No.73 2010年7月  

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鳩ヶ谷で見られる野鳥シリーズ (86)

カイツブリ(カイツブリ科) Pufinus ruficollis

カイツブリは潜水が得意なことから、モグッチョ、モグリッチョ、等の地方名がありますが、古来より俳句などでよく知られているのは「ニオの浮巣」、昔は琵琶湖を「ニオの海」と呼んでいました。水草などで作った浮き巣を作り抱卵します。奈良時代には「ニホドリ」あるいは「ミホドリ」の名で知られていたようです。小さな体で小さな嘴にもかかわらず以外とどう猛で、アメリカザリガニ、テナガエビ、食用ガエルのオタマジャクシ、マコモなどの固い根なども食べています。潜水は1分以上もぐっていることが可能です。潜ったところからずいぶん離れた場所に出てくることもしばしばです。鳴き声は人が笑うような声で「ケレッ、ケレッ」「キリキリキリリキリ」と行ったような声で鳴きます。鳩ヶ谷市内では池や沼がないので見る機会はあまりありませんが、天神橋付近の新芝川では時々見かけます。

俳句の季語としてよく使われており、古くから多く詠われています。

          波もない潟がくれるよかいつぶり  室生犀星

          古利根や家鴨とあそぶかいつぶり  水原秋桜子

 

自然の記録

 7月 1日 プランターのトマトの葉にニジュウヤホシテントウが約500匹、イチジクの幹にはホウズキカメムシ約100匹がついて2匹づつそれぞれが交接をしていました。

17時過ぎに玄関前の草地にノシメトンボが飛来しました。この辺りにはノシメトンボが生息するような場所はないのですが?

青少年会館の周りをタマムシが飛んでいました。久し振りに見るタマムシですが、まるで宝石のようです。

ラクダ坂脇にある荒れ地でヤブカンゾウが1株開花していました。ヤブカンゾウの花は年により咲いたり咲かなかったりで、我が家のものは葉のみが沢山生育して全く花芽がつきませんでした。

 7月 2日 南町方面を廻っていたところ、今まで見つからなかったツバメの巣が1ヶ所見つかりました。民家のガレージですが車のフロントあたりに糞が落ちるので、隅の方に巣台を作っていましたが、そこには巣作りをした後がありませんでした。今年12ヶ所目の営巣です。これからは2番子がうまれてくるので市内循環を欠かせません。

 7月 5日 本町2丁目のアパートの周辺で、アメリカオニアザミが数株開花しました。花が咲くと奇麗ですが鋭いトゲがあるので危険です。草抜きの時は素手で抜くと大変なことになります。

ノシメトンボ  アメリカザリガニを探すハシボソガラス

 7月 6日 朝と夕方にヒカゲチョウ飛び回るようになりました。柿や梅の木の回りの日陰にいることが多いのですが、勢いよく飛び回っているので見つけるのも簡単。アオスジアゲハとナミアゲハも庭の住人です。トウキョウヒメハンミョウ、ミスジコウガイビル等も活発に動き回っています。

 7月12日 強風の中で、ツマグロヒョウモン、キタテハ、ゴマダラチョウが庭を飛び回っていました。ダイコンソウの黄色い花も開花し始めました。

辻のH氏より、11日にミンミンゼミの初鳴き、2〜3日前にはニイニイゼミの初鳴き、田んぼではホウネンエビのような生き物、ミズスマシのような小さな甲虫もチョコチョコ水面と水底を行ったり来たり。小さなカエルや、小さなカマキリやチョウ(コミスジ、アオスジアゲハを初見、ツマグロヒョウモン(雌雄))等もずいぶん目にするようになりました。との情報ですが、市内に残った貴重な水田には色々な生き物がいるようです。

7月13日 西日本の各地で大雨が降り続き、土砂災害などが発生しています。昨年からボタンクサギが庭に蔓延りはじめ、抜いても抜いても生えてきます。しばらく忙しかったので放置しておいたところ、ピンク色の花が開花しました。茎や葉はきついニオイがしますが花が咲くと奇麗です。

