No.62 2009年 8月

Loading

 鳩ヶ谷で見られる野鳥シリーズ (75)

ハシブトガラス Corvus macrorhynchos

ハシブトガラスはハシボソガラスと共に街のゴミあさりの常習犯となっています。また、両種とも狩猟鳥に指定されています(この他に、ミヤマガラスが狩猟鳥になっています)。

ハシブトガラスとハシボソガラスの大きな違いは、体の大きさ、嘴の形、尾の長さと形です。頭から嘴にかけてはヘルメットを被ったようなと形と形容されるように、額から嘴にかけての角度が強いのが特徴です。飛んでいる時にはハシブトガラスの尾は“しゃもじ型”ですが、ハシボソガラスの方は平らな感じです。両種とも雑食ですが、地方では棲み分けをしています。どちらかというとハシブトガラスは山と海岸に、ハシボソガラスは平野部の水田や畑にと言うのが昔の生態的な棲み分けでしたが、現在の都会では両種ともに生態系の頂点にいます。とは言っても、近年になってオオタカが都市近郊で繁殖を始めたために、カラスもオオタカの餌食になることが多いようです。

鳩ヶ谷市の周辺ではグリーンセンターと近くの林内に塒があり、約3000羽の群れが形成されています。塒の林はもちろん、塒に集まる前に道路上の電線に止まり大量の糞を放出するために道路が白くなっています。餌はゴミだけでなく、他の野鳥の雛や生きているコガモを襲ったりする一方、交通事故で轢死した各種の動物の遺骸を食べて掃除をしてくれる衛生管理者の役目も担っています。悪者カラスも時には良いこともやっているのです。害鳥か益鳥かは人間の考え方次第です。きっとカラスにも言い分があるのではないでしょうか。

 

自然の記録:

 8月 5日 シロテンハナムグリが飛来、コフキコガネが玄関前で干からびていました。ミンミンゼミ(初鳴き)、アブラゼミが鳴いているものの個体数が少ないのが気になります。

西友付近の東縁見沼代用水から浅間橋の見沼歩道では、アブラゼミとミンミンゼミを中心にニイニイゼミ、ツクツクボウシ(初鳴き)の混声合唱団で大にぎわいです。家族でセミ採りをしている姿も見られました。

 8月 7日 コンフォール東鳩ヶ谷の敷地内の各所でセミが這いだした後の穴が多数ありました。年々増加しているようです。アブラゼミとミンミンゼミが多いようです。崖下のキクイモの花にはヒメアカタテハが飛来し、頻りに吸蜜していました。

今日は、(戸塚南小エコクラブの自然観察会に出かけましたが、綾瀬川では10cmほどのテナガエビやモクズガニ、ミシシッピーアカミミガメ、などがいました。エノキにはコムラサキが3〜5頭飛来していましたが、久し振りに見たという感じがしました。いるところにはいるものです。)

 8月 8日 江川と見沼代用水の合流点付近でカルガモ8羽、ダイサギ、毛長川調節池付近の毛長川でカルガモ9羽、カワウを観察しました。この付近で見られたカワセミは最近姿を見せません。

 8月10日 9日の15時頃より降り始めた台風9号による雨は明け方一端止みましたが、午前中いっぱい強く降ったり止んだりでした。新芝川の流れも水かさを増し、流の幅も広くなりました。近所の住宅地では道路が冠水したところが数カ所あり、旧122号線は赤羽方面の車の渋滞が昼過ぎまで続きました。これも、水田を埋め立て、用水を暗渠かした事による弊害です。川口市から鳩ヶ谷市にかけての毛長川沿い、辰井堀沿いの赤井、東本郷、峰等では床下浸水や床上浸水、鳩ヶ谷市域でも床下浸水がかなりあったようです。鳩ヶ谷市域では翌日に石灰を散布しましたが、雨が止んだ後は、待ってましたとばかりにセミの声や各種の昆虫が飛び回っています。

 8月11日 庭の草むらにオンブバッタがでてきました。夜になってリーリーリーと早くも秋の虫が鳴き出しました。

 8月12日 ラクダ坂近くの空き地にはヨシやタケニグサが繁茂し、アレチウリ、ヤブガラシ、カラスウリ、等がマント状に覆っていますが、その上ではベニガラトンボ(ウスバキトンボ)の30頭ほどの群れが飛んでいました。近くの空き地ではエノコログサやオヒシバなどが繁茂していました。

