No.98 2012年8月

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鳩ヶ谷で見られる野鳥シリーズ (111)

クサシギ(シギ科) Tringa ochropus

クサシギ(草鴫)は、多くのシギチドリの中でも内陸部の水田や休耕田に好んで生息するシギの仲間です。この仲間は比較的足が長く黄土色をしているのが特徴で、餌を採る時にお尻を振るのも行動的な特徴として共通しています。大きさや形がよく似ているタカブシギとは背中に模様があるかないか、あるいは鳴き声などで識別することが出来ます。クサシギの声はピューイ、タカブシギはピピピピという感じで違いがわかります。夏羽は、頭頂から背は灰黒色で、羽縁に小さな白斑が並んでいます。下尾筒と尾は白く、尾には黒い横斑があります。目先と眼の周辺が白いのも特徴です。冬羽は上面の白斑が明瞭になります。

鳩ヶ谷ではクサシギが飛来するような環境が無くなりましたが、時々、干潮時に芝川の岸辺で餌を採っている姿を見ることがあります。

 

自然の記録:

 8月 1日 読売新聞でも報道されましたが、4,5月頃に我が家に足を運んでくれたアライグマが隣家に家族連れで来訪してくれたようです。安行慈林付近では時々姿を見かける人もあるようです。

 8月 2日 近所の駐車場のフェンス周辺にはエノコログサ。メヒジワ、スベリヒユ、アメリカセンダングサ、ヘクソカズラ、ツユクサ、ハゼラン等が繁茂しています。

 8月 3日 アオカナブン、シロテンハナムグリ等が庭を一回りしていきました。

 8月 4日 鳩ヶ谷中央病院の敷地内ではミンミンゼミとアブラゼミの大合唱、久し振りのセミ時雨でした。鳩ヶ谷でもセミ時雨が聞けるところがまだありました。

 8月 5日 エノキの回りをコミスジとアゲハチョウが飛び回っていました。夕方になり涼しくなると中央が白色で、周囲が黒色の帯で縁どられた翅を持つ美しいツゲノメイガという蛾の仲間が飛来しました。シャガやクンシランの葉の裏にとまりなかなか姿を見せてくれませんでしたが、何とか確認することが出来ました。小さな蛾の仲間は素早く飛んで、止まるところは葉の裏側というのが定番で写真を写すにも苦労しています。

 8月 6日 今年の夏は高温下の影響なのか、ハシボソガラスが2回目の繁殖をしています、家の傍、直線距離にして10mほどの所ですが安行慈林の民家にある松の木に営巣しています。

毎日のこの暑さの影響もあり、雛は大口を開けて喘いでいます。30℃以上の暑さが毎日続いていると巣の中で焼き鳥になるのではないかと心配するほどです。一方では、コンフォール東鳩ヶ谷でもツバメが2度目の繁殖を行っています。こちらは日陰で風通しも良いので3羽の雛は無事に巣立ちそうな感じです。

午前中から少々のお湿りがあったので多少涼しくなりましたが、雨が止んだ後は蒸し暑さが倍増。湧水公園ではオニヤンマ、オオシオカラトンボ、シオカラトンボ、コシアキトンボ等が飛んでいました。オモダカ2株は50cm以上の高さにまで生育し何とか根付いてくれたようです。庭ではキンケハラナガツチバチとウラナミジャノメのみが飛び回っていました。

ツゲノメイガ  シモフリスズメの幼虫

 8月 7日 江川と見沼大用水の合流点付近ではカルガモが15羽(若鳥4羽)が休んでいました。その回りに生えているガマの葉にはハグロトンボが留まっていました、毛長川調節池ではダイサギがアメリカザリガニを捕食していました。辻の水田ではイネの回りに沢山のオモダカとコナギが生育し、タカサブロウ等も繁茂していました。本町2丁目の坂道でヒラヒラ飛んでいる蝶がいました。近づいてみるとアサギマダラでした。鳩ヶ谷地域でのアサギマダラの観察は数十年ぶりでした。

