No.84 2011年6月  

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鳩ヶ谷で見られる野鳥シリーズ (97)

ホオジロ(ホオジロ科) Emberiza cioides

頬白や下枝下枝の芽ぐむ間を  中村汀女

ホオジロと言えば頬が白いと思うのですが、実際には人の頬にあたる部分は黒色です。良く知られているシジュカラが地方名でホホジロと呼ばれていましたが、こちらは正真正銘頬が真っ白です。大きさはスズメとほぼ同じくらいですが、スズメよりも尾が長く顔に白黒白黒白というように模様があるのが特徴です。鳴き声は複雑で、聞きなしは一筆啓上つかまつり候というのが一般的でしたが、30年ほど前にはサッポロラーメン・ミソラーメンという現代的な聞きなしが生まれました。

 近年になり埼玉県では希少種となりました。ホオジロが繁殖するような灌木林や草原が無くなってきたのが原因です。冬期には北国からの移動個体が増えるのでホオジロが減少しているようには見えませんが、鳩ヶ谷市内では夏期に見ることは殆どありません。以前は飼い鳥としての許可が出ていましたので飼育をしている人も多かったようですが、現在は飼育許可はおりませんので飼っている人がいた場合は、鳥獣保護法違反となります。また、埼玉県内では野鳥飼育は一切認められていません。

 

自然の記録:

 6月 1日 ネズミモチの葉にいたウメエダシャクが揺りかごのような感じで蛹になっていました。

庭の片隅でモンキクロノメイガが素早い動きで飛び回っていました。小さい蛾なので少しの風が吹いても吹き飛ばされて所在不明となります。

 6月 3日 梅雨の晴れ間に、安行の斜面林を散策しました。帰り道の路上で沖縄などに生息しているオオゴマダラのようにふわふわとした感じで飛んでいる白い蝶を見つけました。このような白い蝶はウスバシロチョウ系の蝶かオオゴマダラかと思いましたが、留まったところを近づいて見ると、どうやら最近増加傾向にあるアカボシゴマダラの白色型と思われました。

それにしても優雅な飛び方で、一緒に飛んでいたモンシロチョウがかなり小さく見えました。

 6月 4日 ブロック塀にキマワリ、ツバキの木にはヤモリ、ジャガイモの葉にカナヘビが、それぞれ餌を求めて動き回っていました。

 6月 5日 柿の木のあたりで素早く動くものがいたので、近づいてみるとヒメジャノメでした。幼虫はイネ科の植物を好むので庭の何処かで孵化したものと思われますが毎年見つけられずにいます。

 6月 6日 辻の水田の観察に出かけましたが、水張り後に苗を植えたばかりなので目立った生物は見つかりませんでした。田圃の畦にはカルガモの番、水の中では小さなモツゴやゾウリムシの仲間が泳いでいました。シオカラトンボ、アゲハチョウ、キマダラヒカゲなどが見られましたが、苗が生育するころには多くの生物が見られることでしょう。

我が家の玄関ドアにマダラガガンボ、シャガの葉にはキイロホソガガンボが止まり、物干し台の竿にクサカゲロウが産卵しウドンゲの花が咲いていました。

 6月 9日 我が家の私道の東側は安行慈林地域ですが、2時間ほど周辺を歩いてきました。最近増加しているアカボシゴマダラの白色型を3箇所で見ることが出来ました。オオゴマダラが飛んでいるようで優雅な感じです。その他アカスジキンカメムシ、ヤマトシリアゲ、カラスアゲハの幼虫、等が観察できました。

アカボシゴマダラの白色型 カラスアゲハの幼虫

6月10日 裏庭で昆虫を探していたところ黒色で、腹部側面が広く張り出し黒白の縞模様になった大きなヨコヅナサシガメというカメムシの仲間がいました。普通は、雑木林や公園のサクラ、エノキ、ケヤキなどの、樹洞や大木の幹のくぼみにすむことが多いようです。肉食性で他の昆虫を捕らえ、口吻を突き刺して体液を吸います。大陸からの帰化昆虫と考えられていますが、鳩ヶ谷市内で見るのは初めてでした。また、沢山のアリと共によく似たアリグモがいました。

