No.110 2013年8月

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鳩ヶ谷で見られる野鳥シリーズ (123)

サンコウチョウ(カササギヒタキ科)Terpsiphone atrocaudata 

暗い林が好きなサンコウチョウ

サンコウチョウは漢字で書くと三光鳥、「月日星ホイホイホイ」と鳴くところから付けられました。

雄は頭から胸にかけて紫黒色、背は紫黒褐色で尾は黒く長いのが特徴です。尾の長さは体長の2.5倍程度の長さがあります。また、目の周りと嘴はコバルト色をしています。雌は尾が短めで体色は雄に比べて淡い感じです。本州以南に夏鳥として渡来します。

1960年代は鳩ヶ谷・川口周辺の雑木林では普通に繁殖していました。川口市内で最後に繁殖していた場所は、東川口駅の近くにある雑木林と安行領家にある興善院の斜面林でした。東川口駅の近くにある雑木林はJR武蔵野線の開通に伴って宅地化されましたが、この林はトラツグミが繁殖したところでもありました。鳩ヶ谷では大龍寺山を通過する個体(1984年6月10日中央病院中庭)が観察されましが、最後に観察したのは1995年6月4日に自宅庭の柿の木に飛来したものでした。これ以後は、全く観察されていません。

 

自然の記録:

 8月 1日 プランターのミニトマトがいくつか穴だらけになっていたので、気を付けて見ていたところようやく犯人がわかりました。シラホシハナムグリやアオドウガネが赤くなり始めたものを狙って中味を食べていました。葉はニジュウヤホシテントウにより穴だらけ、茎はホオズキカメムシが寄生して茶色くなってきました。そのため、果実の色も綺麗なオレンジ色にならず、味も若干落ちてきました。

 8月 2日 東京タワーで行われている昆虫展を見に出かけました。標本箱300箱という数に刺激され、行って来ましたが、日本産はもちろん外国産の珍しい昆虫類が多く楽しめました。夏休みでもあり親子連れが多いかと思っていましたが、漫画家のフジコ・フジオ展が同時開催されていたので、そちらの方に人の流れが行っていました。

 8月 3日 ムベのつるにいたアケビコノハの幼虫の姿が見えなくなりました。天敵にやられたのか?新たな産卵に期待しています。地上ではハラビロカマキリの幼生が歩いていました。近づいてみるとおもいっきり体を仰け反ってイナバウワー状態です。

 8月 4日 江川と前野宿川の合流点付近で久し振りにカワセミの若鳥を観察しました。3年ほど見かけなかったのですが、何処かで繁殖をしていたようです。たまに見かけると何か特をした気分になります。

暑さも何のその元気なキマワリ 威嚇するハラビロカマキリの幼生

 8月 6日 暑い日が続いて降雨がないために湧水公園のヘドロが溜まりユスリカの繁殖場になっていました。手網を使って届く範囲のヘドロを除去しましたが、午後からかなりまとまった雨が降ったので多少綺麗になったようです。池の周囲ではジュズダマの実が黒くなり始め、ミソハギは2か月に亘って咲いています。この雨の影響で、我が家の裏庭に隣家の土砂がかなり流れこんできました。隣家の庭は以前、草某々でしたが最近は毎日のように草を刈り、裸地化して土がむき出しの状態です。一年中、土を掘り返しては全てのゴミを焼却しているので土が流れやすい状態にあります。

 8月 7日 柿の木の下生えにサトキマダラヒカゲとヒメウラナミジャノメが仲良く飛んでいました。

 8月 9日 アブラゼミの声が賑やかさを通り越してうるさく感じる程に鳴いています。それにミンミンゼミが加わりました。15時過ぎにホウシゼミが初鳴きしました。

 8月12日 3日連続で40℃を越える地域が続出とのニュースが流れています。家にいるだけでも暑いが、買い物に出かけてスーパー・マーケットで涼んでいる人を見かけます。涼んでいる時はよいが表へ出た時の暑さはまた格別のようです。夕方になり、激しい雷と共に降雨がありましたが、雷の音に比べるとお粗末な降雨でした。それでもヤモリが壁には出してきたりカナヘビが走り回ったりと降雨の後は若干生き物たちも一息ついているようです。

