No.132 2015年6月

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鳩ヶ谷周辺で見られる野鳥シリーズ (145) 

サメビタキ(ヒタキ科)Muscicapa sibirica

サメビタキはスズメ大のヒタキの仲間。背面は灰褐色で腹面は白く、胸にははっきりしない縦斑が並んでいますが見た目には汚れたような感じに見えます。本州以北および北海道に夏鳥として渡来します。ヒタキ科の小鳥の特徴的な行動である、飛び立って昆虫類を捕食し、また元の枝に戻るフライキャッチングを良くします。渡りの時期には平地や都市の公園などで見かける機会があります。

この仲間には、コサメビタキとエゾビタキがいますが、サメビタキは色や胸の模様など両者の中間的な感じです。近年は小鳥類の渡来数が減少傾向にあり、市内でも出会いのチャンスがなくなりました。

ヒタキの仲間は分類上ヒタキ科に属する鳥の総称ですが、俳句では鶲(ヒタキ)と言うとツグミの仲間のジョウビタキを指すようです。

 

自然の記録

 6月 1日 庭のビワの木にキイロスズメ(スズメガの仲間)の成虫が止まっていました。羽化したばかりで、まだ飛べませんでしたが、暑いのか5時間近くたっても同じ場所に止まっていました。ピラカンサにいたウメエダシャクの蛹も羽化を始めました。アゲハチョウは庭の柑橘類に産卵し、大きな幼虫も数匹見られました。

 6月 2日 秋ヶ瀬公園へ埼玉県の蝶であるミドリシジミの観察に出かけました。観察には早朝や夕方が良いのですが、日中でも何とか2頭を見つけることが出来ましたが、羽を広げてくれませんでした。ミドリシジミ以外にウラナミアカシジミ、ミズイロオナガシジミ、ルリシジミ、コミスジ、イチモンジチョウ、ツマグロヒョウモン、アカボシゴマダラ、ウラナミジャノメ、ヒメウラナミジャノメ、キチョウ、モンキチョウ、モンシロチョウ、スジグロシロチョウ等の蝶が観察できました。昆虫類ではホリカワクシヒゲガガンボという変ったガガンボの仲間やコクワガタ、ハサミムシ、アシナガコガネ、エゾオナガバチ等、野鳥は少なかったものの、カッコウ、ホトトギス、オオヨシキリ、セッカ等の夏鳥やアオサギ、ダイサギ、チュウサギ、ゴイサギ等のサギ類と共にアカガシラサギ(冬羽1羽)を見ることが出来ました。

帰りに立ち寄った中華店では、テーブルの脚にヒメトガリノメイガという小型の黄色い蛾が止まっていました。

キイロスズメ トビイロスズメ アリグモ

 6月 4日 昨日の降雨の後で庭の朽木を見て回ったころ、キマワリが6頭、アトジロサビカミキリ等が見られました。ピラカンサでは羽化したばかりのウメエダシャクが5匹飛び回り、柑橘類ではアゲハチョウの幼虫が大小取り混ぜて20匹ほど見つかりました。幼虫を観察している傍らでアゲハチョウがしきりに産卵していました。

 6月 5日 家の庭でクロコガネ(コガネムシの仲間)が水たまりに落ちていました。また、鳩ヶ谷本町2丁目の林縁にあるオニドコロの葉上にアリグモが忙しそうに歩き、路上ではトビイロスズメ(スズメガの仲間)の成虫が弱って落ちていたので車に轢かれないように林の中に入れてやりました。

 6月 8日 鳩ヶ谷本町4丁目の東縁見沼代用水沿いにある植木畑でハグロトンボ数匹が飛んでいました。今年初記録です。

 6月11日 早朝、門前にアズマヒキガエルがいました。久しぶりの出会いです。毎年一度は庭で見ることがありますが、何時もどこに生息しているのか気になります。繁殖をするような池もないのにと思いますが。

門前にいたヒキガエル アライグマの足跡

月15日 ボタンクサギとウマノスズクサが花芽をつけてきました。ここの所、天候不順でなかなか外へ出る機会がありませんが、庭では3種類の竹の仲間が萌出して高いものでは5mほどの高さにまで伸びています。元は里山であったことから、どこかに残っていた竹やササがいつの間にか庭の隅に出てくるようになりました。

 6月20日 豊田の森と湧水公園で観察。竹林のでは中でキヌガサタケ(衣笠茸)が5本生えていました。

キヌガサタケは竹林内の地上に群生または単生します。キヌガサタケのカサは釣鐘型で直径は2、3cmほどで、頂の部分に白色の環状の輪があり、そこに孔が開きます。表面はやや細かい網目状で、暗緑色のグレバ(胞子を形成する部分)で覆われています。そのグレバは悪臭を放ち、臭いで呼び寄せられたハエなどに胞子を運んでもらうという役目を持っています。カサの内側から伸びたレース状の白い部分は地面まで達しており、キヌガサタケが「キノコの女王」と呼ばれる所以にもなっています。また、縁の部分は多くの場合、直線的な形状をしています。キヌガサタケのツカは白色で表面を小孔が覆っており、真っ直ぐに伸びており、中身の肉の中心は空洞になっています。幼菌の時は表面が白色〜淡紫白色のブヨブヨした直径4〜6cmほどの卵形の袋に入っています。中国ではこのキヌガサタケは高級食材で、乾燥品は日本でも販売されています。昨日の激しい雨のためか、3本は倒れたりカサが破れたりしていましたが、1本は女王の名に恥じない美しい絹のドレスをまとったような形をしていました。