 8月 9日 庭のボタンクサギにキアゲハの雄、クサイチゴにキマダラセセリ、キチキチバッタ、オンブバッタ、葛の葉にハラビロカメムシ、マルカメムシ、柿の木にカナブン等が飛来しました。コンフォール東鳩ヶ谷のツバメは、まだ巣立ちしていませんでした。

 8月10日 クロアゲハ、アゲハチョウ、ヤマトシジミ、セアカヒラタゴミムシ、ヒラタゴミムシ、セグロアシナガバチ等が飛来しました。

 8月11日 午後2時過ぎから久し振りに雷雨と共に纏まった雨が降ってくれましたので、庭の草木も生き返ったようです。庭では昨年と同じ日にホウシゼミが羽化したようですが、残念ながらジョロウグモの網にかかって短い一生を終えました。

 8月12日 本町2丁目のラクダ坂付近で数十年ぶりにジャコウアゲハを見ることが出来ました。ラクダ坂付近から水道ポンプ場傍の草地付近で消失しました。昭和40年代には東縁見沼代用水沿いにはジャコウアゲハの食草であるウマノスズクサが沢山生育していましたが、川の三面舗装と見沼緑道整備に伴い全て消失してしまいました。

現在鳩ヶ谷地域でウマノスズクサが残っているのは鳩ヶ谷小学校の花壇と我が家の庭のみではないでしょうか?いつかジャコウアゲハが飛来してくれることを期待しているのですが。

ラクダ坂傍の樹林の道路際でキマダラセセリ、アオドウガネ等と共に、ヤブガラシの葉を葉巻のように丸めているハチの仲間を観察しました。オオフタオビドロバチという黒と黄色の奇麗なハチですが、通常は竹・木・等の穴に巣をつくりイモムシなどの幼虫を中に入れて産卵し幼虫を育てていますが、今日観察したのはヤブガラシの葉を丸め中に糸を張り、しっかりと固定していました。恐らく、自然の穴が見つからずに自分で幼虫を入れる巣穴を創ったものと思われます。

湧水公園では、常連のトンボ(オニヤンマ、ショウジョウトンボ、ウスバキトンボ、オオシオカラトンボ、シオカラトンボ、コシアキトンボ)、クロアゲハ、ナミアゲハ等の他に、「柳の下にドジョウはいない」という例えがありますが、昨年8月にヤナギの木でカブトムシの雌を見つけましたが、今年も木の下で雌を見つけることが出来ました。池のそばに、粗朶木を積んでおいた効果が出たのかと思って粗朶木を積んである場所へ行くと奇麗に片づけられていました。菖蒲を管理している人があまりにも汚いのでゴミとして処理しておきましたとのこと。市では立て札までおいていたのに、唖然として言葉も出ませんでした。

水路に植栽したオモダカ2本は大きく生育していましたが、1本の太い茎にクワイクビレアブラムシというアブラムシの仲間がびっしりとついていました。メダカの餌になるので、そのまま放置しておきました。

 8月13日 プランターのトマトにツマグロヒョウモンの雌が飛来しました。葛の葉にはマドガという小さな蛾の仲間が止まっていました。今日は久し振りの暑さで昆虫類の動きも今ひとつでした。あまり暑いと昆虫類の活動も動きが鈍くなるようです。

 8月16日 林の縁でコシアキトンボの雌を捕らえたシオヤトンボの雄がいました。体の大きさが3倍近くあるトンボを捕らえているところを始めてみました。

揺りかごをつくるオオフタオビドロバチ  コシアキトンボを捕らえたシオヤアブ

 8月19日 東縁見沼代用水に架かる稲荷橋付近の斜面林では騒々しいほどのセミの合唱です。子供達のセミ捕る声がかき消されるほどの鳴き声に圧倒されます。この場所だけを見ると鳩ヶ谷でも素晴らしい自然が残っているのと思われるほどです。例えセミの声でもこれだけ聞ける場所は多くはありませんので夏ゼミの声鑑賞地として残しておきたいものです。

