No.63 2009年 9月

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鳩ヶ谷で見られる野鳥シリーズ (76)

バン(クイナ科) Gallinula chloropus

人の手からもらったパンを銜えるバン

  昔の図鑑を見ると東南アジアなどから渡ってくる夏鳥として記載されていますが、関東ではほぼ留鳥化して、年に数回繁殖をしています。一番子の若鳥が、二番子の真っ黒な雛を引き連れて餌を与えている光景をしばしば見ることがあります。バンは水辺の湿地を歩くために足指が長く、蓮の葉の上を上手に歩くことができます。雌雄同色で識別は困難ですが、雄の方が若干大きいようです。お尻の両側が白く、動くたびにお尻をヒョコヒョコさせるので目につきます。

以前は、鳩ヶ谷市内でも休耕田や水田などでもよく見かけましたが、現在はバンが生息できる環境が無くなり、唯一見ることができる場所は新芝川と旧芝川です。狩猟鳥にもなっています。

 

自然の記録:

 9月 1日 庭の堆肥の中から10cmほどのカラスヘビが出てきました。恐らく庭の何処かで孵化したのでしょう。先週から今週にかけてカナヘビ・ヤモリなどの子供達も走り回っています。

 9月2日  急に涼しくなりましたが、ナガサキアゲハの雌が元気で庭を飛び回っていました。

 9月 3日 ネズミモチの苗(恐らくヒヨドリの糞と共に運ばれて発芽したと思われる)に10cm前後の大きさのシモフリスズメ(蛾)のイモムシが2匹、サクラの枝には5cm前後のモンクロエダシャクの毛虫が沢山いて、上の方の葉が丸坊主になっていました。

18時近くになってコミスジチョウが飛び、珍しくカトリヤンマが空中でカをとっていましたが、その周囲を7頭のイエコウモリが飛び回っていました。それぞれに、昼間と夜の主役が入れ替わって活動しています。

  9月 5日 廃瓶入れの容器内に10cmほどのカラスヘビの遺骸がありました。今朝瓶を回収籠に入れた時は気がつきませんでしたが、オカダンゴムシ数匹が集まって食べていました。

隣家のマント状になったクズに紫色の綺麗な花が沢山開花しました。

 9月 6日 見沼代用水にかかる浅間橋付近でカラスアゲハの雄が飛んでいました。今年初めての確認です。まだいてくれたかという思いで見ていました。

見沼代用水沿いの自然歩道では、ミンミンゼミの声が無く、アブラゼミも僅かとなり、ツクツクボウシのみが賑やかに鳴いていました。夕方には虫の声が繁く、特にアオマツムシの声が大きく聞こえるようになりました。鳴く虫の声も温度を敏感に捉えているなと感じています。

 9月 8日 9月に入ってから庭へ来る蝶の種類が多くなりました。今日のお客様はイチモンジセセリ(3)、ヤマトシジミ、ルリシジミ、キチョウ、ヒメウラナミジャノメ(2)、ナミアゲハ、アオスジアゲハ、クロアゲハ、コミスジチョウの9種類でした。

 9月11日 8時頃に氷川神社付近の民家の庭でナガサキアゲハの雄が飛んでいました。鳩ヶ谷小学校の花壇に咲いているキバナコスモスなどの花にクマバチやアオスジアゲハなどが飛来し、子供達が興味深げに観察していました。

9月13日 ヨツボシハムシがクワクサの葉に止まっていました。クワクサは小さな白っぽい花を咲かせています。

網を揺するナガコガネグモ ツクツクボウシの顔

 9月14日 鳩ヶ谷小学校の花壇ではキバナコスモスとダリアが満開となり、ツマグロヒョウモン4頭、イチモンジセセリ10頭、ヤマトシジミ5頭、ホシホウジャクなどが飛来し、花壇が賑やかでした。花壇の下生えにコニシキソウが繁茂していました。

 9月15日 本町2丁目10付近の道路上をツマグロヒョウモンの幼虫が歩いていました。何故この様なところにと思ってみていると、民家の塀際にタチツボスミレが一塊ありましたので、そこへ向かって歩いていたようです。

 9月16日 本町2丁目のラクダ坂付近の路上で、オオカマキリが轢死していました。家の網戸にはコカマキリが張り付いていました。ツゲの木ではモンクロエダシャクの幼虫(毛虫)が毎日大量の糞を落としています。

