No.3 2004年6月

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鳩ヶ谷で見られる野鳥シリーズ18

オオヨシキリAcrocephalus arundinaceus

アシの穂で囀るオオヨシキリ
アシの穂で囀るオオヨシキリ

オオヨシキリは、20年ほど前まで鳩ヶ谷市内でも普通にみることが出来ました。特に旧NHK放送所(現、鳩ヶ谷高校)、鳩ヶ谷遊水池、八幡木の休耕田、など葦原のあるところでは、毎年4月の終わり頃に渡来して7月中旬頃までの生息し、夏の間やかましく囁くところから行々子と名付けられ俳句や短歌などでも親しまれてきました。。。。

 「船宿の昼寝起こすや行々子」

 「夕茜今日ひたすら行々子」  荒川 信

 「目覚めれば障子明るく葦切りの鋭き声の響く初夏」  田中幸恵

葦や枯れ木の頂きに止まって、仰々しく鳴いているのは、なわばりを主張しています。自分のなわばり内に他の雄が入ってくるとものすごい勢いで追いかけ、時には激しくつつきあって喧嘩をすることがありますが、たいてい侵入者の方がすぐに逃げてしまうようです。一夫多妻で葦の茎を利用して上手に巣造りし、子育てをします。この頃のオオヨシキリは沢山の昆虫類を雛に与えます。

20年以上も前に見沼田圃とその周辺地域の葦原とオオヨシキリの個体数の関係を調べたことがあります。

オオヨシキリの巣と雛 葦原とオオヨシキリの個体数の関係
オオヨシキリの巣と雛 葦原とオオヨシキリの個体数の関係

その結果、図に示したようにオオヨシキリの雄10羽が繁殖に関わるには最低1ha以上の面積を持つ葦原が必要だと言うことが解りました。

しかし、鳩ヶ谷市内にはこのような営巣場所となる葦原が無くなりました。最後に残っていた葦原、そこは市役所の先にある遊水池でした。そこで、オオヨシキリの囀りを聞いたときには、まだ市内にも残っていたかと安心しました。しかし、現在はテニスコートに変わってしまいました。それに伴い餌となる昆虫類も減少し、営巣場所がなくなりました。しかし、里地区のトンボ公園にわずかですが葦原が出来ました。もしかしたらオオヨシキリが渡来するかなと期待していたのですが、昨年8月にトンボ公園が埋め立てられてしまいました。又一つ、身近な自然が消失したことにより、市内ではオオヨシキリは生きる権利を失ってしまったのです。市街化調整区域という開発の名の下、二度と鳩ヶ谷市内でオオヨシキリの姿を見ることはないでしょう。又一つ鳩ヶ谷市内から貴重な自然が無くなりました。

ツバメが住みにくくなった鳩ヶ谷

1973年より30年以上に亘って、ツバメの営巣数の調査を行ってきました。当時は市域全体で38巣ありました。年々少しずつ営巣数が増加していましたが、1980年に減少しました。この原因は商店街の店舗を改装し始めた事による影響が大きく、また、東京都内のツバメの営巣数が減少し、周辺地域へのドゥナツ化現象に伴い1985年まで増加し、最大116巣にまでなりました。116の巣があったと言うことは少なくとも約240羽の親ツバメがいて、それぞれの巣で3羽の雛が巣立ったと考えると、約720羽以上のツバメが生活できる環境が鳩ヶ谷市内にはあったのです。つまり、720羽のツバメが一夏の間生活できるだけの豊富な昆虫類が鳩ヶ谷に生息していたのです。この頃は一軒の軒に5巣も造ったところがありました。その後年々、水田や畑地などの農地が減少し、それに伴いツバメの営巣数も激減しました。1995年以降はグラフに示すように30年前に比べ農地が90%消失しました。

ツバメの巣数 ツバメの巣

今年もツバメは桜町を中心に5巣が営巣しましたが、途中でカラスに襲われて巣を壊されたり、育雛中の巣が壊されて雛が死んだりしたため、一産目は全て失敗に終わりました。

市内を歩いても、ツバメの姿を見ることが殆どありません。

近年はツバメだけでなく、ヒバリの声も聞こえなくなりました。また、一昔前まではチヨットコイと鳴いていたコジュケイの声を聞くこともありません。身近な自然が無くなるということはとても寂しいことです。30年前の市民アンケート調査では本町および桜町周辺の地域は緑が多くて、住みやすい環境であるとの結果が出ていました。

(先日出かけた長瀞のライン下りへ向かう途中の商店街では4軒の商店で16巣、そのうち6巣で雛が孵り、親ツバメが荒川を飛び回りカワムシなどを頻繁に巣で待つ雛に運んでいた。このような光景は、1985年まで鳩ヶ谷市内の何処でも見られた光景です。)

自然の記録:

梅雨と共に、クチナシの花の甘い香りが漂う季節になりました。クチナシの甘い香りに誘われて来るのは人間だけでなく、いろいろな昆虫もやってきます。特に目立つのはハチドリのように羽を細かく羽ばたいて花の蜜を吸っているオオスカシバはクチナシの常連です。

昆虫類:

 5月30日 オオミズアオ:本町3丁目孵化したばかりの綺麗な成虫を観察した。

 5月30日 ホシベニカミキリ:桜町6丁目(自宅)ドクダミの花に飛来した。

 5月30日 ミスジチョウ、キマダラヒカゲ:桜町6丁目(自宅)に飛来。

 5月30日 キタテハ:ラクダ阪付近を飛んでいた。

 6月 4日   ヒロオビトンボエダシヤク成虫:ラクダ坂付近(毎年この時期によく観察される)。

 6月 5日   ヒロオビトンボエダシヤク成虫、ツノコガネ、カナへど(2):桜町6丁目(自宅)。

 6月11日 ムクドリ子育て中:グリーンハイツ2階の換気扇に営巣し、雛に餌を運んでいる。

 6月14日 オニグモが夕方になると毎日、柿の木より大きな体をぶら下げている。

 6月18日 ムラサキシジミ、クロアゲハ、ナミアゲハ、コシアキトンボ、シオヤアブ、カナヘビ、アリ地獄5カ所、等法性寺山にて。ムラサキシジミは市内では珍しい蝶の一つです。

ショウジョウトンボ(♂、♀)、ウチワヤンマ、シオカラトンボ(♂、♀)、ヒメアカタテハ(湧き水公園)  クロヒカゲ、オカダンゴムシ(集団発生)桜町6丁目。

 6月20日 トラカミキリ:桜町6丁目(自宅)スズメバチと同じような色と形をしている綺麗なカミキリ、ヒメハンミョウ5匹。

ドクダミの花に止まるササグモの仲間(6/5) ショウジョウトンボ(湧き水公園)
ドクダミの花に止まる ササグモの仲間(6/5) ショウジョウトンボ         (湧き水公園)