鳩ヶ谷に残る斜面林はこの地を含めて3か所になりました。

我が家の庭でも、アブラゼミ、ミンミンゼミ、ホウシゼミの3種類の合唱がうるさいほどですが、うるさいのはうるさいなりに夏の季節を感じています。

 8月20日 毎日のように夏日が続いています。湧水公園の菖蒲田の湿潤している場所に5頭のアゲハチョウが吸水していました。オオシオカラトンボ、コシアキトンボ、ウスバキトンボの3種類が目立ちます。池の周囲ではコケオトギリの小さな黄色い花やオオニシキソウの白い花等が開花しました。その他、チョウジタデ、ムシクサ、ジュズダマ等、いずれもよく見ないと見過ごしてしまうほどの小さな花です。法性寺の社寺林ではミンミンゼミの合唱が見事でした。

 8月21日 今日は那須の平成の森へ行って来ました。外気温は34℃を超えていましたが、平成の森ふれあいゾーンはミズナラの見事な林で、林の中は涼しさ抜群で、枯死した倒木が腐って地衣類や木のこの仲間が多く観察できました。林内はササが多く昆虫類は殆ど見ることが出来ませんでしたが、本当のクールスポットとはこういう場所ではないかと思います。皇族の避暑地として残されていた森林ですが、これだけ涼しければ避暑にはもってこいの場所です。

帰途、鳩ヶ谷の終点でバスを降りると早くもエンマコオロギが鳴いていました。鳴く虫の世界では秋になっています。

 8月22日 暑さのため庭の昆虫類も少なく、シロテンハナムグリ、アオドウガネ、アゲハチョウ、ヤマトシジミ、キマダラヒカゲ等が目につきました。その他、ネズミモチの若木にシモフリスズメの幼虫、ピラカンサにオオカマキリがいました。いずれも暑さを咲けているのか草陰や木の陰などに入り込んでいました。

 8月24日 ここの所、庭の昆虫類に変化がありませんでしたが、17時過ぎにゴマダラチョウがエノキに飛来しました。昆虫の写真はニコンD90+SIGMA50mm+接写レンズを付けて撮していますが、今日はエノキの上層部に止まっているのでSIGMA300mmレンズを交換して撮そうと思いましたが思うように撮ることが出来ません。結局KENCO800mmを装着して家の中から撮ることにしました。1200mm換算になりますが、何とか撮ることが出来ました。1200mmで昆虫を撮したのは初めてです。

エノキに飛来したゴマダラチョウ  下翅に赤い斑紋のあるアカボシゴマダラ

 8月25日 今日は、ウラナミシジミが飛来しました。南町のTさんより1週間前に湧水公園でチョウトンボを確認したとの情報を得ました。今日の観察会ではハグロトンボを初記録しましたので、湧水公園で観察されたトンボの仲間は16種類となりました。

 8月28日 コンフォール東鳩ヶ谷敷地内に植栽している4本のマユミに数百匹のキバラヘリカメムシが群がっていました。羽化したばかりの幼虫から成虫までいろいろなタイプのものがいましたが、特に成虫のお腹の黄色が鮮やかでした。(安行慈林のバス停から東川口駅に向かってバスに乗っていたところ花山下付近の信号で停車、窓外を見ていたところオオタカの若鳥が飛んできました。バスの前を横切り立野の三重の塔方向へ消去)

 8月31日 ここ数日、ナミアゲハがミカン科の植物に飛来して頻りに産卵しています。これから秋に向けての羽化が始まることでしょう。   

 

鳩ヶ谷から消えた生物・消えつつある生物 62

アカスジキンカメムシ(カメムシ科)

カメムシの仲間は多く生息していますが、アカスジキンカメムシのように美しいカメムシは多くはありません。「生えた宝石」と形容されるタマムシと同じような配色でレンズを通してみると輝いて見えます。ただ、タマムシと異なるところは死ぬと輝きが劣化していきます。カメムシの仲間は触ると臭い特徴を持っていますが、このカメムシは臭いが無いような気がします。終齢幼虫の色調は白地に黒の模様があり、全く異なる種類のように見えます。タマムシにしろアカスジキンカメムシにしろ「歩くペンダント」と呼ばれることもありますが、このような美しい昆虫類は野にあって鑑賞すべきでしょう。

