No.119 2014年5月

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鳩ヶ谷周辺で見られる野鳥シリーズ (132)

カンムリカイツブリ(カイツブリ科)Podiceps cristatus

夏羽に移行中             冬羽

カンムリカイツブリはカイツブリの仲間で一番大形のカイツブリです。嘴は長くとがっていてピンク色を帯びています。夏羽は首に赤褐色の飾り羽があります。繁殖期には飾り羽をたてて、雌に求愛をします。冬羽は冠羽がなく全体的に白っぽく見えます。

東北地方の湖などで繁殖しますが、30年ほど前から琵琶湖でも繁殖することが知られるようになり、26年前には大阪の中心部を流れる淀川の十三付近でも繁殖が確認されました。

東京湾の葛西臨海公園の海岸では1000羽以上のカンムリカイツブリが集結することがあります。

スズガモの大群に交じって浮かんでいる冬羽のカンムリカイツブリは遠くからでもよく目立ちます。川口市内でも旧芝川や芝川第一調節池等で観察される機会が増えてきました。

 

自然の記録

 5月 1日 市内を歩くとハナミズキやアメリカハナミズキが満開で、かなり散り始めているものもあり、風が吹くと花吹雪の状態となりました。路傍ではアメリカフウロ、アカバナユウゲショウ、ナガミノヒナゲシ、ハルノノゲシ、ノボロギク、オニタビラコ、オランダミミナグサ、ノミノフスマ等が優占種としてはびこっています。アゲハチョウも目立ってきて、アオスジアゲハも初認できました。テントウムシやニジュウヤホシテントウ、クロウリハムシなどの小型の昆虫類も目立ってきました。

 5月 2日 11時頃、日の当たっている庭にタヌキが来ました。家人が見たことがない動物がいると呼びに来ましたので、庭に出てみると重傷な疥癬症に罹患したタヌキでした。体毛がほとんど抜けた状態でしたので大きなネコ程度にしか見えませんでした。我が家にタヌキが来たのは初めてでした。

疥癬症は皮膚にヒゼンダニ類が寄生することで発症する。ヒゼンダニは皮膚の角質にトンネルを掘って潜り込み産卵し、孵化した幼虫もトンネルを掘りその中に潜り込みます。ヒゼンダニが皮膚に入り込むと強いかゆみが起こります。そのために動物は体をかきむしり、毛が抜け落ちてしまいます。そのため最初に脱毛するのは脚や口が届く場所であることが多いようです。ヒゼンダニには多くの種があり、それぞれの種ごとに寄生する動物が異なっている。イヌセンコウヒゼンダニ(学名:Sarcoptes scabiei var. canis)はイヌに寄生する。イヌミミヒゼンダニ(学名:Otodectes cynotis)はイヌの耳の外耳道に寄生する。ネコショウセンコウヒゼンダニ(学名:Notoedres cati)はネコに寄生する。(「センコウ」=「 孔」、穴をあけること)

ヒゼンダニ類は寄生対象ではない他の動物種には寄生できないとされているが、タヌキ、キツネ、イヌは同じイヌ科であり、イヌセンコウヒゼンダニ、イヌミミヒゼンダニは両者に寄生できるようである。ネコショウセンコウヒゼンダニはハクビシン、アライグマにも感染することがあるようです。イヌやネコに寄生する種類は人間には寄生しないが、一時的に寄生することがあるようです。

 5月 8日 湧水公園の池の中11か所にポンプアップによる水の流れが設置されました。今までもポンプがありましたが、池の水が滞留するために夏になるとアオコが発生して臭気が出ていましたが、今回の工事で多少の緩和が期待できそうです。池の周りではオッタチカタバミ、ユウゲショウ、オランダガラシ等が開花して、シオカラトンボとツマグロヒョウモンを初認しました。庭の落ち葉だまりにハサミムシがいました。滅多に見かけることはありませんが生息していることがわかりました。

疥癬に感染したタヌキ 囀るホオジロ

 5月10日 アカボシゴマダラ、ツマグロヒョウモン、ナガサキアゲハ、クロアゲハ、アオスジアゲハ、アゲハチョウ、コミスジなどの蝶類が目立ってきました。庭ではギンメッキゴミグモが各所に網を張っており、時々顔を網にかけてしまいます。

