、イカリソウ、ヒトリシズカ、ムラサキケマン等の野草やミズバショウ、ヒメミズバショウ等が開花していました。隣接する北側の斜面林は伐採されて、斜面が露出して大雨が降れば崩壊するのではないかと思うくらいに削りとられていました。

安行原の密蔵院のサクラは終わりましたが、隣接する安行原自然の森(平岡山)では斜面全域に亘ってヤマブキが開花して見事でした。この地を知っている人たちが散策に来ていました。ここではエナガ2羽が巣材運びをしていたので繁殖する可能性があります。

赤山歴史自然公園予定地の樹林地では、遠目にも美しい黄金色の花が咲いていました。木の種類がわからなかったので近くまで行くと、花ではなく木の葉と垂れ下がった雄花でした。ナラによく似ていましたが、ナラガシワという種類でした。ナラの仲間なのにカシワのような葉をつけることからということのようです。 「カシワ」は食べ物を盛る葉「炊葉(かしは)」に由来し、昔は食べ物を乗せることができる広い葉の一般的な名前だったようです。近くの湿地ではアライグマの足跡が沢山ありました。

安行原自然公園(平岡山) ヤマブキの群落

 4月13日 昨日一日晴れただけで今日も雨、植物にとっては良いお湿りとなり庭の草花も生き生きとしています。開花中の植物はシャガ、クサイチゴ、キケマン、ニリンソウ、ムベ、交雑タンポポ、等です。芽生えが始まっているのはヤブカンゾウ、ミズヒキ等ですが、このように書くと武蔵野の雑木林で観察しているような感じですがシャガとムベ以外は自生です。所用で出かけた途中の芝川ではオオバン、ユリカモメ、ヒドリガモが各1羽が雨の中で盛んに活動していました。辻のバス停横の水田ではレンゲの花が咲いていましたが、その脇では昨年埋め立てた水田に住宅が数件建ち始めていました。鳩ヶ谷の町でレンゲを見ることが出来るのは、そう長いことではないかもしれません。

鳩ヶ谷本町2丁目の樹林地の斜面では、昨年伐採された時に消失したと思っていたマムシグサ6株が芽生え、1株は花をつけていました。

 4月15日 庭の数か所でハルジオンが開花しました。隣家の庭ではツタバウンランが蔓延っています。今日はかなりの強風が吹いていましたが、いくつかの公園では八重桜の仲間が開花し始めています。アゲハチョウも目立ってきました。

 4月16日 豊田の森の竹林で、タケノコ掘りを行いました。5人で20本ほど抜きましたが簡単に抜けるものもありましたが、竹の根が複雑に伸びているものもあり力仕事になり良い運動になりました。林内ではオオアラセイトウ、フキ、ウラシマソウが盛りでした。オオアラセイトウの花の上をツマキチョウが飛びまわっていました。

竹林内には上の駐車場から投げ入れられたゴミが多く、ガラス片、ビニール、ポリ、瀬戸物のかけらなど多くごみ拾いが大変です。竹林へ入るたびにゴミを拾っていますが、投げ入れられるゴミは後を絶ちません。

家の窓辺にキリウジガガンボが止まっていました。少しずつ昆虫の姿が目についてきました。

  4月17日 朝、家の前のコブシの木からドラミングが聞こえました。アカゲラが木をたたく音でコゲラがコツコツ木をたたくのとは異なり良く響いていました。姿を見つけるのと同時に飛んでしまったので残念でした。移動途中でたまたま立ち寄ったものと思われます。庭の落ち葉の下からはツチカメムシが現れました。

午後から豊田の森でタケノコ掘りを行いました。6人で20本ほどを採取しました。竹林の中のオオアラセイトウが咲く叢でクビキリギスに出会いました。

 4月19日 桜町6丁目でムサシアブミが開花しました。毎年咲いていますが株が増えていないようです。オニタビラコも開花しました。湧水公園ではオオジシバリが数株開花しました。オニタビラコ、オオジシバリ共に路傍の花として当たり前にあった植物ですが市内では消滅する可能性があります。

 4月21日 庭の土を掘っていたところ、シロイチモンジヨトウの幼虫、セアカケバエ、セスジナガカメムシ、オカダンゴムシ、コガネムシの仲間の幼虫、ミミズの仲間等が出てきました。

