No.133 2015年7月

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鳩ヶ谷周辺で見られる野鳥シリーズ (146) 

ヨシゴイ(サギ科) Ixobryichus sinensis

ヨシゴイ(葭五位)はヨシ原を生活の場としている小型のサギの仲間です。夏鳥として5月上旬ころに渡来して、湿地のアシ原で繁殖しますが、暖かい地方では越冬記録もあるようです。上面は褐色、下面は淡黄色の羽毛で覆われています。小雨覆や中雨覆、大雨覆の色彩は淡褐色、初列雨覆や風切羽の色彩は黒く、虹彩は黄色。嘴はオレンジがかった黄色といった感じです。♂は額から頭頂にかけて青みがかった黒い羽毛で覆われます。また頸部から胸部にかけて不鮮明な淡褐色の縦縞が1本あります。♀は額から頭頂にかけて赤褐色の羽毛で覆われ、額に暗色の縦縞が入る個体もいます。また、頸部から胸部にかけて不鮮明な褐色の縦縞が5本あります。幼鳥は下面が白い羽毛で覆われ、全身に褐色の縦縞が入ります。警戒すると頸を伸ばした姿勢で立ち止まり、周囲のヨシの茎と紛れ込むほどに擬態をします。鳴き声は「ウー、ウー」とうめくような声で鳴きます。初めて聞いた時は何の声かなと不思議に思っていましたが姿が見えるまで待って確認した時は、ああ、ヨシゴイかと納得しました。

近年、ヨシ原が減少しており、ヨシゴイの生活息が狭められています。ヨシゴイの生息環境は、ヨシ原と共に水田があることが必要です。ヨシ原に巣をつくり、水田地帯で餌となる生物を十分に確保できるかどうかが重要です。川口市内、特に安行地域ではヨシゴイに適した環境が沢山ありましたが、現在は宅地化されてしまいました。ちなみに、ヨシゴイは埼玉県では絶滅危惧種第U類に入っています。名前の由来は、アシ原に棲むゴイサギとのこと。

海の風葭五位葭と吹かれいる  東田 綾子

 

自然の記録:

 7月 5日 7月に入り、連続5日間雨に降りこめられて野外活動できず。庭のボタンクサギが咲き誇り、ミズヒキソウが開花しました。雨の影響かイチジクは大きくなって食べられるかなと思っていた矢先に腐って落ちてしまいました。プランターのトマトも、中玉は青いままです。ボタンクサギはヒマラヤクサギあるいは匂いがあるところから匂いクサギなる別名もあるとか。枝先や上部の葉の脇から集散花序(最初の花が枝先につき、その下に次々と側枝を出して花がつく)を出し、淡い紅紫色の花をたくさんつけます。花冠は5つに裂け、裂片は横に開き、 雄しべ4本と雌しべ1本が花の外に突き出ています。枝葉に強い臭気があるが、切ったり揉んだりしなければ大丈夫。 葉は幅の広い卵形で、向かい合って生えています。葉の縁には不揃いなぎざぎざ(鋸歯)があり、花の後にできる実は核果(水分を多く含み中に種が1つある)と呼ばれています。カラスウリの花も開花し、アキアカネが早くも飛来しました。

 7月 9日 1日から連続9日間の降雨が続いている。少し足慣らしをと思い雨の中街中を散策しました。路傍の植物はよく生育しており、エノコログサ、ハキダメギク、ツユクサ、スベリヒユ、コニシキソウ、アレチマツヨイグサ等が開花し、アメリカセンダングサやホウキギクなどが丈を伸ばしていました。雨の中でも昆虫が活動しておりキチョウが飛び、コガネムシの仲間のドウガネブイブイが頻りに葉を食べていました。

ボタンクサギ アキアカネ カラスウリ

 7月10日 ようやく晴れ間が見えたと思ったら、真夏日となり暑い一日でした。9日日間も降り続いた影響で、台所のドアが粉をふいたように白くなっていました。よく見ると色々なカビのコロニーが発育して粉をふいているように見えたのです。アルコール綿でふき取りましたが、家じゅうがカビ臭を感じていたので、“やっぱり“という感じでした。庭では、ホオズキカメムシ、クサギカメムシ、ホソハリカメムシの3種類が活動していました。特にホオズキカメムシはホオズキとトマト、イチジクに群れていました。