6月11日 雨上がりの午後、庭の柑橘類の間をアゲハチョウが産卵のために飛び回っていました。ツツジの葉にはアリグモの巣があり、雌のアリグモが出入りしていました。

6月13日 午後から晴れたので市内を散策。桜町6丁目のアパート脇で大きなアザミのような花を見つけました。まだ開花していませんが、アメリカオニアザミより大きくカルドンというキク科の植物のようです。南ヨーロッパ原産でアーティチョークの原型といわれる。アザミに似て葉には多くの刺があり、茎の高さは2メートル程でした。花は咲いていませんが蕾の先端が赤紫色をしていましたので、多分赤紫色ではないかと思います。そして、カルトンの葉上に数頭のカメムシガいました。クサギカメムシですがこのような外国産の植物に好んで飛来するとは思いませんでした。

法性寺の境内では、ダイミョウセセリ、クロアゲハ、アゲハなどが飛んでおり、いくつかおいてある水鉢や簡易ビオトープ(約50×80cm)ではショウジョウトンボのヤゴの抜け殻がありました。

法性寺境内にあるミニビオトープ ショウジョウトンボの抜け殻

6月14日 今日は鳩ヶ谷の台地上から見沼用水沿いに2時間ほど散策しました。全般的に昆虫類は少な目でしたが見沼用水沿いの緑道で、シロオビアワフキ、アワフキムシの巣とクロアワフキの終齢幼虫、シロテンハナムグリ、センチニクバエおよびアゲハの交接などを観察することができました。帰宅後の庭ではキマワリ、ビロードコガネ、モンキクロノメイガなどが見られました。

交接中のアゲハチョウとセンチニクバエ

6月15日 庭ではハゼラン(三時草)やヒルガオが開花し、昨年まで無かったイシミカワやアカネの若芽が伸びてきました。ゴミムシの仲間が活発でコマルガタゴミムシ、マルガタゴミムシやツチカメムシなども見ることが出来ました。ウメエダシャクの成虫も目立って来ました。

6月18日 辻の農家のH氏より、水田の中にホウネンエビらしいものがいるとの情報をいただいて見に出かけましたが、残念ながら見つかりませんでした。オモダカは大量に生育しているので緑が奇麗でした。カルガモ、ムクドリ、キジバト、ツバメなどがいました。

6月19日 雨の影響で、昆虫類の姿も少ない時期ですがウメエダシャクの成虫が庭の梅や椿の周りを飛び交っています。クズの葉ではコクゾウムシが元気です。

6月20日 午前中、庭で昆虫の観察を行っていたところ、サザンカの葉にビロードハマキ(天鵞絨葉巻)というハマキガの1種(南方系の蛾であるが2003年から都内での発生量が増加している)がいました。写真を撮ろうと思って近づいたところドクダミの葉に移動しました。あまり飛翔力が無いので羽化したばかりのようです。また、ホウズキの葉にはキイロスズメというスズメガの成虫がいました。この蛾の幼虫はヤマノイモなどを食草としています。こちらもまだ飛ぶことが出来ずにいましたが、1時間ほどして少しだけ移動しました。ウメエダシャクはウメの枝で同じく羽化したてのようでした。その他、カノコガ、アリグモ、クマバチ等を観察しました。

午後4時30分から5時30分まで、湧き水公園に出かけたところ里小学校の子供たちが10人ほど集まり、池の生物を採集していました。アメリカザリガニ、メダカ、アメンボ、サカマキガイ等を採っていました。キンモクセイの木にはワキグロサツマノミダマシという体が丸くて緑色をした美しいクモが10頭ほどいました。日中は葉陰にいますが、夕方になってから網を張りだしていました。子供達も奇麗なクモだと驚いてみていました。

カラフルなビロードハマキ

6月28日 3日間ほど雨が降ったり止んだりの天気でしたが、今日は室内でも32℃を越える暑さとなりました。庭では、今年初めてキチョウが飛来しました。また、黒や茶色のクマケムシ(ヒトリガの幼虫)が各所で忙しく動き回っていました。シマケンモンの幼虫がネズミモチの葉を頻りに食べていました。なかなか、庭で成虫(蛾)を見ることが出来ませんが毎年数匹の幼虫が見つかります。

6月29日 今日は朝から暑くなり、室内でも午前中に34℃を越えました。庭で忙しく活動しているのはアリの仲間だけです。庭のヤブカンゾウが今年は4株で花をつけてくれました。モクレンも狂い咲きか3月に満開となったのに、また開花してきました。これも高温化の影響でしょうか。

6月30日 今日も軽く34℃を越えました。庭で活動しているのはアリのみ、ヤマトアシナガアリは庭の至る所に巣を作り、素足で歩いていると昇ってきて噛みつきます。クロオオアリは羽の生えた働き蜂が動き回っています。アミメアリは何千?何万?匹か数えることも出来ないくらいの編隊が毎日各所で見られています。特に凄いのが落ち葉や雑草を堆肥にしている場所やゴミ袋の堆肥の中にもの凄い数のアリと卵がひしめき合っています。アミメアリは地中に巣を作らないだけに見つけた時にはウワー凄いの一言です。本当は殺虫剤でも散布したいところですが、堆肥の消化にも役だっているであろうと、良い方に解釈しています。