 4月22日 今日は朝から庭をクロアゲハ(初認)とアゲハチョウが飛び交っていました。クコの葉にはヨツボシハムシ、クロウリハムシ、ニジュウヤホシテントウが飛来、クサイチゴの花にはキンケハラナガツチバチが飛来しました。

近くの法性寺の墓地内ではクロアゲハ、アゲハチョウ、キチョウ、モンキチョウ、コミスジ等が飛び回り、ウラシマソウ2株が開花していました。

夜になって台所に、シロモンオビヨトウという蛾の仲間が侵入してきました。写真を撮ってから外へ放しました。

 4月22日 ブロック塀にアトモンサビカミキリという1pほどのカミキリムシがいました。写真を撮ろうとしたところ叢に落ちて消失。

芝川第一調節池の近くにある川口自然の家に行ったところ物置小屋の入り口に、1.5m以上もある大きなヤマカガシガいました。尻尾を持ったところ小屋の下のもぐりこんでしまいました。昆虫類も多くなりアオスジアゲハ、ギンイチモンジセセリ、アカタテハ、コミスジ、アゲハチョウ、ベニシジミ、ルリシジミ、イチモンジセセリ、モンキチョウ、モンシロチョウ等の蝶やクマバチ、クロビロードコガネなど。野鳥はカモ類やタカの仲間が移動したようで全体的に種類数や個体数が減少、カメラマンもいませんでした。植物ではセリバヒエンソウの青い花が目立ちました。

 4月26日 今日もアトモンサビカミキリがブロック塀の間に落ちていた朽木の上を歩いていました。

庭隅においておいた如雨露の淵にクロモンキノメイガという1pにも満たない小さな蛾の仲間が止まっていました。マガリケムシヒキはイチジクの枝に止まり餌を狙っていました。

 4月29日 久しぶりに安行の植物振興センターならびに興禪院野鳥の森を散策しました。4月初めに比べて昆虫類が目立ってきました。ヤマトシリアゲ、キチョウ、モンキチョウ、アゲハチョウ、ナガサキアゲハ、ヤマトカギバの成虫と幼虫、スジモンヒトリ、ミノウスバの幼虫、ウリハムシ、クロウリハムシ、アオメアブ、林の中ではキンランやホウチャクソウ等が開花していましたが、以前に比べて数は減少していました。近くの道路わきの朽木ではヤマトシロアリが沢山集まっていました。

キンラン ツボスミレ ホウチャクソウ

 

地球温暖化を考える(83)

前野宿川調節池

 前野宿川は川口市の安行地域を流れる河川で江川と合流しています。この地域は大昔は海、そして数十年前までは泥深い水田地帯でした。調節池に続く草地では昭和35年頃までは平地では珍しいオキナグサが自生していました。工事中の前野宿調節池の場所は、工事が始まる前に規模の小さな調節池がありましたが、近年では家屋が蜜集しており、雨が降ると調節池があふれて必ずと言ってよいくらい洪水になる地域でもあります。

 調節池の工事は、利根川水系前野宿川準用河川改修事業として、川口市が総事業費16億円をかけて事業化しており、最終的には総貯水量50600㎥の調節池となる予定です。今期には周辺の公園化整備(約4600u)が行われる予定になっています。この工事は、前野宿川調節池と一体的に「川口市の緑の基本計画」に基づく緑化重点地区の近隣公園として整備されます。どのような公園になるかわかりませんが、川口市には自然公園としての考え方はないので、都市公園として整備されることが考えられます。後背地にある雑木林を活用して緑の多い公園化を期待したいところです。質の良い緑地公園をつくることが出来れば、水辺と緑地の創出により周辺地域の気温が少しでも低下が期待されるのではないかと思います。

後背地の斜面林ではスズメバチに似たヨツスジトラカミキリ等も生息していました。また、改修工事が行われる以前の調節池では、絶滅危惧種のコガネグモが生息していました。今後どのような生物が生息可能になるか楽しみにしています。

 

参考:準用河川とは、一級河川の区間で都道府県知事などに委託される区間を「指定区間」と呼びます。また、一級水系内のそれ以外の川は(1)市町村が管理する「準用河川」と(2)その他の「普通河川」に分類されています。同じように、二級水系や単独水系でも「準用河川」・「普通河川」が区別されています。

北側から見た調節池の概要
南側から見た概要 前野宿川か(東側)ら見た概要