 7月11日 35℃を超える暑い日となりました。庭で栽培しているジャガイモ掘りを行いました。土の中からシマミミズが沢山出てきました。10p以上のミミズが続々と出てくるので、手で捕まえてはよけながらジャガイモを掘り出しましたが、体を半分に切られたりしたミミズが暴れまわっていました。シマミミズのほかにはハサミムシやコガネムシの幼虫、等が出てきました。肝心のジャガイモは6月が15日間、7月も9日間降雨が続いたためか小ぶりで出来が良くありませんでした。

 7月12日 買い物の途中で安行にある前野宿川遊水地へ寄ってみました。まだ、工事中の囲いはありますが、カルガモ8羽、アオサギ、カワセミのホバリング(空中での停止飛行)&ダイビングを見ることができました。台所の壁ではチャドクガが交接して長時間止まっていました。アカボシゴマダラ、ツマグロヒョウモン、コミスジ、キタテハ、アオスジアゲハなどが久しぶりに飛来しました。

 7月13日 近所の月下美人が5本で20個以上の花をつけましたが、我が家では1つも花がつきません。家の両側に2階建ての家が建ったために日照不足なのか、10年以上に亘って咲いていたので、そろそろ枯れるのかな、なんて勝手に想像しています。柑橘類には毎日アゲハチョウが飛来して産卵していますが、幼虫になるといつの間にか姿を消してしまいます。

夕方になって、カキの実が腐って落ちてきたと思ったらコクワガタの雄も一緒にいました。

 7月17日 台風11号が接近し雨がかなり降ってきましたが、少しの晴れ間に庭のカキの木にアブラゼミ、プランターで育てているトマトにノシメトンボ、ショウリョウバッタ、ツマグロヒョウモンの等が飛来し、門柱には大きなヤモリがいました。

この時期は、「鷹之学を習う(たかわざをならう)」という時期でもあり、オオタカが各地で巣だったとの情報が入ってきます。巣立ちしたオオタカは親から獲物を捕獲するための訓練を受けますが、ちょうどこの時期から1か月ほどが訓練の時期になるようです。一人前に餌が獲れるようになるまでは失敗の連続ですが。

 7月18日 台風が過ぎた途端に朝から庭のカキの木でミンミンゼミが鳴きだしました。鳩ヶ谷本町2丁目の林ではニイニイゼミも鳴いていました。昨日と今日で3種類のセミが一斉に鳴きだしたようですが、日中は風が強かったためかセミは鳴きやみました。豊田の森ではヤブミョウガの花が開花して、クロアゲハが飛び回っていました。雨のため20日間近く竹林に入れませんでしたが、周辺では1m近くに伸びたクサギとカラムシが繁茂していました。湧水公園ではコシアキトンボ、オオシオカラトンボ、ウスバキトンボなどが飛んでいました。

 7月22日 久しぶりに安行の花と緑の振興センターへ出かけましたが、今日も真夏日で花や葉がしおれたようになっていましたが、色々な種類のムクゲが満開でした。アオスジアゲハ、アゲハチョウ、ナガサキアゲハ、クロアゲハ、ツマグロヒョウモン、アカボシゴマダラ、コミスジ、ヤマトシジミ、ムラサキシジミ、オオシマカラスヨトウ、シモフリスズメ、モモノゴマダラメイガ、ヤマブドウの葉にコトラガの幼虫、等の蝶や蛾の仲間、オニヤンマ、オオシオカラトンボ、コシアキトンボ、ナツアカネ、ノシメトンボ等のトンボの仲間、シオヤアブ、クロバネツリアブ、スズバチ等のハチやアブの仲間、アオバハゴロモ、アミガサハゴロモ、ベッコウハゴロモ、ニイニイゼミ、アブラゼミ、ミンミンゼミ、エサキモンツノカメムシ(背中に白いハートマークがあるカメムシ)等が目立ちました。

