No.46 2008年 4月

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鳩ヶ谷で見られる野鳥シリーズ (59)

カシラダカ(ホオジロ科) Emberiza rustica

漢字で書くと頭高、ホオジロによく似ていますが、ホオジロよりも少し小さく、頭部に冠羽があるところからカシラダカという名がついています。学名のrusticaは“田舎の”と言う意味で、静岡地方ではショットという方言で呼ばれることもあります。シベリア方面で繁殖し、冬は日本などで越冬します。特に河川敷や荒れ地などで比較的大きな群れで行動します。

鳩ヶ谷市内では大きな群れを見ることはありませんが、上空を通過、あるいは芝川の河川敷などの芝地で採餌しています。餌は主にイネ科植物の種子を好んで食べます。

夏羽は頭上と頬が黒く、腰は赤褐色で胸には赤褐色の縦縞があります。冬羽は夏羽に似ていますが、全体に色調が薄くなります。

自然の記録:

 4月 1日 近所のブロック塀の穴にシジュウカラが出入りしていました。恐らく巣作りの最中で、しばらくすると我が家の庭で家族連れが見られるのではないかと期待しています。

 4月 3日 我が家の庭で開花している植物は、草本ではヒメオドリコソウ、オランダミミナグサ、オオアラセイトウ、ナズナ、キュウリグサ、ハコベ、ハルノノゲシ、カントウタンポポ、交雑タンポポ、カラスノエンドウ、キケマン、クサイチゴ、園芸植物ではムシカリ、ヒヤシンス(2年前に水栽培が終わった後に、庭へ植えたもの)、木本ではソメイヨシノ、レンギョウ、モクレン等が咲いています。

初認日を確認することが出来ませんでしたが、桜町5丁目の民家の軒下にツバメの糞が落ちていました。既に巣作りが始まっているようです。

 庭先の月桂樹が白い小さな蕾をつけ、木の上部にあったものは開きかけていました。10年以上前に植えたのですが、開花したのは今年が初めてです。

クサイチゴの花 サクラの蜜を吸うヒヨドリ ツマグロヒョウモンの幼虫(Ha氏)

 4月 4日 竹の葉の間からヤモリが落ちてきて、顔に当たりましたがヤモリの方が慌てていました。ツマキチョウが近所の庭と我が家の庭を飛び回っていました。

桜町のHa氏より、見事に咲いたヒゴスミレと花を食べるツマグロヒョウモンの幼虫の画像が送られてきました。2006年頃より市内で多く観察されるようになりましたが、パンジーやスミレの仲間を栽培している家庭が多いので、昨年から時々幼虫が観察されます。

 4月 6日 昨日・今日と暖かい日が続き、埼玉植物園の縁でムラサキケマン、御獄神社付近の路肩でオヘビイチゴの黄色い花が咲いていました。

コンフォール東鳩ヶ谷の住人より、昨年営巣した場所で2羽のツバメが巣に入っていましたとの情報を得ました。今年も無事巣立ってくれるとよいのですが。

 4月 7日 庭に咲いているタンポポの花を調べてみたら、セイヨウタンポポ6株、交雑タンポポ31株で、交雑タンポポが優勢となっていました。キケマンも2株が開花しました。

 4月 9日 Ha氏より見沼代用水のいつもの場所で6時前にカワセミを観察、7時頃に新道の坂で法性寺方面よりウグイスの囀りを聞いたとの情報を戴きました。最近、博物誌を見る人が増加したのか、多くの方から情報が得られるようになりました。

 4月11日 一日中、冷たい雨が降る中、電線でキジバト2羽が求愛行動、アオジがまだいてくれたようで梅の木に何度か飛来しました。隣家の庭からオナガが飛び立ち、上空を通過。ここ2ヶ月ほど全く群れを見ることがなく心配していましたが、繁殖に入ったのかも知れません。

 4月12日 コンフォール東鳩ヶ谷の敷地内でカラスノエンドウ、スズメノエンドウ、セイヨウタンポポ、交雑タンポポ、ハルノノゲシ、ジシバリ、ナガミノヒナゲシ、カタバミ、キュウリグサなどが満開となり、お花畑の様相をしています。

6日に情報を戴いたツバメも旧巣を完全に補修しており、いつでも産卵できる状態になっていました。桜町6丁目の民家の古巣でもツバメを確認することが出来ました。これから巣の補修に取りかかることでしょう。

(鳩ヶ谷市内ではありませんが、境界を接する西新井宿の林で越冬をしたクロコノマチョウを観察しました。この種類も温暖化の影響か、少しずつ確認例が増加していますが越冬例は初めてでした)