 8月13日 今日はお盆の墓参に出かけましたが、暑さ抜群でした。隣の墓地では6月に咲いていた一重咲きのクチナシが二度目の開花をしていました。帰宅後、玄関の周りをツマグロヒョウモンの雌が飛び回っていました。昆虫類も暑さのためか、あまり目につきませんが枯れ枝の上をキマワリが足早に歩いていました。

 8月14日 東縁見沼代用水にかかる浅間橋からいなり橋の間で大きなニゴイが数頭泳いでいました。水深が浅くなりコウガイモが揺れている間をゆっくりと泳いでいました。アメンボも沢山泳いでいました。緑道ではアブラゼミとミンミンゼミの合唱が賑やかでした。

 8月15日 庭のアブラゼミは衰える様子もなく鳴き続けています。15時過ぎに玄関前にアシブトクチバが止まっていました。昨年初めて庭で確認しましたが、黒と白の綺麗な蛾でシタバガの仲間です。ゲッケイジュの葉の上でムラサキツバメを確認しました。鳩ヶ谷地域ではここ数年見る事はなかったのですが、庭で確認できるとは思いませんでした。その他、イチモンジセセリ、キマダラヒカゲ、アゲハチョウ、ヤマトシジミ等の蝶が飛来しました。

 8月16日 久し振りに安行の植物振興センターおよび興禅院の野鳥の森へ昆虫の観察に出かけました。小さな池の周りにはオオシオカラトンボ、シオカラトンボ、コシアキトンボ、アキアカネ、ナツアカネ、リスアカネ、マイコアカネ、ウスバキトンボの8種類、アゲハチョウ、クロアゲハ、ナガサキアゲハ、ツマグロヒョウモン、アカボシゴマダラ、イチモンジチョウ、コミスジチョウ、キマダラヒカゲ、キチョウ、ウラギンシジミ、ヤマトシジミ、イチモンジセセリ、等の12種類の蝶、変わったところではアブラコウモリがラクウンショウの幹に止まっており、剥がれかけた樹皮の中に入り込もうとしていました。トイレの壁には珍しく15cmほどの大きさのナナフシが止まっていましたが、近年では珍しい発見でした。

木の枝になりきるナナフシ ラクウンショウに止まるアブラコウモリ

 8月17日 湧水公園に植栽したオモダカ5株が10株に増加しました。周りを飛び交うトンボの数も多くなり、30分ほどの間に観察できた種類はショウジョウトンボ、ナツアカネ、ウスバキトンボ、シオカラトンボ、オオシオカラトンボ、ギンヤンマの6種類でした。藪陰ではナガサキアゲハの綺麗な雄が飛んでいました。タコノアシの花もかなり開花して来ました。法性寺の斜面ではカブトムシの雄の遺骸がありました。今年はカブトムシを見る機会が増えましたが、環境さえ造れば市内至る所で見ることが出来るのではないかと思っています。我が家の庭では、初認となるカノコガが飛んでいましたが、今年は若干遅かったようです。

桜町2丁目のEさんより、午前1時20分頃にアライグマが猫の餌を食べに来た、と写真付きで情報を戴きました。

 8月18日 玄関の壁に羽化したてのアケビコノハが止まっていました。まだ飛翔力がないようでしたのでムベの葉に留まらせましたが、クズの葉に移動しました。カメラを持って戻ってみるとオオカマキリが狙っていました。すでに、後頭部の辺りをカマで叩かれて傷が付いていたので柿の木に移動しましたが、午後になってみると土の上に落ちてアリの餌食になっていました。昨年、今年と幼虫が数匹見つかりましたが、全てカマキリにやられたものと思っていましたが、生き残って蛹になっていたようですが、折角羽化しても結局カマキリに狙われることになりました。アケビコノハは留まった時の姿勢が木の葉の枯れ葉の様に見えますので静止していると見つけにくい種類です。それほど擬態していても天敵には襲われてしまいます。現在、庭にはオオカマキリ、ハラビロカマキリ、コカマキリの3種類がいて、カナヘビも数頭いますので庭へ来る昆虫類も命がけのようです。