オオミズアオの幼虫 シモフリスズメ コトラガの幼虫
オオシオカラトンボ(♀) (♂) シオヤアブ

 7月23日 千葉県野田市(コウノトリの里)で飼育中のコウノトリが放鳥とのニュースがありました。2012年に多摩動物園からペアを譲渡されて、今年3月に人工繁殖で生まれた雄1羽と雌2羽で全地球測位システムを装着したものです。これから、各地で観察されるようになると思いますが、多くのカメラマンに追われなければよいなと思っています。

 7月24日 庭の水たまりに小さなゾウムシの仲間が落ちていました。手にとってみると顔や鼻の周りが白く、背中に白い斑紋があるカオジロヒゲナガゾウムシでした。クズの葉にはホシハラビロカメムシが止まっていました。庭のあちこちでオンブバッタが孵化したようで、5mm〜1p程度のオンブバッタが見られました。

 7月25日 はとがやに里山をつくる会が、毎年受け入れている湧水公園環境整備・青少年ボランティアスクール(3回目)を行いました。参加者は中学生10名(女子2名、男子8名)で、女子1名は昨年も来てくれたリピーターでした。湧水公園で簡単な説明をしてから、豊田の森へ移動、孟宗竹8本を全員で切り出し、細断しました。ノコギリを使用したことがない子供たちが大半でしたが、終わる頃には使いこなしていました。竹林では羽化途中のアブラゼミやハグロトンボがいました。また、湧水公園では50羽以上のムクドリが水浴びしたり、カワラヒワ、ツバメ、スズメ等も来ていました。 

池面を飛ぶツバメ 羽化途中のアブラゼミ
ボランティアの中学生 初めての竹の間伐作業をするボランティア

 7月26日 町内会の納涼大会のお手伝いで、ジュース類の担当をしていたところカナブン、サクラコガネ、ショウリョウバッタなどが明かりを求めて飛んできました。本当はもっといろいろな昆虫類が来ることを期待していたのですが。

 7月27日 2日間暑い中で活動していたので今日は家でゆっくり、さすがにこの暑さは体に堪えますね。イチジクの木にようやくキボシカミキリが出てきました。木の幹は各所にカミキリムシの幼虫の食痕が残っていますが、成虫はまだ見ていませんでしたので今季初記録です。

プランターのトマトには10pほどの体長に成長したショウリョウバッタの成虫はいました。カキの木にも7pほどの成長したものがいました。門柱にアゲハチョウの幼虫が止まっていました。蛹化するようです。

 

地球温暖化を考える(86)

 

有間山周辺の環境変化

埼玉県の飯能市と秩父市および東京都との境にある有馬山はブナ林のある良い環境で有間山への途中から南側を望むと名栗湖(名栗ダム)、北側には浦山ダムが望めます。

登山道はスズタケが密集しており、歩くのにも苦労するほどでしたが、近年になりスズタケが枯死して明るい林道となり歩きやすくなりました。

写真のように登山道がシカの通り道となり、道に沿って生えている植物が食害にあうことがわかります。いったん食害にあって上の方が食べられたスズタケは新芽や新葉の位置が下がり、さらに食べられやすくなる。その結果、スズタケのやぶは、まるで機械で刈り込まれたかのように削られていきます。近年、温暖化の影響で、冬の積雪期に昔ほど降雪が無く、シカの自然死が減少し、繁殖率が高まった事が大きな原因となっています。スズタケが消失した後はイネ科草本やシカの食草に適さない低い草地になるために見通しは良くなり、ハイカーにとっては歩きやすくなりますが、藪地で繁殖する野鳥や昆虫類にとって大きな環境の変化は繁殖や生活環境が変わり、生息できなくなることを意味します。このような山の中でも温暖化の影響が少しずつ出てきていることがわかります。

ここでは、ニホンジカ、ツキノワグマ、カモシカ等の足跡のほか、名栗ダム周辺ではニホンザルにも出会いました。明るくなった林の中からコマドリ、コルリ、ホトトギス、ウグイス、ヒガラなどの野鳥のさえずりが聞こえてきました。

シカが食べた後で明るくなった山道と林
ダビドサナエ ヒオドシチョウ
ギンリョウソウ 斜面に残るツキノワグマの足跡