 

鳩ヶ谷から消えた生物・消えつつある生物 48

タコノアシ(ユキノシタ科)

 9月から10月になると、花の終わったあとが茹で蛸の吸盤のついた足にそっくりになることからタコノアシの名前がついています。この状態を見れば誰でも納得できるのではないかと思います。多年草の植物で茎の高さは1mを越えることもあります。以前は休耕田や水田、等では当たり前に生育していた植物ですが今では希少種になっています。

 

地球温暖化を考える(39)

仮称・はとがやの湧き水の里に関連して(1)

10年ほど前まで、鳩ヶ谷市には日本一小さなトンボ公園がありました。東京動物園協会に勤務していた鎌奥哲男さんが定年後の1994年に農家から約千平方メートルの土地を借りて井戸や沼地、草地を造ると、メダカやチョウ、カルガモといった多くの生き物がすみつくようになりました。「これは子どもたちが自然と触れ合う格好の場所になる」。そう思った鎌奥さんは地元の子どもたちにトンボ公園を開放し、共に土木作業などを行いながら、自然観察塾「自然塾トンボクラブ」を立ち上げ、昆虫採集や野草採取などを行い子どもたちに動植物の生態を教えてきました。「大人たちは子どもに自然の大切さを教えているが、実はその大人たちが自然を破壊している。そんな矛盾もこのトンボ公園を手掛けたきっかけになった」ようです。

「トンボ公園」の「トンボ」は「田んぼ」から。鳩ケ谷周辺はかつて自然豊かな水田地帯だったことを多くの人に知ってもらいたく、当初は田んぼ公園と名付けた。しかし「田んぼよりトンボの方が格好良いかなと思って。それにトンボだと子どもたちに親しみを持ってもらえるしね」と、続けてきたトンボ公園ですが、2003年にトンボ公園は区画整理のため埋め立てられました。鎌奥さんは現在も子供達に自然観察会を定期的に行っています。

 

湧水公園−はとがや湧き水の里づくりへ向けて

筆者は「トンボ公園は、里小学校の南面にあり、可能であれば小学校のビオトープとして残せないか」と市や関係者に働きかけましたが、全く相手にされず埋め立てられて消失しました。その後、市内各地で子供達を対象に自然観察会を行ってきましたが、子供達からは、もっと昆虫のいる場所で観察会を行って欲しいとの要望が常にありました。そこで、以前から目をつけていた湧水公園をもっと拡大して整備できないか、2代に亘って市長に働きかけました。2010年に木下市長より「湧き水の里」を作りたいとの話があり、公園作りのための委員会が開催されました。2011年2月には「はとがや湧き水の里づくり策定計画」報告書が市長に提出され、5月末にはパブリックコメントの結果も開示されました。今年からは実際の作業が始まる予定でしたが、川口市長から待ったがかかりました。吸収合併に伴い、今年度の鳩ヶ谷市の予算は凍結、今後の公園化にあたっては川口市と合併した後に考えると言うことです。今後の川口市の都市計画は既に決まっており、新しく計画を組み入れるのは簡単ではありません。

5月24日に個人的に岡村市長宛、要望書を提出したところ、6月3日に回答がありました。現在の鳩ヶ谷市の計画は新川口市の全体計画や財政状況をふまえて検討したい。6月7日には鳩ヶ谷市の環境部長からも同様の趣旨説明がありました。残念ながら、いずれも前向きな回答ではありませんでした。

はとがやに里山をつくる会では、とりあえず出来ることからやっていこうと活動を始めました。

湧水公園での観察会、等

2007年 7月27日  郷土資料館主催  夏休み子供自然観察会                    参加者30名

2009年 7月25日  環境市民会議で現地視察                                         参加者 9名

2009年10月 3日  環境対策課主催・第4回環境講習会・観察会            参加者15名

2010年 6月 5日  環境対策課主催・第2回環境講習会・観察会             参加者15名

2010年 8月21日  環境対策課主催・第3回環境講習会・観察会            参加者20名

2011年 4月23日  環境対策課主催・第1回環境講習会                         参加者20名

2011年 5月28日  環境対策課主催・第2回環境講習会                         参加者20名

2011年 7月30日  環境対策課主催・第3回環境講習会 予定