 5月11日 今日は夏日になりました。日中は太陽直下にいると頭がくらくらするような感じでした。

市内各所の道路脇にナガミノヒナゲシのお花畑が目立ち、コバンソウもかなりの幅を利かせています。カラスビシャク、ヒルガオ、コヒルガオも開花しました。

畑の杭の上ではホオジロの雄が長い間囀っていました。近年はホオジロが生息できる環境が激減したため、このような風景を見ることが珍しくなってきました。

 5月15日 今年もムサシアブミが開花しました。株数は増えませんが毎年花を咲かせてくれるので楽しみにしています。本町2丁目の林の縁にあったマムシグサ数株が今年は全く芽生えがありません。昨秋の草刈り時に抜き取られてしまったのかもしれません。雨の中、ドクダミの白い花が開花しました。

 5月17日 庭で草むしりをしていたところマエアカスカシノメイガやクロビロードコガネ、ドウガネブイブイ等が出てきました。また、ベッコウガガンボという黒と黄色の綺麗なガガンボの仲間が風に飛ばされて犬走りの上を転げまわっていました。

湧水公園の湿地ではアオスジアゲハやクロアゲハが盛んに吸水していました。暑い日には蝶も水場が恋しくなるのでしょう。

 5月18日 最近珍しくなったカタツムリがいました。正式名を「ミスジマイマイ」といい,関東地方に多く見られる種で,殻に三本の茶色い筋があるのが特徴。からの大きさは4pほどでした。また、キマエホソバという灰褐色で、前翅前縁に淡黄色線があるホソバガの仲間がいました。庭ではコメツキムシの仲間が数匹飛び回っています。また、ツユクサの葉にはツユクサハムシという小型のハムシの仲間が数匹見つかりました。

キマエホソバ ミスジマイマイ

 5月20日 我が家の枝垂れウメにムギワラギクオマルアブラムシと言う梅に発生する特有のアブラムシ類が大発生しています。ウメの木の下に生えてきたネズミモチは、アブラムシが葉の汁を吸って葉が巻縮してしまいました。発生時期は4月上旬から下旬に発生し、例年は11月頃まで見られます。ウメの木の下にある植物は油で汚れたようになっています。

このアブラムシを食べるテントウムシやニジュウヤホシテントウ等の成虫や幼虫が沢山繁殖しています。その他、チュウレンジバチ、アカクビハムシ、クロウリハムシやササグモなども活動しています。ブロック塀にはミカドガガンボという大型のガガンボが止まっていました。また、全身黒色で、触角や腹部に青い光沢があるブドウスカシクロバという羽が半透明で翅脈の黒色が目立つ蛾の仲間がいました

ホオズキにはホオズキカメムシが今年も発生し始めました。近くの路肩に生えているヤナギの木にコムラサキ、マサキにはユウマダラエダシャクが数頭発生していました。

 5月28日 ツチカメムシ、マルガタゴミムシ等が庭を歩き回っていました。クロアゲハ、アゲハチョウ、モンシロチョウ等も時々庭に飛来していましたがアゲハチョウは柑橘類に産卵していました。

 5月29日 庭のツバキの葉にドクガの仲間のチャドクガの幼虫が発生していました。チャドクガは本州以南の日本各地に分布しており、名前のとおりチャ(茶)の害虫として知られていますが、同じツバキ科のツバキやサザンカでもよく大発生します。幼虫は生育の全期間を通じて集団で生活し、成長すると体長が25mmほどになります。ツバキやサザンカの葉に毛虫が群がっていたら、 まずこの毛虫と考えて間違いありません。人を刺すのは目立って長い毛ではなく、からだ中に50万本もある微細な毒針毛です。 毒針毛は幼虫が脱いだ皮(脱皮殻)にも長い間残りますので、冬に樹を剪定しても刺されることがあります。年2回発生し、葉の裏に生みつけられた卵塊(黄色の毛玉状)で越冬し、幼虫は5月のゴールデンウイークの頃に孵化します。 幼虫は頭を並べて集団で葉を食べますが、幼虫のまだ小さいうちに葉を切り取って踏みつぶすのが家庭では効果的な防除法です。幼虫が大きくなると集団がいくつにも分かれ、被害が樹全体にます。今回はゴキブリ用のスプレイで駆除しました。

