No.38 2007年8月

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鳩ヶ谷で見られる野鳥シリーズ (51)

タマシギ(タマシギ科) Rostratula benghalensis

タマシギの♀(撮影場所:葛西臨海公園:藤波かよ子)

1964年の夏に鳩ヶ谷高校(旧NHK放送所)の湿地で繁殖していた雛1羽が高校生によって保護されたのが、鳩ヶ谷市における唯一の記録です。この場所は、殆ど人が入らなかったために市内でも豊かな自然環境が残されていました。今、この様な環境を市内に求めることは出来ません。
 タマシギは他の鳥と異なり雌の方が綺麗な色をしており、雌は産卵すると雄に任せて、他の場所で別の雄と交尾します。1雌多雄の繁殖習性を持ち、雄が子育てをしています。卵から孵った雛を連れて一列になって歩く姿は子煩悩な親を演じています。休耕田などで繁殖しますが、夕方や朝方にコォーコォーコォーと鳴くので、その存在がわかります。

自然の記録:

 8月 1日  相変わらずアオバハゴロモとベッコウハゴロモのかなりの個体数が庭中を飛び回っています。また、ヒメハンミョウも少なからず生息しているようです。8月に入り、にわかにアブラゼミの声が増加したという感じで、我が家の柿の木でも一日中鳴いていました。

クロアゲハも健在で、隣家のサンショウから我が家のユズへ飛来し、カキ、ウメの木の下を通って、また、隣家の方へ消えていくというパターンで蝶の道が出来ているようです。

柑橘類の若葉にはナミアゲハやクロアゲハが産卵したので、卵や孵化したばかりの小さな幼虫が10匹ほど見つかりました。エノキの剪定をしていたところコガネムシの仲間のアオドウガネが2匹枝から落ちて来ました。近くにいた子猫がすぐに飛びつきましたが、アオドウガネが動いたところ、子猫は驚いて後ずさりしました。近くの草むらでは小さなショウリョウバッタが草陰を移動していました。

 8月 2日  本町3丁目の見沼代用水沿いの斜面林付近でハグロトンボが飛んでいました。今年2例目です。ヨウシュヤマゴボウが本町のヤクルト販売店近くの路傍で開花していました。

 8月 3日  コンフォール東鳩ヶ谷の現在空き地になっている場所があります。1時間ほど生物の調査をしてみました。調査をしている時に、近所の人が、鳩ヶ谷市内は開発優先で自然が無くなってしまったので、ここを公園にしてくれると良いのだがと言っていました。全くその通りですね。

植物:ヒメジオン、ノゲシ、ハルシャギク、ハキダメギク、アカバナユウゲショウ、マツヨイグサ、カタバミ、ツルマメ、シロツメクサ、ムラサキツメクサ、カヤツリグサ、メヒシバ、オヒシバ、ムラサキエノコロ、エノコログサ、アレチギシギシ、ハコベ、ツユクサ、ブタクサ、シロザ、アカザ、アメリカセンダングサ、ヤブガラシ、クサギ、アカメガシワ、ヨウシュヤマゴボウ、コニシキソウ、ヒメムカシヨモギ、チチコグサモドキ、シバ、イヌタデ、イヌホオズキ、ノボロギク、キクイモ、アオジソ、シソ、セイヨウフウチョウソウ、キバナコスモス、オオアレチノギク、ブタクサ、アワ、アメリカオニアザミ、ナルコビエ、タケニグサ、マルバルコウソウ、ネズミムギ、ワルナスビ、サンジャクバーベナ、アブラススキ、植栽(ムシトリナデシコ、ホトトギス、シャガ、ヒマワリ)、ヒメヒオウギズイセン、以上54類

昆虫類:ヤマトシジミ、モンキチョウ、キアゲハ、ナミアゲハ、ミンミンゼミ、アブラゼミ、ウスバキトンボ、シオヤアブ、ショウリョウバッタ、セスジツユムシ(10種類)

野鳥:カワラヒワ、スズメ、ハシボソガラス、ハシブトガラス(4種類)