庭のブロック塀にキマダラヒカゲが止まっていました。今年22種目の蝶の飛来となりました。

ゴマダラカミキリ ミンミンゼミ 轢死したカブトムシの雌

 8月13日 本町3丁目の江川付近の道路上をゴマダラカミキリが歩いていました。ゴマダラカミキリは以前には市内でもよく見かけたものですが、イチジクの木が少なくなったためか、あまり見かけなくなりました。アブラゼミやミンミンゼミが盛りです。また、見沼代用水や江川ではハグロトンボが散見されています。御獄神社付近の道路上にコフキコガネが落ちていました。周りを見るとドウガネブイブイやアオコガネ、等が死んでいました。

庭にはキチョウ、ヤマトシジミ、ヒメジャノメ、オオスカシバなどが飛来しました。

 8月14日 コンフォール東鳩ヶ谷のだんだん公園付近でツバメシジミを見つけました。ずいぶん久し振りのご対面ですが、公園内に外来種の斑入りクローバーを植栽したためなのか?

モンキチョウの雌雄もミソハギに飛来しました。

 8月15日 桜町4丁目と安行慈林の境界付近の道路上でカブトムシの雌が轢死していました。鳩ヶ谷市内では貴重なカブトムシですが、確認は何時も礫死体です。

庭の柑橘類にアゲハの幼虫と卵がいくつかあり、絡みついているヤマノイモの葉にウスグモスズという原産地不明の小さなコオロギの仲間がいました。また、シャガの葉に脱皮途中に死亡したミンミンゼミがありました。体半分以上が抜け出ていたのですが、何があったのか?

 8月16日 昨日、今日と雨戸の下でコクワガタの雌がいました。どうやら庭からでてきたようです。コミスジ、キマダラヒカゲ、クロアゲハが元気に庭を飛び回っています。

 8月17日 21時頃、洗面所の床上をキマワリが足早に歩いていたので、窓外へ放してやりました。

雨戸の傍でウスグモスズの雄が死んでいました。

 8月20日 ここの所毎日のようにコミスジ、ナミアゲハ、クロアゲハ、キマダラヒカゲ、キチョウなどの蝶が飛来します。また、スズメも数羽が毎日来ては庭にいる蛾や蝶の幼虫類を捉えていきます。庭を歩いていても目につくのはアゲハやクロアゲハの幼虫程度なのですが、人の目と鳥の目は違うのでしょう。来る度に必ず捉えていくのは流石はプロと言いたくなります。そのためか、今年は3種類のスミレにツマグロヒョウモンの幼虫が全く見られません。春先に終齢幼虫を見かけましたが、それもいつの間にか姿を消しました。おそらく、スズメの餌食になったものと思われます。スズメは3度目の子育て中のようですので、大目に見ています。

羽化途中で死亡したミンミンゼミ ウスグモスズ キベリクビボソハムシ

 8月22日 今日、庭に飛来した蝶はナミアゲハ、アオスジアゲハ、クロアゲハ、ゴマダラチョウ、コミスジ、キマダラヒカゲ、ヒメジャノメの7種類でした。ナミアゲハはヤブガラシの花に、ゴマダラチョウはエノキに、キマダラヒカゲは腐って落ちたカキの実に、とそれぞれ好みの場所へ訪れます。夕方になり、庭の柿の木でアオマツムシが鳴きだしました。この虫が鳴き出すと夜半が涼しくなったような感じがして、そろそろ秋になるのかと思います。

 8月24日 台所の後ろの庭で、雌のナガサキアゲハが蜘蛛の巣にかかっていましたが、何とか逃げきりました。しかし、羽はボロボロでした。コミスジもジョロウグモの網にかかったらしく遺骸がありました。門の隅にはナガコガネグモが特徴的な蜘蛛の巣を張って、触れると微妙な感じで網を揺すっていました。カナヘビが孵化したようで小さな個体が数匹庭中を駆けめぐっています。また、カノコガが2度目の出現で、庭のあちらこちらで交接を繰り返しています。雨水のたまり水の中でウスグモスズの幼虫、ビロードコガネ、コメツキ等が死んでいました。