 7月14日 見沼用水沿いの本町3丁目の遊歩道で、今年初めてニイニイゼミの声を聞きました。

 7月15日 庭隅でゲンノショウコの花が開花しました。玄関脇ではヒヨドリジョウゴが発芽しました。いずれも市内では少ない植物ですが、ここ数年ヒヨドリジョウゴが少しずつ分布を広げています。ヒヨドリが分布拡大に一役買っているのかも?鳩ヶ谷小学校のフェンス周辺でも何本かのヒヨドリジョウゴがありました。

 7月16日 旧芝川ではマブナ、クチボソ、カダヤシ、テナガエビ(市内で見たのは初めて)、クロベンケイガニ、春にカワジシャの群落があった場所はタデ科の植物に占有されていました。下の写真のテナガエビは10cm程度の大きさですが、15cm程度の大きさのものも時々採れるようです。旧芝川の改修工事によって少しずつ環境が変化しているようで、悪臭を放っていた頃に見られなかった生物が復活してきているようです。

辻の水田ではミズムシが沢山泳いでいました。(ミズムシは風船虫ともよばれるが、夜間に明かりに飛んできたミズムシの中で比較的大型のものを使う遊びのなかで生まれた別名です。ミズムシの仲間は種類が多いため、とりあえずミズムシとしました)。その他、シマゲンゴロウ(市内で見るのは久し振り)、メダカ、アマガエル、サカマキガイ等、植物ではアゼムシロ、タカサブロウ、コナギ、オモダカの小群落、ウキクサ、アオウキクサの群落がありました。また、ウスバキトンボの小群も飛来していました。セミの声はあまり聞こえませんがトンボの世界は秋の気配もちらりと見えます。

我が家の玄関ドアにドクガの仲間ヒメシロモンドクガの成虫が留まっていました。毒はないようですが、印象的にはドクガというイメージがあります。

テナガエビ サカマキガイ(中央)とミズムシ(上 下)

 7月17日 朝、ナガサキアゲハの雄が庭をひとまわりしていきました。その後はクロアゲハ、ナミアゲハ、アオスジアゲハ、スジグロシロチョウが行ったり来たり。アオバハゴロモ、ベッコウハゴロモも数が増えて来ました。午後1時30分頃にナガサキアゲハの雌が飛来し、ユズ等の柑橘類に産卵していました。

 7月19日 ようやく我が家の庭でニイニイゼミが鳴きだしました。市内でもまだ鳴いているところが少ないようです。会う人ごとに今年はセミの声を聞かないと言っていました。

 7月22日 毎日のようにクロアゲハとナミアゲハが柑橘類の間を飛び回り、産卵しています。多くの卵を産み付けているのですが、幼虫になるといつの間にか姿を消してしまいます。スズメやヒヨドリ等の餌食になっているのか?

(葛西臨海公園にある鳥類園の柑橘類でも多くのアゲハの仲間の幼虫がいますが、5齢程度の大きさになると見えなくなるので、不思議に思っていたところ枝ごと持っていく人がいることが解りました:この木は10数年経っても大きくならないので不思議に思っていましたが伸びたところを切断されていたようです)

ヒメシロモンドクガ カルガモのヒナ

 7月23日 まだアブラゼミの声が聞こえませんが、今朝雌が庭に落ちてアリが沢山集まっていました。ボタンクサギの葉にはアシナガバエが数匹飛来しました。毎日の暑さのためか、昆虫の動きもあまり目立ちません。

7月25日 我が家の庭でもウスグモスズ、オンブバッタの幼生などが草陰で見つかるようになりました。

 7月26日 ようやく、家の周りでミンミンゼミの声が聞こえるようになりました。桜町6丁目公園脇の水路にクロメンガタスズメという大きな蛾の仲間の遺骸がありました。クロメンガタスズメは南方系の蛾の仲間ですが、数年前に北本自然観察公園で発見されてから県内で多く見られるようになってきましたが、鳩ヶ谷市内で見るのは初めてでした。頭部が人の顔のように見えるのが特徴ですが、よく似ている蛾にメンガタスズメがいます。今後は、鳩ヶ谷市内で見かけることが多くなるかも知れません。