湧水公園ではオオシオカラトンボが数か所で交接をしており、クロスジギンヤンマ、コシアキトンボなどに混じり、早くもアキアカネが1匹飛んでいました。池の中ではコイやウシガエルに混じり、メダカやモツゴの稚魚が活発に泳いでいました。また、藪の近くではゴマダラカミキリがいました。池の中ではサンカクイ、コガマ、ショウブ、コウホネなどが繁茂してきました。

帰宅後にトマトの葉上にナガゴマフカミキリという地味なカミキリムシの仲間がいました。また、オオモンクロベッコウという狩り蜂の仲間が地上を歩いていました。

オオモンクロベッコウ ナガゴマフカミキリ
壊れたキヌガサタケ キヌガサタケ ゴマダラカミキリ

 6月21日 庭のモクレンが2度目の花をつけました。流石に春の開花に比べて花の数は少ないですが。近年の記録では一年で3回開花した年もありました。庭のあちこちでトウキョウヒメハンミョウが飛び回っています。今年は出現が遅いなと思っていましたが一斉に出てきたようです。

 6月22日 久しぶりに赤山歴史自然公園予定地に出かけました。コチドリが繁殖中なので埋め立てた荒れ地に雑草が生え始めていますが、親鳥は警戒して偽傷行動をあちこちで見せています。カルガモ、アオサギ、スズメ、ツバメ、カワラヒワ、ハシボソガラス、ハクセキレイ等の留鳥以外は確認できませんでした。昆虫類はギンヤンマ、オオシオカラトンボ、シオカラトンボ、ショウジョウトンボ、ハラビロトンボ、アゲハチョウ、アオスジアゲハ、クロアゲハ、モンシロチョウ、ツマグロヒョウモン、セスジツユムシ、クルマバッタ、ショウリョウバッタ等が目立ちました。湿地の植物では、ガマ、ヒメガマ、ミコシガヤ、サンカクイ等が目立ちました。

 6月28日 市内の各所でヤブカンゾウの花が開花しました。以前はどこにでもあったのですが、宅地の開発などで消失していました。近年になって空き家や空き地が増えてきたお蔭で地下にあったものが出てきたようです。ヨシも里地区の改良に伴い各所で芽生えています。もともとあったものですので生え始めると繁茂するのも早いようです。このような場所は自然に戻してもらえる良いのですが。オオマツヨイグサも咲き始めました。

 6月29日 久しぶりに旧芝川を歩いてきましたが、草が生い茂り水路が見えないところが多くありましたが、野鳥は少なく10種類、昆虫類もギンヤンマ、コシアキトンボ、シオカラトンボ、アキアカネ、アジアイトトンボ、ナガサキアゲハ、アオスジアゲハ、ツマグロヒョウモン、オオモンクロベッコウ等が目につきました。夏のこの時期は暑いだけですが川筋は風が通るので多少は涼しさを感じました。

 

地球温暖化を考える(85)

水源かん養林「金堀沢」

金堀沢は都民の水がめである狭山湖に面した水源林で、さいたま緑の森博物館に隣接しています。狭山湖最奥部にある金堀沢や大沢も、東京都水道局の水源林で、狭山湖周囲道路にはフェンスが張り巡らされています。水源林であったことから、この地域は狭山丘陵でも最も多くの自然が残されています。そのような中で、さいたま緑の森博物館から御判立までの縄竹林道(通称)は、水源林を南北に突っ切る道路ですが、歩行者の通行が許されています。平成19(2007)年には、林道の南北の入口にそれぞれゲートが設置され、歩行者以外の入場が厳しく制限されました。縄竹林道以西の金堀沢や大沢の地域は、以前は林道側からのみ人の立ち入りができましたが、平成19(2007)年に立入禁止の看板が立ちました。平成23(2011)年8月から、金堀沢入口の扉が施錠され、平成25(2013)年3月から、大沢入口の扉が施錠されました。40年以上前は水田や湿地が多くあり、長靴を履いていてもかなりの歩行制限を伴うような場所が多くありました。

さいたま緑の森博物館から南下すると、狭山新道改築碑が道端に建っています。当時の宮寺村縄竹地区と本村とを結ぶ狭山新道が明治36年に開通しましたが、この新道を大幅に改築したもので、荷車での山越えができるようになったそうです。新道の両側はフェンスで囲まれており、立ち入り禁止のため施錠されています。ここへ入るには学術研究目的以外は許可が出ないようです。暑い日でも林内は涼しく別世界に来たようです。林道は湿潤しており、ヒヨドリなどによって散布されたアオキが繁茂しており、放置しておけばアオキ樹林になりそうな雰囲気の場所もいくつかありました。一歩、森の中に入ると涼しさ抜群、意外とヤブカが少なかったので助かりました。このような自然林が多いと地域の気温もかなり低下するのではないでしょうか。緑と水の効用を大いに活用すべき時代になっています。地域の緑を増やす努力が必要であるということを改めて感じた次第です。豊かな森は私たちの生活の基盤です。森林は「緑のダム」とも呼ばれており、雨水を溜めこむことで洪水を緩和する機能があります。日本学術会議の試算によれば、森林の様々な働きをお金に換算すると年間約70兆円にもなると言われています。例えば、土壌流失の防止28兆2565億円、二酸化炭素の吸収は約1兆2391億円などと試算されています。

金堀沢入り口 金堀沢の森林内部にある水路
鬱蒼とした森林内部 オオヤマトンボ ヒメザゼンソウの花