No.76 2010年10月  

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鳩ヶ谷で見られる野鳥シリーズ (89)

オオタカ(タカ科) Accipiter gentilis

江戸時代には鷹狩りのタカとして、ハヤブサと共に利用されてきました。カラスくらいの大きさで雄よりも雌の方が一回りくらい大きい。成鳥は頭部から上面が暗青色で白い眉斑があります。幼鳥は上面が茶褐色で下面は白く茶色の縦斑があります。

数十年前までは山地で繁殖していることが多かったのですが、近年になり身近な斜面林や雑木林などでも繁殖するようになりました。市内ではオオタカが繁殖できるような環境が無くなりましたので、繁殖例はありませんが近隣地域から採餌のために上空を通過することがあります。鳩ヶ谷周辺でのオオタカの獲物は、ドバト、カラス類、キジバト、ムクドリ、コサギ、ゴイサギ、アマサギなど、他の地域で観察した例ではアオサギやニワトリ、コガモ、オオバンなどの野鳥や、コイなどの魚類も捕食していました。平野部の生態系の頂点にいるということがよく解ります。

 

自然の記録:

10月 1日 クズの葉の上に非常に小さな黒い粒のようなものがついているのが見えました。とても昆虫のようには思えなかったが、クズノチビタマムシというタマムシの仲間でした。沢山いるところではクズの葉がボロボロになるほど食害されています。

同じ場所に、体の側縁が細く白色に縁どられ、全体に黒色の体で背中に小さな3つの白色紋がある小さなミツボシツチカメムシもいました。

イチジクの葉にはウリハムシが止まっていました。

10月 2日 今朝は隣家のクリの頂で鳴くモズの高鳴きを聞きました。この声を聞くと秋が来たと言う感じがします。

10月 3日 鳩ヶ谷小学校の斜面林、ラクダ坂脇の空き地など、市内数カ所でヒガンバナが開花し始めました。小学校の校庭では銀杏が鈴なりとなり、キンモクセイの大木が花を付けており上から見ると黄金色に見えます。

10月 4日 スズメガの仲間のホシホウジャクを民家の花壇で見かけます。

10月 5日 桜町6丁目および本町2丁目内の空き地を見て回ったところ、チカラシバ、アキノエノコログサ、ジュズダマ、オヒシバ、メヒシバ、ミズヒキ、ハキダメギク、オギ、イヌホオズキ、アメリカイヌホオズキ、イノコズチ、ケイヌビエ等が咲いていました。そして、何処でもオンブバッタがいました。また、所々でヨウシュチョウセンアサガオの白い花やハギの花が咲いていました。今の時期、市内で秋の七草を探しても見つかるのは民家の庭に植栽されているハギ、稀にオミナエシ程度です。幸いにして春の七草はスズナ、スズシロ以外の野草はまだ健在でです。 

クズノチビタマムシ ミツボシツチカメムシ

10月 7日 桜町6丁目の公園前でスジクワガタの雌が歩いていました。大型のクワガタムシの仲間を見ることはありませんが、スジクワガタやコクワガタのような小型のクワガタムシはまだ生息しているようです。

家の庭ではルリタテハやナミアゲハが飛び回り、アキアカネが数頭、柿の木の頂きに止まっていました。

10月10日 午前中で雨が上がったので庭へ出てみると、ボタンクサギに3頭のクロメンガタスズメの幼虫がいました。まだ、5cmほどの大きさですが葉を食べるのは旺盛なようで大きな糞が沢山落ちています。また、カネタタキが茎に留まって長い髭を動かしていました。

ネズミモチにはシマケンモンという蛾の緑色の幼虫、柑橘類にはナミアゲハの幼虫がいました。門扉にはナミアゲハの蛹がありましたが、ここで羽化できるのか心配です。

10月12日 庭のイヌ走りの上で30cmほどの長さのシマヘビが死んでいました。どうやら猫にやられたようです。今年は2度目の被害です。毎年どこからともなくヘビが現れますが、何とか生き残っているようです。

雨が上がるとダイミョウセセリとヒカゲチョウが飛来し、オカメコオロギやゴミムシの仲間などが動き出しました。

16時50分頃に川口市赤井方面より、三ツ和幼稚園の敷地林に向かってオナガ68羽が飛んで行き、5分ほど林内を飛び交った後で三ツ和公園方面に飛び去りました。今まで見た群れの大きさは、最大20羽ほどでしたので68羽の群れを観察できたのは感激でした。

10月13日 久し振りに旧芝川を歩いてきましたが、カモ類はまだコガモが10羽のみでした。他にはカルガモ、イソシギ、カワセミ、キジバト、オナガ、ハクセキレイ、スズメ、ハシボソガラス、カワウ、新芝川の護岸の柳に留まるアオサギ、コサギ、ゴイサギなど。

昆虫類ではナミアゲハ、ツマグロヒョウモン、キタテハ、ヒメアカタテハ、モンキチョウ、モンシロチョウ、ヤマトシジミ、ベニシジミ、ウラナミシジミ、イチモンジセセリ、アキアカネ、アオモンイトトンボ等が目につきました。中でも約50mに亘って護岸に垂れ下がっているハギの花に集まるウラナミシジミは30個体ほどが飛び回ったり、花に留まったり見応えがありました。

庭のネズミモチの木にエダシャクの仲間の幼虫が体を伸ばして擬態をしていました。

ハギで吸蜜するウラナミシジミ ハゼ

魚類ではコイ、モツゴ、ハゼ、カダヤシ等が多く、釣り人の多くはハゼとモツゴを釣っていました。ウシガエルの大きなオアタマジャクシも四つ足が生えて歩き回っていました。

植物はイネ科やカヤツリグサ科のものが多く、メヒシバ、オヒシバ、フトイ、タマガヤツリ、アキノエノコログサ、セイバンモロコシ、ヨシなどの他ツユクサ、イボクサ、コセンダングサ、アメリカセンダングサ、シロノセンダングサ、クコ、ミゾソバ、イヌタデ、オオケタデ等がありました。