カマキリが狙うアケビコノハ 枯葉のようなアケビコノハ

 8月20日 毎日のように夏日が続いていますが、季節は秋。数日前から秋の虫の声が聞こえているような気がしていましたが、今夜はミツカドコオロギのチチチチチチという声が身近で聞こえてきました。月の明かりも秋の月となり2本に見える光が4方向へ綺麗に光り輝き足元まで届いていました。かぐや姫は、このような月の光を昇っていったのかなと考えさせられました。

本町2丁目の民家の垣根ではユウガオの白い大きな花が満開となっています。湧水公園の近くの民家ではトラノオの花が咲いていました。40年ほど前には市内でも当たり前に見ることが出来ましたが、近年は外国産の名前もわからないような花が多くなっていますので、カンナの花などを見かけてもほっとする気分になることがあります。

 8月21日 ブロック塀の上をセスジスズメの終令幼虫が歩いていましたが、そろそろ蛹化するために、土の中に入るため移動していたようで、30分後には消失していました。本町1丁目の氷川神社の参道にトビイロスズメの成虫が止まっていました。踏みつけられてはいけないと移動しようとしましたが何度飛んでも道路上へ降りてしましまいました。庭ではコンボウヤセバチとオオスカシバが飛び回っていました。ミンミンゼミの声は大分少なくなりましたが、アブラゼミの声は相変わらずです。それでも、色々な場所で路上に落ちているセミの姿を見かけるようになりました。

 8月23日 庭のゲッケイジュでアオマツムシが鳴き出しました。良い声で鳴いているなと思っていたら、いきなり雷鳴と共に強い雨が降り出し鳴き止んでしまいました。

 8月26日 庭の柿の辺りをヒラヒラ飛んでいる蝶がいたので近づいてみるとミスジチョウでした。コミスジチョウは時々見かけますが、ミスジチョウを見るのは久し振りでした。今年は暑さによる影響か庭のイチジクの実が熟する前に落ちてしまいます。いくつかは甘くなっていましたが、殆どが甘みの薄いものでした。今朝は久し振りにミンミンゼミの声が聞こえましたが、アブラゼミの声も日ごとに少なくなっています。草むらでは1cmほどのウスグモスズがいました。夕方にはアオマツムシの声が良く聞こえるようになりました。

 8月30日 湧水公園の斜面林では7月に除草作業を行ったにもかかわらず、見事な草地に変化していました。斜面ではカラムシの群落ができあがり、いくつかの葉がまかれていました。まかれた葉の中ではアカタテハの幼虫が元気にしていました。その周辺ではアゲハチョウ、アオスジアゲハ、コミスジチョウ等が飛び回っていました。斜面林の外側では珍しくワレモコウを見つけました。もともとあったものか植栽されたものかはわかりませんが、懐かしさを感じました。そのほかルコウソウやオシロイバナ等が色を添えていました。

家に戻ってみるとツバキの葉陰にアカタテハが止まっていました。蝶にとっても今日の暑さは格別なのかじっとしていました。

 8月31日 フェンスに絡まったキカラスウリの層。が厚くなり風通しが悪くなったので、間引きをしていたところウリハムシが一斉に飛び立ち驚きました。えっと思うくらいの数が寄生していました。おまけにキイロスズメバチまで飛び立ち、顔の前でUターンしていきました。キイロスズメバチもいきなり襲われたと思いびっくりしたものと思われます。

    

地球温暖化を考える(65)

