No.129 2015年3月

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鳩ヶ谷周辺で見られる野鳥シリーズ(142)

セイタカシギ(セイタカシギ科)Himantopus himantopus

セイタカシギ(若鳥)

セイタカシギは読んで字の如く嘴はまっすぐで細く、脚は非常に長く赤いので目立ちます。「立てば芍薬座れば牡丹歩く姿はユリの花」と言われるように、すらりと細長い女性の脚は美しい。それに劣らずセイタカシギの脚も細くてすらりとしています。水辺の貴婦人とも形容されており、英名はStilt sandpiper「stilt=竹馬」、成鳥は赤い脚に緑暗色の翼のコントラストが美しく、特に水辺で羽を広げてダンスをするような仕草をしている時などはまるでバレリーナのようです。長い脚が立たないような水深の場所では泳ぐこともあります。学名のHimantopusは革ひものような、飛んだ時の長い脚を皮ひもに見立てているものと思われる。絶滅危惧1B類 (EN) 

40年以上前には珍鳥として野鳥観察者の間では人気者でしたが、谷津干潟周辺で繁殖したのをきっかけに近年では各地で繁殖が確認されています。それでも、水田や浅い池等に飛来した時にはカメラマンが大勢集まってきます。

川口市内では、芝川第一調節池の工事が始まって、干潟状の浅瀬ができた頃に何度が飛来したことがあります。現在は水深が深くなったために、足の長いセイタカシギでも水深が深すぎるようです。

自然の記録

 3月 1日 埼玉植物園の植木畑では、ナズナ、タネツケバナ、ハコベ、ウシハコベ、ノボロギク、ホトケノザ、赤花のアセビ、などが開花していました。鳩ヶ谷本町の御岳神社前の斜面ではフキやヒメリュウキンカの花が開花していました。ヒメリュウキンカ「姫立金花」は、山野の湿った草原や川沿いの林床など湿り気のある場所に自生します。原産地はイギリスですがヨーロッパからシベリアにかけて広く分布している野草です。葉は暗緑色のハート形、春になると花茎を伸ばして表面に光沢のある3〜4cmの黄色い花を次々と咲かせ、花期が長いので花の少ない季節に楽しめます。

ヒメリュウキンカ「姫立金花」 アセビ「馬酔木」

 3月 2日 風は強かったのですが天気が良かったので旧芝川を散策してきました。新芝川も旧芝川も土手の緑がきれいになってきました。開花していたのはピンク色のホトケノザが目立ちました。コイやクチボソも流れに浮かんでくるようになり、ミシシッピアカミミガメが岸辺で甲羅干しをしているのが目につきました。

野鳥は先月まで8種類ほどいたカモ類が4種類になりました。ヒドリガモ(雄38、雌31羽)、コガモ(雄、雌各16羽)、オナガガモ(雄雌各5羽)、カルガモ8羽等でした。新芝川が干潮でしたので旧鳩ヶ谷市辻側の葦原手前に干潟が出ており、セグロカモメ(2羽)、クイナ、バン、オオバン、イソシギ、ヒドリガモ、コガモ、カワウ等が群れていました。旧芝川ではジョウビタキとカワセミが目立ちました。ジョウビタキは囀り前の口舌り(ぐぜり)の声が聞こえてきました。そろそろ渡去する季節になったようです。

青木水門の近くにあるブロッコリーの畑ではヒヨドリの群れが集まってブロッコリーを一生懸命食べていました。下の方にあった葉は全て食べつくされて柔らかい花芽の部分が狙われているようです。

ホトケノザの群落 ブロッコリーを食べるヒヨドリ

 3月 6日 今日は啓蟄、色々な生物が蠢きだす頃です。湧水公園ではハンノキの種がこぼれている場所にカワラヒワ13羽が集まっていました。三光稲荷の路上ではシロハラが採餌していました。シロハラもそろそろ北国へ帰る準備です。

 3月 7日 鳩ヶ谷本町2丁目の植木畑でウグイスの初鳴きを聞きました。まだまだ下手なさえずりでホーペチョという感じでした。

今日は小雨が降ったりやんだりでしたが、川口市のグリーンセンターで探鳥会を行いました。参加者17名でしたが冬鳥のシメやツグミをはじめキジバト、ハシブトガラス、ハシボソガラス、スズメ、ムクドリ等、野鳥観察の基本種の勉強を中心に行いました。

グリーンセンターではウメ、ツバキ、サンシュウ、アカバナマンサク、シナマンサク、キクザキイチリンソウ、クリスマスローズ、等が咲いていてお花見を兼ねることが出来ました。