草地より北西(新井宿方面をのぞむ) 草地より赤山方面をのぞむ

 8月 5日 コフキコガネが本町2丁目の2ヶ所の道路上で死んでいた。ミイデラゴミムシ5匹がビン・カン容器入れの中に落ちていました。スジベニコケガ(薄いオレンジ色の地に、朱色の細かい筋模様を持つコケガの仲間で、羽に濃褐色のV字線が入っています。図鑑によれば幼虫は地衣類や落葉を食べて育つそうです。)が、月下美人の葉に止まっていました。初めはドクガかと思いましたが綺麗な蛾です(7日の朝も観察されました)。

スジベニコケガ トビイロスズメの交尾

 8月 6日 桜町の知人より、8月3日から5日にかけて、家の中へコウモリが入り込んだとの情報がありました。恐らくイエコウモリかと思います。桜町6丁目周辺でも20頭くらいが飛んでいるのを見かけますので、この周辺にコウモリの塒があるのではないでしょうか?

 8月 7日 中央病院の桜の林でヒグラシが鳴いたとの情報を頂きました。私はまだ聞いていませんが、近年はヒグラシの声を聞く機会が少なくなりました。薄暗い林が無くなったのが影響しているのではないでしょうか?

 8月 8日 ラクダ坂脇の樹林地内でチジミザサ・ヤブミョウガの小群落、ヨウシュヤマゴボウの群落、ミズヒキなどが見られました。オニドコロの葉にコミスジチョウが1匹とまっていました。反対側の休耕畑ではヨシ(アシ)が繁茂し、タケニグサが大きく伸びて開花していました。

桜町6丁目の駐車場ではスベリヒユが開花し、庭のハゼランの花にヤマトシジミが数頭飛来し吸蜜していました(昨晩より月下美人の花が4つ開花:昨年より1ヶ月早い)。

 8月10日 台所のドアの前で、トビイロスズメが交尾中2時間以上に亘ってじっと留まっていた。羽に触っても嫌々するような感じで体を動かすのみ。8cm位の大きな蛾で灯火にも時々集まってくる。里中学校の裏にあった休耕田の植物を見に出かけたが、宅地になっていました。何という開発の早さであろう。破壊された自然は元には戻らない「覆水盆に返らず」。

19時に庭の柿の木で、今年始めてのツクツクボウシが鳴きだした。

 8月11日 ツバキの木に枯れ葉に似た蛾の仲間ホシヒメホウジャクがとまっていました。動かなかったら、ツバキの枯れ葉と見誤るところであった。幼虫はヘクソカズラを好むので、庭の何処かで孵化したのであろう。カキとサクラの木にアブラゼミが集合、町中のセミが集まってきたかと思うほど、一枝に10匹くらいまとまって鳴いていると騒がしいくらいである。

オオゴミムシも暑さに負けずに庭を徘徊していました。小さなコオロギの仲間のシバスズもいました。芝生などにいる小さいコオロギの仲間ですが、あまりにも小さいので見逃しやすい昆虫です。

スベリヒユ シバスズ

 8月12日 本町2丁目の坂道に咲いているオシロイバナにトビイロスズメの雌がとまっていました。近くの壁にはカナヘビがいました。道路上でキアゲハの雌が車にでも轢かれたのか死んでいました。数カ所にカラスウリの白い花が開花しています。

家の門扉にヤモリがとまっていましたが、太陽に照りつけられた熱い門扉によくとまっているなと感心しました。21時頃トイレのドアにシバスズがはりついていました。昨日は洗面所で見かけたので2泊目を決めたようです。