アオオモンイトトンボ ♂

10月15日 地蔵院本堂裏の林ではハエドクソウとミズヒキの小群落がありました。ハエドクソウは市内では消失したものと思っていました。境内のある市の天然記念物であるタブノキは幹周り6mを越えています。恐らく県下でも1、2を誇る大木でしょう。県の天然記念物に指定されても良いくらいの価値かあるものと思われます。境内に落ちていた熟し柿にルリタテハが飛来していました。

我が家の庭の熟し柿にもルリタテハが飛来し、キチョウやウラナミシジミを飛んでいました。

10月16日 桜町小学校近くにお住まいのE氏より、庭に作ったビオトープガーデンでトカゲを観察したとの情報を得ました。カナヘビよりも見る機会が多いとか。市内へ広がってくれるとよいのですが。

10月18日 ボタンクサギにいたクロメンガタスズメ10匹の幼虫のうち、1匹が長さ12cmを越えブロック塀から地上と伝わり歩き、落ち葉溜めへ移動しました。蛹になる準備でしょう。

10月19日 ネズミモチに緑色の大きなイモムシがいました。ウチスズメの幼虫で10cmほどの大きさになっており、人が近づくと前身を半分ほど折り曲げて枝葉のように擬態をしています。別の木にいたシマケンモンの幼虫はいつの間にかいなくなっていましたが、まだ蛹になるには早いので、鳥に捕食されたのかもしれません。というわけで我が家の庭は大きなイモムシだらけですが、成長が早いので毎日の変化を楽しんでいます。

10月24日 夕方、家の犬走りの上をスジモンヒトリの幼虫が歩いていました。寒さが増してきたためか動きが緩慢で動いているのかいないのか解らないくらいのスピードでした。

カラスウリの葉には体中がごつごつした感じのウリキンウワバの幼虫と繭がありました。夜になって部屋の中にカネタタキが入ってきました。冷えてきたので動きも緩慢でした。

柿の汁を吸うルリタテハ ウリキンウワバの幼虫と繭

10月25日 1年以上見ていなかったのですが東縁見沼代用水と江川の合流点付近でカワセミのペアを観察しました。市内で観察される場所は旧芝川とここだけですが、他の場所でも生息できるような水辺環境の創成が待たれます。

10月29日 今冬、初めてのジョウビタキを確認しました。隣家の柿と梅の木に小鳥が群れていたので見ていると、1羽だけ尾を振っている小鳥がシルエットで見え隠れしていましたが、しばらくして目立つ枝に止まってくれたので、紋付きの白色がはっきりわかりました。

過去10年間のジョウビタキの初認記録を見ると11月1日〜12日の間でしたが、今年は若干早めでした。最も、既に来ていたのかも知れませんが気がつくのが遅かったのかも知れません。

10月31日 降り続く雨の中でクロメンガタスズメの幼虫はボタンクサギの大きな葉裏でしっかりと雨宿りしながら、頻りに葉を食べています。現在まだ6匹の幼虫がいますが夏の頃に比べて成長が遅いようです。来週中には土の中に移動して蛹になるかも知れません。

熟している柿の実をハシブトガラス、オナガ、ヒヨドリ等が食べに来ていますが、ハシブトガラスは丸ごと持ち去ったりするのでヒヨドリはピラカンサを食べ散らかしています。

 

鳩ヶ谷から消えた生物・消えつつある生物 40

オトコエシ(オミナエシ科)

女郎オミナエシ(女郎花)の黄色い花に対して白い花を咲かせるのでオトコエシ(男朗花)の名があります。花は小さな5弁花が沢山つき、茎の高さは50cm〜1m程度です。7月頃から10月頃までの間、明るい林や林縁部によく見られます。鳩ヶ谷市内でも法性寺山や権現山、等の里山があった頃には少なからず見ることが出来ましたが、今は絶滅してしまいました。何となく大和の花という感じのする花でした。

 

地球温暖化を考える(32)

綾瀬の森(川口市)

 川口市の戸塚地区を流れる綾瀬川は大阪の大和川と並んで1、2を争うほどのBOD(生物化学的酸素要求量)濃度が高く、平成21年度には全国一級河川中ワースト1になりました。しかし、清流ルネッサンス事業や周辺住民の努力もあり、モクズガニ、テナガエビ、ジュズカケハゼ、マハゼ、タイリクバラタナゴ、ウグイ等の各種の生物が生息しています。

一方、戸塚環境センターや綾瀬小学校に隣接した綾瀬の森は、16年ほど前までは見事な河畔林がありましたが河川改修工事のために伐採されて数本の樹木が残りました。河川改修工事終了後の河川敷に林を再生するための敷地が残されましたが、現在は綾瀬川の自然を守る会のメンバーなどの努力によって河畔林が回復し、各種の生物が生息するようになりました。定期的に観察会が行われていますが昆虫類の増加は著しく、野鳥の休息場所にもなっています。

戸塚南小学校のエコクラブなどは、自然観察会と木登り、カヌーなど、アウトドアーの活動の場所として活用しており年々活動が活発になっています。

自然があることによって、生物が増加すると共に子供達の野外活動の場が出来ることはよいことで、更に良好な環境になることが望まれます。

綾瀬の森のシンボル・ツリー シンボル・ツリーの下で野外活動
河川敷への植樹 河畔林の育成
シンボル・ツリーより下流の風景 シンボル・ツリーより上流の風景