 3月11日 庭ではキュウリグサが開花し、隣家の庭ではシキミが開花しました。アミガサユリも花芽をつけていました。

綺麗になったジョウビタキの雄 土の中から出てきたヒキガエル

 3月16日 安行の「花と緑の振興センター」まで往復10000歩あまり散策してきました。白い花のシナミザクラ、淡いピンク色の椿寒桜(ツバキカンザクラ)が満開となり、安行桜は1分咲き、ウメの花は終盤でしたが梅林全体としては見栄えがありました。サクラもウメもバラ科の落葉高木である。ツバキカンザクラの原木は愛媛県松山市の伊予豆比古命神社(別名は椿宮)にあるとのことでした。解説版によれば支那実桜(シナミザクラ)と寒緋桜(カンヒザクラ)の交雑種と考えられている。開花時期は3月である。花径は3センチくらいの中輪で、蕾の色は紅色である。花は一重で、濃くて明るい桃色をしている。このツバキカンザクラにヒヨドリが50羽以上集まって吸蜜している様は異様な光景でした。道路脇では今年初めて観察のルリシジミがいました。

 3月17日 豊田の森の竹林では、ウラシマソウが発芽し、早いものでは仏炎包という花から長く伸びた細い紐のようなものが出ているものもありました。フキノトウは頭が立ちすぎて白い花が沢山咲いていました。オオアラセイトウの紫色の花も開花を始めています。カナヘビも竹林の日溜りの中で活発に動いていました。鳩ヶ谷本町2丁目の路上ではヒキガエルが“轢き蛙“になっていました。

家の周りではモンキチョウとキタテハが飛んでいました。また、久しぶりにジョウビタキの雄が飛来し、満開の枝垂れウメではメジロが囀っていました。

 3月18日 今日は彼岸の入り、春分の日を中心に、前後3日を含めた7日間が春のお彼岸です。正岡子規は「毎年よ彼岸の入りに寒いのは」と詠っていますが、今日は日中20℃を超えました。汗ばむくらいの暖かさでした。安行慈林の墓地に墓参に出かけましたが、道筋にはウメ、ボケ、ヒガンザクラ、レンギョウ等が満開となっていました。とある植木畑では、桃源郷を思わせるほどの開花で見事でした。途中、江川沿いの小さな調節池の土手ではツクシが至る所に伸びていました。鳩ヶ谷本町2丁目の水道ポンプ場わきの空き地でもツクシとスギナが同時に伸びていました。

 3月19日 我が家の庭でニリンソウとヤブカンゾウが発芽しました。毎年発芽してくれますがなかなか増加してくれません。もともと、我が家の土地に自生していたものではありますが、増えるには時間がかかります。近くの路上ではカントウタンポポ、交雑タンポポやハルノノゲシも開花しました。

 3月20日 町中ではハクモクレンとコブシの花が開花しました。昨日まであまり目立たなかった気がしましたが、1日の違いで見事に開花している木があり驚きました。

 3月21日 庭のタチツボスミレが開花しました。豊田の森脇の斜面林で咲いているサクラの木にメジロ12羽とコゲラの群れが来ていました。ツグミ、ヒヨドリ、キジバト、ムクドリなども近くにいましたが地上で採餌していました。

渡良瀬遊水地では渡ってきたばかりのツバメが乱舞していたとの情報がありました。そろそろ市内でもツバメを見かけることがあるかもしれません。バードリサーチのツバメの初認調査では、軒下にツバメが来た時を初認として記録しています。

ナニワズの花(沈丁花の仲間) 今年 初認のルリシジミ
ツバキカンザクラで吸蜜するヒヨドリ フキの花 ウラシマソウ

 3月22日 安行原の密蔵院の安行桜を見に出かけました。今年は、どんぴしゃり満開でした。それだけに人出も多く混雑していました。安行桜には200羽以上のヒヨドリが飛来して吸蜜していました。メジロも少しだけ来ていましたが、ヒヨドリの数にはかないません。道を隔てた安行原自然の森(平岡山)の谷地にある池ではヒキガエルの卵がウドンを束ねたように産卵してありました。20pの紐状の卵塊の中に卵が80個、紐状の卵塊を伸ばしたところ70mあったので計算上約2800個の卵があったそうです。早いものではオタマジャクシが出ているものもありました。安行小学校のこどもエコクラブがヒキガエルの卵を数えたところ、近くではヒキガエルの遺骸やけがをしたヒキガエルもいました。昨晩はヒキガエルの「カエル合戦の声を聴く会」という観察会が行われたようです。その折に、フクロウの声も聞こえたそうです。