 4月13日 今日は冷たい雨が降ったり止んだりの天気でした。江川沿いに20羽前後のツバメが忙しく飛び回ったり、電線で休んだりしていました。鳩ヶ谷市内で群れを見たのは久し振りのことです。恐らく渡ってきたばかりなのでしょう。合流点ではいつもの場所にカワセミがじっと止まっていました。毛長川ではカルガモ(1)、コガモ(♂2,♀2)、調節池でもコガモ(♂2,♀2)とコサギがいました。近くの工場の屋根ではスズメが巣作り中、八幡木の氷川神社ではハシボソガラスが巣材を運搬していました。

4月15日 庭のムラサキハナナにナガメが4匹、2匹は交尾をしていました。ナガメは“菜の花”につくところから“菜につくカメムシ”というのが名の由来のようです。

今年もクコの葉にチャバネツヤハムシが発生しました。ニリンソウの株が大分増え、開花は2輪だけでしたが真っ白い綺麗な花をつけてくれました。

Ha氏宅のヒゴスミレにいるツマグロヒョウモンの幼虫を見せて頂きました。そろそろ蛹になりそうな雰囲気でした。また、ヒゴスミレの鉢の周辺はアケビで囲まれ見事な花が咲いていました。

辻のHi氏より、庭でコゲラのドラミンゴを聞き、ベニシジミを観察したとの情報を得ました。辻バス停前の田圃は“菜の花畑”で、時々2頭のヤギが草を食べている長閑な風景を見ることが出来ます。

アケビの花  ナガメ 越冬したクロコノマチョウ

我が家の庭には多くの野良猫が徘徊し、子育ての時期には一度に10匹ほどが庭を自由に走り回っています。今日は、激しい雄の闘いが数分に渡り繰り広げられました。

両者絡み合いから離れた後は、じっと見つめ合い、劣性となった猫は少しづつ後ずさり。尻尾を下げて退散していきました。

激しく咬み合い静止 右側が劣勢となる 左側の猫が少しずつ後ずさり

 4月16日 市役所へ行ったついでに周辺のタンポポを調べたところ、57株全てが交雑タンポポでした。坂下町ではカントウタンポポ1株、交雑タンポポ63株、市役所脇の鉄塔敷地内ではヘラオオバコの群落、坂下町12-13付近の駐車場にはカラスノエンドウの小群落がありました。

本町3丁目-5付近の路肩のスミレにツマグロヒョウモンの幼虫がいました。鳩ヶ谷市内で完全に定着したようです。本町2丁目の御獄神社付近で今年もクサノオウが開花しました。家の物置脇でヤモリの5cmほどの幼生を見つけました。

辻のHi氏より、イエコウモリが来園(今年の初認)し、19日には、大雨で水が溜まった田んぼにカルガモが2羽飛来したとの情報をいただきました。

 4月21日 風の中、2頭のナミアゲハ(初認)が庭を飛びまわり、1頭は羽化したばかりなのかハコベの茎に止まってじっとしていました。春型の蝶は小型で可憐な感じがします。ホオズキの葉にはニジュウヤホシテントウが止まっていました。辻のHi氏よりツマキチョウが飛来したとの情報がありました。また、ナミアゲハも初認とのことでした。

スミレとツマグロヒョウモン幼虫 ナミアゲハの春型 巣材を銜えるムクドリ

 4月22日 桜町のHa氏より貴重な情報を頂きました。鳩ヶ谷市内にもまだコジュケイが生息していました。「今朝、5時40分ころ、散歩に家を出たところでコジュケイの声が聞こえました。2時間ほど散歩をして、らくだ坂下にある放置農地の南側の雑木林を覗きました。林の中で植物を見ながら歩いていると、クックックと低い鳴き声が聞こえたので、そちらを見ると数メートルのところをコジュケイが歩いています。向こうもこちらに気づいていて、携帯を構える暇もなく飛び立ちました。

見沼用水のKPを覗くと、ゴイサギがトンネルから飛び出して対岸のフェンスに移動。そこへ川下からカワウが飛んできて着水。しかし、こちらに気づいてすぐにまた川下へ飛び去り、次ぎにカワセミが飛来。いったんトンネルへ入ったのですが、すぐに江川方向へ飛び去りました。」

 4月23日 三光稲荷から地蔵院周辺を散策、地蔵院の竹林では札所巡りを整備中でした。珍しくホウチャクソウの群落やウラシマソウが開花し、ヤブコウジもありました。スダジイの木に冬鳥のシメが止まりましたがすぐに飛び去りました。作業をしている方に聞いたところ、この周辺で時々フクロウを見聞きするとの事でした。中央病院の敷地内ではキュウリグサとカキドオシの群落やオオジシバリ等が開花していました。桜町5丁目から6丁目にかけてタンポポの調査をしたところ60株全てが交雑タンポポでした。