チャドクガの毒性はドクガ(ナミドクガ)よりはやや弱いが、刺されるといつまでも激しいかゆみが残り、それが2〜3週間も続きます。また、刺されたときの痛みはほとんどなく、あとからヒリヒリした痛みと強いかゆみでそれとわかるのでやっかいです。この毛虫に刺されたとわかったときは、 その場所にセロハンテープを貼って毒針毛を取り、そのあと長く流水で洗い流すのがよく、手でこすったり掻いたりするのは最悪です。

 先週,出かけた石川県の舳倉島ではイタドリにドクガが大量発生しており、多いところでは道路の上を数千匹のドクガの幼虫が歩いており、イタドリは落葉し茎も完全に枯死していました。このドクガにより何人もの人がかゆみを訴えており首や手足が赤くはれ上がっていました。

夜になって洗面所の壁に変わったものが動いていると家人が呼びに来ました。行ってみるとミノムシの仲間のマダラマルハヒロズコガ(ヒロズコガ科)がいました。平たいヒョウタン型の板に見えるものは、ガの幼虫が作った楯(たて)の様なものです。この裏にイモムシ形の幼虫が隠れています。鼓(つづみ)に似ていることから別名ツヅミミノムシと言うそうです。扁平な鼓型の巣を作り、移動するときはこの巣をひきずって動きます。

風呂場の壁にはミカドガガンボが張り付いていました。

チャドクガの幼虫 ドクガの幼虫
マダラマルハヒロズコガの幼虫 クワの実を食べるヒヨドリ

 5月30日 5月2日に庭に現れた疥癬症のタヌキが再訪しました。いつ来たのかはわかりませんが水道のメーターボックスの上で昼寝をしていました。近づいても全く逃げる気配がなかったが、5分ほどして見るといなくなっていました。湧水公園では、今年初めて見るコシアキトンボの雄が飛んでいました。

 

地球温暖化を考える(72)

 川口市の公園整備について

日本の都市住民一人当たりの都市公園面積は約10uですが、川口市では3.41u(平成24年度)です。川口市の環境報告書によれば平成27年度の目標が3.43uです。都市平均の約3分の1にすぎません。今後の人口減少と高齢化社会の進展を見ても、緑豊かな都市環境作りは重要性が増していくものと思われます。少子高齢化社会での緑化の推進は時代の流れでもあります。国土交通省の推計によれば大都市を中心に空き家や空き地が増加し、空き家で長期間不在となっている住宅等は人口10万人規模の都市で約14%に達するそうです。このような推計値を見るまでもなく我々の身近でも多くの空き家や倒壊寸前の家屋が散見されます。

川口市でも現状把握と短期・長期の展望に基づく計画が必要です。自然を取り戻し、緑豊かな都市をつくる、その時に大切なことは公園や緑地などを系統的に配置し、単なる都市公園ではなく市街地に中央公園、周辺部で自然緑地や農園等のある公園。そして、環境学習や多様な生態系が維持できる樹林帯などを形成して、緑地を伝って流れる風によって市内のヒートアイランド現象の緩和、防災などに配慮して計画することが望ましい。現在ある環境基本計画や都市計画及び緑の基本計画の根本的な見直しが不可欠です。

緑地の整備には時間と金がかかるが、後世への財産という観点から取り組んでいく必要があります。

大阪府豊中市では、猪名川流域の自然を再現しています。これは、伊丹空港騒音対策住宅転居跡地に造成型のビオトープをつくるものですが、小規模ながら里山、小川、水田、池等を備え北摂や猪名川流域の自然を再生しようというものです。名称は「とよなか四季彩園」で今年の4月にオープンしました。実際の整備はこれから時間をかけて行われることになりますが、一つのモデル事業です。