安行桜とヒヨドリ 密蔵院の安行桜
ヒキガエルの卵塊 ガザミの仲間を銜えたセグロカモメ

 3月24日 風が強い一日でしたが旧芝川を散策してきました。ソメイヨシノの花芽が大分ふくらみを増してきましたが、もう少しかかりそうです。川の中ではカワジシャとオオカワジシャが発芽し、セイヨウカラシナ、タネツケバナ、ナズナ、ホトケノザ等が咲いており、モンシロチョウを初認しました。ウグイスもこの地で初鳴きしました。

カモ類はカルガモ、コガモ、ヒドリガモに加えアメリカヒドリの雄が青木橋水門付近で群れていました。オナガガモ、ハシビロガモ、キンクロハジロ、ホシハジロなどはすでに北帰行のようです。新芝川の天神橋と塩入橋の間でセグロカモメ若鳥が大きなガザミの仲間のカニを銜えていましたが処理できずに放棄しました。おかげでガザミ?は命拾いをしました。

 3月25日 庭のソメイヨシノと見沼代用水の緑道のソメイヨシノが開花しました。東京都内では昨日、開花したとの報道がありました。

 3月26日 見沼代用水沿い緑道のソメイヨシノは1分咲きとなりました。氷川神社付近ではマエアカスカシノメイガがヒラヒラと飛んでいました。庭ではシャガが数株開花しました。

造成中の前野宿川調節池の概要が出来上がり、池の底には水が溜まっていました。カルガモ4羽とコガモ1羽が泳いでいました。

 3月27日 湧水公園の菖蒲田にタヌキの足跡がありました。湿地になっているので足跡が深々とついており、林の方へと続いていました。池の中にはカルガモのペアが昼寝をしていました。

ヤナギの花がきれいに咲き始め緑の葉に黄色味を帯びた花が風に吹かれて綺麗でした。

「川口市自然の家」の庭では春型のアゲハチョウが飛び、ツバメ2羽が初認となりました。街中で姿を見かけるようになるまでは、もう少し日にちがかかりそうです。 

 3月30日 市内のソメイヨシノは7分咲〜満開の状態です。特に公団通り、ラクダ坂付近が良い状態、コンフォール東鳩ヶ谷の公園のサクラは2種類ともに満開となりました。

庭のクサイチゴも開花し、ムベも一輪だけですが開花しました。

 3月31日 サクラ見物がてら江川沿いを散策したところ、セイヨウアブラナ、セイヨウカラシナ、オオアラセイトウ等の菜の花の仲間が満開でした。江川の川の中には自転車や家庭の一般ごみなどが放置されており、定期的に業者によって江川を清流にするための作業が行われていますが、中々難しいようです。川をゴミ捨て場と思っている人もいるようで、時折、布団や古いタンスなどが投げ込まれています。

 

地球温暖化を考える(82)

ヒヨドリとシュロの関係

3月14日に、はとがやに里山をつくる会のメンバーが川口市の保存樹林である「豊田の森」でシュロの苗木の抜き取り作業を行いました。シュロの苗木は、ヒヨドリが排泄した糞より発芽したものです。2年前には20株程度を抜きましたが、今回は約1000株あったそうです。約2000uの竹林に1000株ということは、2m四方の面積に1株ですので放置しておけば竹林からシュロ林に変わってしまうかもしれません。

国立科学博物館の分園である目黒自然教育園では、シュロは1950年代に7本だったのが、1990年代に800本以上になり、2010年代に2300本に異常繁殖したとのこと。10p以上の高さのシュロは12000株以上あるようです。

増殖した原因は、地球温暖化の影響あるいは都市のヒートアイランド現象により、年の気温が上昇したことによるものと思われます。昔は発芽しなかったシュロの種子が発芽できるようになったためと言われています。都市の気温が上昇して冬暖かくなるのは良いのですが、生物にとっては困るものも多く出てきます。夏のクールアイランド化のためには街中に多くの植物を増やす必要がありますが、シュロのような植物が増殖するのは好ましくありません。

都市化が進んで豊かな自然がなくなり、野生の動物たちの生活環境が脅かされる一方で、野鳥のなかでも人のそばや人工的な環境を積極的に利用し都会に進出してきているものがあります。また、もとは人に飼われていた鳥が籠抜けして野生化しているものもいます。このように都市的環境に適応して生活している野鳥は都市鳥と呼ばれます。ヒヨドリも都市鳥の中心的存在になってきています。

バードリサーチの報告では、ヒヨドリが採食していた植物は木本で32科74種類、農作物で6科12種類と言われています。

我が家の庭でも、ヒヨドリが運んできて発芽したものはシュロ、アオキ、ネズミモチ、エノキ、ピラカンサ、センダン、マンリョウ、ナンテン、ムラサキシキブ、ヒヨドリジョウゴ、ノシラン等があります。

実生で増加したシュロ(この位の大きさになると作業が大変です)
除草されたシュロ この程度の大きさの内に除去すると楽です