はとがやの湧き水の里に関連して(24)

 鳩ヶ谷地域では年々自然環境が悪化しており、田んぼの減少と共に東縁見沼代用水から引水していた水田灌漑用の用水や悪水路は全て暗渠化されたために水生生物が生息できる環境が消失しました。   

それに伴いゲリラ豪雨などによる大雨の影響で床下浸水・床上浸水などの被害が出るばかりでなく、暗渠化された部分は全てコンクリートで覆われていますので水が流れる場所がありません。水路は上面が開かれていることにより水蒸気の蒸発による冷却効果もあり、さらには多様な生物の生育できる環境として活きていました。このような環境が消失したことにより、田んぼ由来の昆虫であるトンボの仲間も極端に減少しています。今、鳩ヶ谷地域でトンボを見ることが出来る水環境は、桜町1丁目の湧水公園、天神橋近くにある旧芝川の2か所と言っても過言ではないほどに減少しました。東縁見沼代用水・それに続く江川・毛長川でも全く見られないわけではありません。中でも赤とんぼの仲間が比較的観察されやすい場所は湧水公園です。一口に赤とんぼと言っても、多くの種類がいます。例えば、ノシメトンボとリスアカネは4枚の羽根の先端が茶褐色をしているのが特徴です。マイコアカネは個体数は少ないものの毎年数個体が観察されており、8月中旬頃に林の縁などで見かけるお腹が真っ赤で顔が綺麗な空色をしているのが特徴です。全身が赤いのがショウジョウトンボ、ナツアカネの雄、ナツアカネとアキアカネはよく似ていて識別が難しい個体がいますが、8月も中旬を過ぎるとナツアカネの雄は体や顔も赤くなって来るので見分けやすくなります。この他に普通に見ることが出来るアカトンボの仲間としてはウスバキトンボがいます。このトンボはベニガラトンボとも呼ばれて歌にもなっているくらい普通種です。毎日、35℃前後の夏日が続いていますが赤とんぼは元気に飛び回っています。最も暑すぎると下のアキアカネのように尾の先端を上に上げて直角に止まるものもでてきますが、この姿勢によって涼しさを感じようとしているのではないかとの説もあります。 

いずれにせよ、このようなトンボの仲間が、何時までも身の回りで生息し、常に見ることが出来る環境作りが必要です。川口市内には350か所以上の公園があると聞いていますが、水辺のある公園は?川口自然公園と湧水公園だけです。市内の多くの公園に水辺空間を創出すると生物だけでなく、子供達の遊び場も出来ますが川口市の都市公園の考え方は旧態依然としています。川口市の環境部には緑や水辺を創出する、あるいは保全する部門がないのが一番の原因です。市の環境部は一昔前の公害対策を主とした行政であり、地球気候変動に伴う対策や生物多様性などに対する進展が期待できないのが残念です。これだけ温暖化が言われている中で、川口市は今年になって朝日環境センター内に高温化対策室を設置しましたが、内容的には旧態依然としており全く新しいものがありませんので、今後も殆ど期待できない状況であるのは残念です。

しかしながら、8月の暑さは植物にとってもかなり影響があると思われたのですが、雨が降らなくても植物の生育は思いのほか強いものでした。もともとは水田であったこと、地下水位が低いことが幸いしているのでしょう。タコノアシやオモダカの成長も目をみはるばかりです。池の周りにはエノコログサ、センダングサ、タウコギ、ジュズダマ、イグサの仲間、以前から数株生育していたミソハギも湧き水の流れに沿って増殖中です。流石に自然は強いもので、ほおっておけばよい湿地になることでしょう。一応、公園ですので適当なところで草刈り作業をしなければなりませんが。

池の中ではウシガエル(食用ガエル)の大きなオタマジャクシが、いつの間にか増殖していました。

ノシメトンボ リスアカネ マイコアカネ
ショウジョウトンボ ナツアカネ アキアカネ