ナガサキアゲハ(♀) ツクツクボウシの顔

 8月25日 玄関のドアの近くにキベリクビボソハムシがいました。この種類は背中の黒い斑紋が色々で識別に迷う時があります。毎日、ツクツクボウシが鳴いており、近くに来たので顔写真を撮りました。正面から見るとトンボのような、カマキリのような顔をしていました。ネズミモチの葉にシマケンモンという緑色の毛虫がいました。昨年も1頭いましたが名前が解りませんでした。

 8月26日 13時30分、15時30分にナガサキアゲハの奇麗な雌が1頭庭を横切りました。2時間の間何処を飛んでいたのか、これから観察する機会が多くなることでしょう。

 8月27日 今日は、12時丁度にナガサキアゲハの雄が庭を通過しました。今年も、モンクロエダシャクの幼虫が10匹ほど庭を歩いていましたが、その内の数匹はアリの餌食となり巣穴に運びこまれていました。

八幡木2丁目のN氏より、ナガサキアゲハの雌が庭に来て、弱々しい感じで飛んでいたとの情報をいただきました。

 8月29日 めっきりセミの声が少なくなりましたが、蝶の方は増え始めキマダラセセリ、イチモンジセセリ、ダイミョウセセリ、ヤマトシジミ、キチョウ、コミスジ、ゴマダラチョウ、ヒメジャノ、ナミアゲハ、クロアゲハなどが飛来しています。庭中にクモの巣が張り巡らされて、歩くたびに顔や頭にかかるので、思い切ってクモの巣掃除をしたところジョロウグモが50頭以上、多くの昆虫の遺骸も見つかりました。窓の網戸に最近孵化したと思われる小さなヤモリが張り付いていました。

シマケンモン(蛾)の幼虫 モンクロエダシャクの幼虫

 8月31日 台風11号の影響で朝から断続的に強い雨が降り続いていましたが、ヒメジャノメ2頭が元気にとびまわっていました。かなり強い雨が降っているので、また被害が出なければよいが。

 

鳩ヶ谷から消えた生物・消えつつある生物 26

   カラスアゲハ

 雨降り後の砂利道で吸水するカラスアゲハ、この様な風景は30年ほど前まではよく見かけたものですが、道路が全てアスファルト舗装され、好んで訪れていたクサギの花が少なくなり、カラスアゲハも極端に減少してしまいました。ところが、最近になり鳩ヶ谷市内でもクサギの若木があちこちで目立つようになってきました。しかし、幼虫の食草であるコクサギ、カラスザンショウなどは殆ど見かけませんので、せめてサンショウにでも産卵してくれれば市内でも美しい姿が見られるようになるのではないかと期待しています。羽を広げた時の緑色の美しさが何とも言えません。

 

地球温暖化を考える(18)

同じ川でもこんなに違う

普段何となく散歩している川でも、市域によって川の環境がこんなにも違うのかと考えさせられます。

鳩ヶ谷市から川口市・草加市・東京都から綾瀬川に流れる毛長川。50年前の毛長川は東縁見沼代用水から南へ分岐した幅2m程の小川で、童謡で歌われているような「春の小川」そのものでした。メダカ、タナゴ、フナはもちろんカワセミも生息していました。そして、周辺は全て水田でした。写真Aが鳩ヶ谷と川口市の境を流れる現在の毛長川です。泥臭い水の中でカルガモ、コガモ、オナガガモ、時にはホシハジロなどが泳いでいることがあります。右側の宅地の100m程先には浅間山という小高い丘陵地があり、今では見られなくなったアマナという植物が自生していました(市内ではこの地域のみで確認)。

同じ川でもAのようなどぶ川水路とEのように周辺が緑で覆われた水路とでは、見た目の雰囲気や歩いてみたいという感覚が異なります。また、生物多様性や生物が自由に行き来できるという意味からも河川環境を整備する必要があるのではないかと思います。Aのようなどぶ川では子供達も魚採りをして楽しめる環境ではありません。そして、@やAの環境では大雨が降るたびに床下や床上浸水が起きています。

@江川 東縁見沼代用水より北側 A南側の 殺風景な毛長川
B八幡木中学校付近の水門 C八幡木中学校付近の中州
D八幡木中学校の緑地帯 E東京都と川口市の境界付近の毛長川
F草加市(左側)と東京都(右側)を流れる毛長川