鳩ヶ谷地域ではそれほど多い種類ではありませんでした、現在でも見る機会は少ないようです。

 

地球温暖化を考える(53)

 

仮称・はとがやの湧き水の里に関連して(15)

 

26年前妻が初めて鳩ヶ谷の我が家に来た時は、埼玉は涼しくて良いね。鳩ヶ谷の軽井沢みたいといっていたほど涼しく、その当時、今の家にはクーラーを設置していませんでした。それでも涼しかったのは周辺が緑に溢れていたからです。東側は水田が広がり、北側は大龍寺山の林に囲まれ、南側はアカシアとスギの林があり、その周囲を植木畑に囲まれていました。今は、全てが消失し住宅に囲まれています。また、水路や池もなくなったことも影響し、毎日夜になっても30℃を越す熱帯夜が続いています。

自然が本来持っていた冷却効果が失われたこと、草や木には気化熱の原理で気温の上昇を抑える働きがあります。全てがコンクリートで固められ、大型マンションが林立する事で更に熱の蓄積・風の流れを妨げるといった悪影響が出ています。

緑のカーテンの効果もさることながら、今ある緑を守り、かつ緑を増やすことにより少しでも地域の気温上昇を抑える工夫が必要です。

合併して川口市となりましたが、川口市の緑も減少の一途にあります。植木の安行は緑の多いところですが、川口市の緑地率は20%を切っています。ここ数年、川口市内では霊園墓地やケアセンターの様な施設が増加しています。川口市では霊園墓地やケアセンターなどの施設の申請があれば、法律に則って粛々と許可を進めるとのことです。開発優先している川口市では環境を保護する事が難しいのが現実です。従って、今後数年間で多くの植木畑や農地が消失するのが目に見えています。といって、黙ってみているわけには行きません。出来るところからやっていこうと思っています。

湧水公園も小規模ながら、少しづつですが生態系に変化が現れ始めています。現在以上に土地の拡張は望めそうにもありませんが、緑があるところには生物の方から寄ってくるようです。さしずめ、砂漠のオアシスのような感じでしょうか。実際、鳩ヶ谷地域では最後の砦みたいなものです。

除草後の竹林内 カブトムシなどの昆虫の住処づくり

 

8月25日 夏の湧水公園観察会−トンボを探そう−を行いました。

 

9時00分より10時分までプラザ・サクラにおいてトンボの生態に関するレクチャーを行いました。その後、湧水公園に移動して自然観察会を行った。8名の参加と少人数ではあったが暑い中熱心に観察・記録していました。参加者全員に公園の見取り図を配布して、見つけた生物の名前を記入してもらい、どのような環境を生物が利用しているかを考えてもらいました。前回の観察会では、今まで記録の無かったチョウトンボやハグロトンボを呼びたいねと言っていましたが、1週間前にチョウトンボを、今日はハグロトンボを初見しました。湧水公園では16種類が観察されたことになります。

狭い名所であっても環境を整えていけば生物が集まってくると実感した人もいたようです。

 

トンボの仲間:シオカラトンボ、オオシオカラトンボ、ウスバキトンボ、ノシメトンボ、ショウジョウトンボ、ハグロトンボ(初記録)、アジアイトトンボ、キイトトンボ

チョウの仲間:ナミアゲハ、クロアゲハ、ナガサキアゲハ、ツマグロヒョウモン、モンシロチョウ、ベニシジミ、ヤマトシジミ、イチモンジセセリ、ミノガ

その他の昆虫:クモヘリカメムシ、ナガメ、テントウムシの幼虫、セグロアシナガバチ、フタモンアシナガバチ、ジガバチ、ハラナガツチバチ、アブラゼミ、ミンミンゼミ等

その他:オナガ、キジバト、スズメ、ウシガエル、カナヘビ、メダカ、アメリカザリガニ、ジョロウグモ、コモリグモ等