 8月13日 昨晩から羽を休めていたのかプランターのトマトの葉にツマグロヒョウモンの綺麗な雄がとまっていました。八幡木2丁目のN氏宅で、県道東京鳩ヶ谷線の拡幅に伴って暗渠化された新田井掘に生育していたセキショウが消失したと思われたが、移転時に底土を客土した庭から発芽し、無事生き延びていました。また、ムラサキサギゴケの白花であるサギゴケが群生していました。帰宅後、トウキョウダルマガエルを狙ってきたらしくアオダイショウがいたと連絡がありました。また、昨年11月にN氏宅の庭で鳩ヶ谷市で103種目となるノゴマを観察したとの情報を得ました。ノゴマは北海道で繁殖する夏鳥ですが移動の時には都市公園などにも立ち寄ります。ナガサキアゲハも2006年から時々飛来すると言っていました。

市内には暗渠化された用水や悪水が網の目状に張り巡らされています。もともと水田地帯であった鳩ヶ谷市内には農業用水が多数ありましたが、現在は無用の長物と言わんばかりに忘れ去られています。この用水路にはかつて多くの生物が生息しており、洪水時にも機能を発揮していました。地球温暖化が騒がれている現在、使われていない用水を復活させれば、市内の温暖化対策にも有効ではないかと思われます。

桜町のHa氏より、毛長川と見沼用水の合流点でアオサギを観察したとの情報がありました。路上に散水した場所にルリシジミが2匹吸水に来ていましたが、1匹は人に踏まれたのか哀れな最後でした。

 8月15日 辻のバス停前にある比留間家の水田の調査を行ったところ、市内では見られなくなった田圃の植生が残っていました。鳩ヶ谷市内で田圃を維持するのは大変ですが、是非つづけてほしいと思います。

“とんでん”に隣接した鈴木家の屋敷林は更地になり、マンション建設予定地の看板が立っていました。ああ、ここも無くなってしまったかと、思わずため息が出てしまいました。

帰宅途中、鳩ヶ谷駅前の歩道橋に立ってみると、右も左もコンクリートの砂漠地帯、都市計画の街作り案には“みどり豊かな街作り”と、まことしやかに唱われているのに現実は“ああ、それなのに、それなのに”という何処かで聴いた歌の文句のようです。

水田で1時間ほど行った観察では、以下の生物が観察されました。

植物:シソクサ、オモダカ、コナギ、イボクサ、セリ、タカサブロウ、チョウジタデ、カンガレイ、コゴメガヤツリ、チャガヤツリ、アオガヤツリ、ヌマガヤツリ、ウシノシッペイ、スベリヒユ、センダングサ、ヨメナ、メヒシバ、アレチウリ、アオゲイトウ、イヌホオズキ、ヨウシュチョウセンアサガオ、アオウキクサ、等

昆虫類:アジアイトトンボ、シオカラトンボ、ウスバキトンボ、キアゲハ、ナミアゲハ、アオスジアゲハ、ヒメアカタテハ、キマダラヒカゲ、キマダラセセリ、ヤマトシジミ、ニイニイゼミ、アブラゼミ、ツクツクボウシ、カナブン、ツマグロヨコバイ、クロウリハムシ、フタモンアシナガバチ、等

野鳥:キジバト、ヒヨドリ、オナガ、ハシブトガラス

夕方、家の窓ガラスに5mmくらいの虫が歩いていたので、虫眼鏡で観察するとクロフヒゲナガゾウムシという甲虫でした(桜町6丁目)。

水田南側より 水田の反対側の畑地

 8月20日 カナヘビが孵化したらしく、毎日数匹を観察している。大小様々であるが、今の所、ネコにはやられていないようだ。辻のKさんより朝4時30分頃からヒグラシが鳴いたとの情報を頂きました。以前は市内でも薄暗い林がありヒグラシの声も多く聞かれましたが近年は減少しましたが、今年は3件の情報を頂きました。

 8月22日 コンフォール東鳩ヶ谷〜桜町6丁目周辺で、アオマツムシ、サトオカメコオロギが鳴きだしました。特にコンフォール東鳩ヶ谷の東端の斜面では鳴く虫の合唱会が行われているようです。

 8月27日 庭のヤブガラシの花に、ツマグロヒョウモンの雌、ヒメアカタテハ、ナミアゲハ、ヤマトシジミ、等が飛来し、クコの枝にノシメトンボ、物干し竿にシオカラトンボが飛来しました。アブラゼミの声は大分少なくなりましたが、ツクツクボウシがよく鳴いています。