(温暖化の影響で南方系の昆虫類が増加していますが、鳩ヶ谷市内でもツマグロヒョウモン、ナガサキアゲハ、ムラサキツバメ、アカゴマダラ等の蝶が確認され、中でもツマグロヒョウモンは普通に見かけるようになりました。また、ナガサキアゲハも色々な場所で見かけるようになりました。いずれも奇麗な蝶なので見るにはよいのですが、気候変動が伴っているとなると思いは複雑です。)

クロメンガタスズメ(撮影:川口自然の家) ダイコンソウの花

 7月29日 雨の中、アブラゼミの声が聞こえてきました。また、裏庭ではコフキコガネの遺骸がありました。市内でも、数カ所でカルガモがヒナをつれていましたが、1羽か2羽のヒナが目につく程度で、多のヒナはカラス、その他の動物の餌食になっているようです。

 7月30日 三ツ和公園で樹木の周りの地面に沢山のセミの抜け穴がありました。恐らく数千匹はくだらないのではないかと思うほど多くの穴があいていました。しかし、その割りにはセミ時雨のような騒がしい声は聞こえませんでした。ムクノキやサクラの木にはムクドリ数十羽の群れが集まり頻りに餌を啄んでいました。

鳩ヶ谷市観光協会主催の「彩の国リバーサポート制度第一回美化活動」に参加し、新芝川大橋付近の草むしりを行いましたが、暑さのためか昆虫類の姿を見かけませんでした。

この暑さの中で20名ほどの参加者が汗だくになっていました。熱中症にならないように気を付けないと行けません。

 7月31日 ヒメウラナミジャノメが庭隅のシャガの葉に留まっていました。今年初認です。20本ほどあったホオズキに幾つかの実がなっていましたが、数百匹のホオズキカメムシにより全て枯れてしまいました。その代わりに、毎年トマトに集まるカメムシガ全く見あたらないので、無事に収穫が進みそうです。

鳩ヶ谷から消えた生物・消えつつある生物 37

 

 ウマノスズクサ(ウマノスズクサ科)

ウマノスズクサはアゲハチョウの仲間でジャコウアゲハの幼虫の食草であり、ツル草の仲間です。夏になると小豆色の毛深い花が咲きます。写真に見るように大変変わった形をしています。熟した果実が馬の首にかける鈴に似ているのがこの名の由来です。花に生える毛は内側を向いていて一旦入った昆虫は後戻りが出来ません。鳩ヶ谷市内では、40年ほど前まで見沼代用水の沿道には普通に生育し、それに伴いジャコウアゲハも生息していました。今は、両種共に見ることは出来ません。

*ウマノスズクサは中国生まれの外来種であるホソオチョウの幼虫の食草でもあります。今のところ、鳩ヶ谷市内では見つかっていませんが関西ではかなり増えているところがあるようです。ホソオチョウは昆虫マニアによって放蝶されたものが増加したといわれています。

 

地球温暖化を考える(29)

川から見た河原町原っぱ

 埼玉県では「水辺再生プラン100」が進められていますが、今回は本誌66号で紹介した、「川口市の河原町原っぱ」を“いちにちゆらり旅コース“という観光船に乗り、川面から眺めてみました。 

芝川水門下流には、足立区都市農業公園と管理棟が望めます。芝川水門をこえると河原町原っぱですが、環境保護団体は反対運動をしましたが、今年になって人工施設であるフットサル・グランドが施設されました。本来ならば草地のままで利用してほしかったのですが。温暖化や高温化が叫ばれている中で、少しでも緑の拠点が失われていくのは残念です。

荒川の岸には波に洗われて護岸の土砂が流失しないための歯止めとして、木工沈床護岸が並び、その一部には雑草が生え始めています。出来れば干潟も造成してくれるともっと良いのですが。

足立区都市農業公園 河原町原っぱ〜芝川水門付近
木工沈床護岸と河原町原っぱ ゴルフ場前の木柵護岸
川面を飛ぶカワウ  今年作られたフットサル・グランド