鳩ヶ谷小学校の斜面林では、ヒガンバナとミズヒキが盛りです。

 9月21日 午後6時頃、隣家の庭から今年初めてのヒグラシの声が聞こえてきました。何か季節外れの感じがありますが、今年も鳴いてくれたなと嬉しくなりました。

 9月23日 ハラナガツチバチ数匹が庭を飛び回っています。ヒカゲチョウとヒメウラナミジャノメが柿の木の回りに居着いています。

 9月24日 本町4丁目付近の江川でナガサキアゲハの雌が飛んでいました。庭ではキタテハが飛来し、秋分の日が過ぎたというのにアブラゼミが健在でした。夕方にはアオマツムシも元気に鳴いていました。庭中にチジミザサが蔓延って、歩くたびにネバネバの種子が張り付いてきます。

秋分の日過ぎのアブラゼミ ノシメトンボ

 9月28日 バスの車窓に案山子の風景、辻バス停前の水田では案山子が立っていますが、昔懐かしいスタイルと異なりカラフルな案山子さんです。恐らく小学生が創ったものでしょう。まるで案山子の品評会のようですが、効果の程は別として楽しい風景です。

      まだ、桜町6丁目付近ではツクツクボウシが鳴いています。

 9月29日 江川の縁で今日もナガサキアゲハを観察、川の中ではカルガモやハクセキレイが忙しそうに採餌の真っ最中でした。家の庭ではダイコンの葉にオンブバッタ4番、コカマキリ、ヒメウラナミジャノメ、ヤマトシジミ、アオドウガネなどの昆虫が元気です。

鳩ヶ谷の田圃に案山子が登場

 9月30日 小雨降る中、庭の水溜を確認したところヒメキマワリが落ちて泳いでいました。キマワリは時々見かけますが、小型のヒメキマワリは初めて確認しました。

 

鳩ヶ谷から消えた生物・消えつつある生物 27

 ビロードハマキ(天鵝絨葉巻蛾)

交接中のビロードハマキ(撮影:川口市安行)

ハマキガの1種で、大変美しい模様を持っている蛾。一寸見た感じは七宝焼きのブローチのような感じであるが、どのようにしたらこのような色彩が出るのか?何時も自然の造形の妙に感心している次第である。自然環境が著しく減少している市内で見かけることはないが、昨年見た時には2度とも交接中であった。2003年から都内での発生量が増加しているといわれている。

 

地球温暖化を考える(19)

 8月9日の集中豪雨では、1時間に87ミリの雨量が計測されたそうですが、それによって桜町3丁目や坂下町4丁目を中心に床上浸水34棟、床下浸水292棟の被害があったとのことで、大雨が降るたびに市内でもかなりの影響が出ています。

 治水今昔

見沼溜井と伊奈流洪水対策

 伊奈藩の領地であった見沼田圃では自然堤防を利用するとともに、ところどころに低い堤防を作り、その付近に遊水池を設け大規模な増水時には水を溢れさせ遊水池に導いて水の勢いを弱めてしまう。 

平常時には溜井となり用水源として利用できる。この様な工法で水害対策を実施したのが、現在のさいたま市と川口市境にある八丁堤である。

現在のような、大型重機の無い時代に人海戦術をもって造られたというが、苦労して造った溜井も、時代と共に埋め立てられ、水田〜休耕田になりました。その当時は、自然豊かな場所であったことでしょう。

見沼代用水の建設は、農業用水の取水、水不足の解消だけが目的でなく、見沼溜井を含む中川低地に数多く存在した湖沼や溜井の干拓、治水、見沼通船堀を建設し、見沼代用水の沿岸地域と江戸を結んだ水上輸送を確立までも含んだもので総合的な土木事業だった。これらの工事は見沼代用水の開削とほぼ並行しておこなわれたようです。

赤山城址の掲示板より抜粋

現在の見沼田圃は水田の役割を持っている場所は少なく、殆どが畑地や植木畑となっています。そして下流域における200年に一度の大洪水対策として、上流の各所に調節池が造成されています。

 現在工事が進行している芝川第一調節池も、その一つで概ね30年近い年月と莫大な費用を使っての工事となっています。全ての工事が終了するまでには、かなりの年数と費用がかかることでしょう。

 工事が進むにつれて、野生動物の目撃例も増加し、キツネ、タヌキ、ハクビシン、アライグマ、イタチなどが生息、観察された野鳥も200種類を越えています。

 1965年当時は、水田と一部の休耕田が広がる地域でしたが、45年経過した現在は広大な湿地として変化しつつあります。

2007年8月10日現在 2004年4月21日