家の周囲にはハゼランの花が30株以上開花しており、年々増加しているようです。

 8月28日 早朝、庭のトマトの葉にツマグロヒョウモンの雄がとまっていました。ヤブガラシの花にはマメコガネ、ヒラタアブ等が飛来し、ツツジの枝にオオカマキリの卵鞘がありました。夜は、幾分、街の気温が下がってきたのか、アオマツムシの声が涼しげに聞こえるようになりました。虫の声は、熱い暑いと言いながらも秋の気配が漂っています。

 8月30日 いつも情報を頂いているHa氏より、ハクビシン観察の情報を頂きました。観察場所は鳩ヶ谷市内ではありませんが、過去に市内でも観察されていることから情報として提供致します。Ha氏は、毎朝、早朝ウオーキングを行っているので、カワセミもよく観察しており、早起きは“三文の得”があるようです。

観察場所は、「文化放送の正門から150mほど下流の見沼桜並木です。左岸の車道を上流に向かって歩いていると、道路のコンクリートの縁をこちらへ歩いてくる小動物がいました。こちらに気づくと脇のサクラに登り出しました。(中略)  はじめはタヌキかと思いましたが、すぐに顔の白線からハクビシンだとわかりました。カラスが2匹、ハクビシンの周りで、さかんに鳴き騒いでいました。モビングというより、あわてふためいているという感じでした。」

鼻筋が白い 木登りも上手 太太い枝の下奥にハクビシン上はカラス

鼻筋が白いハクビシン(白鼻芯)は雑食性で、木登りも上手です。6月には川口市赤井の調節池付近でも2頭が観察されています。一時はSARSの原因ウイルスの媒介者と言われていました。
 歯が鋭く、敏捷ですので、見つけても安易に手を出すことは止めましょう。

見つけた方は、市役所の環境管理課あるいは県の環境管理事務所に連絡しましょう。
    鳩ヶ谷市役所環境管理課:048−280−1111
    中央環境管理事務所:048−822−5199

ハクビシンは、大きさ、体型、体の色や生息環境などが共通していますので、鳩ヶ谷市・川口市周辺では、アライグマやタヌキなどと誤認される可能性もあります。

鳩ヶ谷の生物について、数人の方から問い合わせがありましたので、鳩ヶ谷郷土史会・会報「郷土はとがや」に投稿したものを年代順に示しました。

(鳩ヶ谷郷土史会:会長 岡田 博 〒334-0013 鳩ヶ谷市南1-5-5 Tel:048-281-4118)

2004.11.18 鳩ヶ谷の生物1、カラスはほんとに悪者か、カラスにも言いたいことがある、        第54号:p26-33.
2005.05.18   鳩ヶ谷の生物2、現代ツバメ事情−ツバメの生態−、第55号:p26-35.
2005.11.18   鳩ヶ谷の生物3、ツバメと葦とオオヨシキリ、第56号:p3-13.
2006.05.18   鳩ヶ谷の生物4、俗に言うシラサギについて、第57号:p98-107. 
2006.11.18   生物から見た鳩ヶ谷の農業、第58号:p2-5
2006.11.18   埼玉県生態系保護協会鳩ヶ谷支部が発足、第58号:p5-6
2006.11.18   鳩ヶ谷の生物5、県の鳥「シラコバト」に明日はあるか、第58号:p.7-16.
2007.05.18   鳩ヶ谷の生物6、県の鳥「シラコバト」に明日はあるか(2)、第59号:p.49-57.
2007.05.18   鳩ヶ谷氷川神社参道のイチョウ、第59号:p.58-62
2007.05.18   鳩ヶ谷市のタンポポの変遷、第59号:p.63-67

今後の予定は以下の2報です。
    鳩ヶ谷の生物7,「キジバト」減りつつある市の鳥
    蝶から見た鳩ヶ谷市の温暖化