地蔵院近くの駐車場では、ムクドリの雄が嘴に巣材を銜えていました。

札所を整備中  ホウチャクソウの群落 ウラシマソウ

 4月24日 雨の合間を縫って隣家のシュロの木にオナガ4羽が飛来、何かを頻りに啄んでいました。

植木鉢のスミレの葉裏に2mm大のツマグロヒョウモンの幼虫を見つけました。数日前まで4cmほどになった終令幼虫がいたのですが、ブロック塀を這っているのを見た後は姿が見えなくなりました。何処かで蛹になっているのではないかと思っていますが、無事蝶になって姿を見せてくれることを期待しています。

 4月27日 エノキの新芽が穴だらけになっていたので、近づいてみるとクロウリハムシが発生、50匹以上もいて、それぞれが葉を丸く囓って穴を開けていました。この様に多くの個体を見たのは初めてでした。クロウリハムシは幼虫で越冬し、ウリ類の根を食べるようです。

今年初めて庭に飛来したヤマトシジミもカタバミやタンポポの花の周りを飛んでいました。

 4月30日 スミレの葉の上に淡黄色の小さなハムシがいました。よく見ると背中に黒い4つの斑点があり、5mm位の大きさのキベリクビボソハムシでした。このハムシの模様は地域によって色々な形があるようです。また、さらに小さなアカイロナガハムシが1匹、スミレの葉に飛んできました。ムラサキハナナの根元近くには真っ黒なダイコンハムシが20匹ほど発生しました。よく似たツチカメムシと少し大きなマルガタゴミムシが地面を歩いていました。

クコの葉上ではチャイロツヤハムシがいつの間にか増えてきて、あちらこちらで交尾の最中です。ケブカブチヒゲカメムシが10匹、クコの葉に集まっていました。アゲハチョウが庭の柑橘類の間を飛び回り産卵していました。小さな庭でも、それぞれの生態系が成り立っています。午後になりベニシジミも庭に飛来しました。

隣家のクリの木にオナガが5羽飛来して頻りに何かを食べていました。いつも本町2丁目方面から飛来し、北方向へ飛去しています。少なくなったオナガですが市内で永住してくれる事を願っています。

鳩ヶ谷から絶滅した生物・絶滅しつつある生物 10

ツバメの姿が市内から消えつつあることを本誌No.3で紹介しましたが、その後の調査結果の報告です。グラフは1973年から1984年までと1995年以降の農地の変化および巣の数を示していますが、ツバメの巣は殆ど増加せずに横ばい状態で推移しています。

(1985年から1984年の間は、大阪に転居していたため未調査の部分です)

農地は毎年少しずつ減少していき、いずれは0に近づくものと思われます。その時ツバメの巣が市内にあるのか?地球温暖化が叫ばれる中、市内の緑地は言葉の上でのみ保護が叫ばれ、現実は“人と生物が共存”できる状態ではなくなりつつあります。

ツバメは毎年3月から4月初めにかけて渡来し、5月初め頃に産卵し、2週間ほどで孵化します。市内では、産卵から孵化・巣立ちまでの間に毎年カラスによる食害が多く、巣立ち率が低いのが難点です。

営巣数が低く、巣立ち率が悪いと言うことは、ツバメが増加する可能性が少ないと言うことです。

 

地球温暖化を考える(2)

氷河により崩壊し流れ出た土砂

前報で紹介した氷河の崩壊と流出した土砂が、長年の間に堆積した河口域の写真です。氷河の崩壊は目の前でおきています。崩壊する氷河と共に多くの土砂が流れ出し、下流域に干潟状に堆積します。この干潟では野鳥は歩くことが出来ますが、人は歩くことが出来ません。人が入ると体が沈んでいき、毎年数人の人がヘリコプターで救助されるそうです。従って地元の人たちは、干潟の中へはいることはしません。写真の中で細く流れる帯状と水たまりに見える部分が水の流れです。氷河の崩壊による影響は奥地の森林にも影響を及ぼし始めています。山岳氷河が完全に溶けてなくなると、海水面の上昇に少なからず影響があると言われています。

余談ですが、4月22日、国立科学博物館で行われているダーウイン展を見に出かけました。“種の起源”説を発表するまでの苦労や、航海記録などが克明に掲示されていました。ダーウインの時代に比べると現在の環境の変化に隔世の差があることを改めて認識しました。

崩壊する氷河 河口域を埋める干潟状の土砂