縦書き by 涅槃 『鳩ヶ谷博物誌』へ 『郷土はとがや』 第№68号 平成23年11月18日
鳩ヶ谷市立郷土資料館友の会の解散
藤波 不二雄
二〇〇九年四月に浅野前館長より、鳩ヶ谷市立郷土資料館(以下、資料館)友の会を作りたいとの話がありました。その折りに自然史に関しても部会を作りたいので協力して欲しいとのことでした。鳩ヶ谷市には郷土の歴史に関する鳩ヶ谷市史はありますが自然史に関してはほんの一部しか掲載されていません。筆者は一九九五年一月十七日に発生した阪神淡路大震災当日まで大阪府豊中市に在住していた関係で、一九九四年に豊中市史(自然史)を作成するにあたり、野鳥部門での協力を依頼されました。かなり資料が集まったところで大震災に遭遇し、市史編纂は一時中断しましたが一九九九年三月には、七三〇頁に亘る豊中市史が刊行されました。鳩ヶ谷市においても、いつかこのような自然史を出してみたいと思っていましたので、友の会の発足は良い機会であると思い十一月の発足時に友の会に参加しました。
平成二十三年四月十六日、友の会の定例幹事会で今年度の活動方針を話し合う予定でした。筆者は三月の例会で提案した「里山を歩く会」の候補地として、西新井宿地域を二度に亘って下見を行ってきた報告を行う予定でしたが、新館長の挨拶に続いて幹事会開催と思っていたところ、突然に友の会解散の話題となったので驚きました。
平成二十三年十月十一日に実施される予定の川口市との合併をふまえ、川口市の関係者と資料館関係者との今後の調整の中で「今後、資料館と事務局は切り離して欲しい」「資料館は友の会の展示および発表会などに会場を提供しない」との二点が新館長より一方的に申し渡されました。
友の会会報「風の道」創刊号で浅野前館長が友の会発足にあたり「(前文略)郷土の歴史と文化を愛し、資料館の収蔵資料と施設を有効活用いただいく友の会を発足していただいたことは館職員として望外の喜びです。今後、職員を含めて郷土資料館の資料や施設のすべてを利用され、友の会が幅広い活動を展開して(以下略)」と、友の会の活動に期待されていたわけですが、約一年半年で解散となりました。
元々は、資料館より友の会を立ち上げたいとの話があり、関係者有志で作り上げてきた友の会であり、同席者の中には継続を望む声も多数ありましたが、資料館の利用を拒否されては友の会を存続させたくても存続が出来なくなりますので、友の会の解散を余儀なくされました。本来ならば、会則により総会を開催し決議をすべきところですが幹事会で即日決断をせまられ、平成二十一年十一月十五日に発足した資料館友の会は、前館長の退職を待っていたかのような形で消滅しました。
川口市には現在、川口市立文化財センターと旧田中家住宅の二箇所の歴史的な資料館があります。また、現在計画中の赤山歴史自然公園には将来的に歴史博物館(仮称)が開設されるとの情報もあります。川口市立文化財センターのホームページの解説によれば「川口市内には、発掘調査の出土品や鋳物業に関する資料、獅子舞などの民俗芸能や歴史的建造物など、先人の残した数多くの文化財が存在しています。文化財センターは、これらの文化遺産を収集・保管するとともに、展示や体験学習などを通して、川口の歴史とそこに育まれた文化への理解を深めていただく施設として誕生しました。」と解説されています。一般的に地域の民俗資料館は、地域住民自らが地域の歴史や文化のあり方に目を向け、その地域の歴史や自然と人間との関係を見直すことができるようになり、それぞれの地域を住民自らが評価できるようになることを支援していく役割が求められています。そのため、地域住民とともに活動等を行うことをとおして、地域住民が地域の文化や歴史と結びついていくための仕組みを作っていく必要があります。地域の資料館は設置目的や規模等において違いはありますが、それぞれの資料館の役割や持ち味を活かしながら、互いにそれらを活かせるよう連携していく必要があるのではないでしょうか。鳩ヶ谷市立郷土資料館も川口市と合併した後には四番目の資料館としての地域特性を持って活動を行っていく必要性があるのではないでしょうか。そういう意味では、今後の資料館友の会の発展を考えるべきではないかと思いますが、川口市への吸収合併が行われていない状況下で悪い方向に行ってしまったことは誠に残念なことです。これから更に色々な活動を行っていきたいという友の会メンバーの夢も消失しました。
今後、川口市と合併しても資料館友の会が再発足することはないと思いますので、鳩ヶ谷市立郷土資料館発足以来三十年の歴史の中で最後のページに資料館友の会があったということだけは記録しておきたいと思います。いずれにせよ、川口市との合併が吸収合併という立場であることから、平成二十三年度の鳩ヶ谷市が計画した今年度予算も殆ど運用できない状態にある事も今後の鳩ヶ谷の歴史の中で禍根を残す事例が多くなるのではないかと思います。
約一年半という短期間の活動でしたが、友の会の活動としては充実した活動が出来たのではないかと思います。その一端を以下に紹介します。
友の会発足以来の主な活動記録
考古部会(部会長・釜田次男)
平成二十二年四月八日~二十四日
辻の字永堀第四遺跡発掘
平成二十二年十一月一日~十二月十二日
里の字屋敷添第四遺跡発掘
その他、発掘した遺物の洗い出し作業など
写真・映像部会(部会長・花岡武司)
平成二十二年十二月五日~二十三日
鳩ヶ谷の風景写真(三十年~五十年前)の展示
被服部会(部会長・嶋田文子)
平成二十二年六月六日~二十日
懐かしの着物展(参観者三四三名)
焼き物部会(部会長・高橋一郎)
平成二十二年十月十七日~三十一日
鳩ヶ谷近郊の粘土を使った土器の再現と陶人形展(参観者三九二名)
見学部会(部会長・星野信義)
平成二十二年十月九日 岩槻の史跡見学会(三十三名)
自然部会(部会長・藤波不二雄)
平成二十二年四月~七月
アンケート方式によるタンポポの分布調査とツバメの営巣調査を実施
平成二十二年十一月二十一日 芝川の野鳥観察会
古文書部会(部会長・篠田常子)
・古文書解読
伊能忠敬「測量日記」鳩ヶ谷宿~熊谷
鳩ヶ谷宿本陣「船戸家文書」など
広報部会(部会長・田部井一郎)
鳩ヶ谷市立郷土資料館・友の会会報「風の道」七号発行
資料部会(部会長・米山徹)
資料館に寄贈されているSPレコードの整備・他
その他
平成二十二年三月二十七日
文化財講座「里山に春をたずねて」参加者三十五名に講師として会員二名が協力
平成二十二年四月二十五日
鳩ヶ谷宿案内板設置事業に伴う協力「完成式典において二十三箇所の案内板の説明」木下市長はじめ列席者に案内・説明を行った。
平成二十二年十二月十一日
講演会「本陣文書から読み取れる江戸時代の鳩ヶ谷宿」 講師 星野信義・米山徹
平成二十三年二月十九日~二十九日
埼玉高速鉄道開通十年記念特別展「変わる鳩ヶ谷」に
有志が資料提供および会場案内