No.131 2015年5月

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鳩ヶ谷周辺で見られる野鳥シリーズ (144) 

 ムナグロ(チドリ科)  Pluvialis fulva

ムナグロの英名はGolden plover 、冬羽や幼鳥は全体が黄褐色であるが夏羽になると首から胸にかけて黒くなる中型のチドリである。4月から5月にかけての田植えの頃に渡ってきて、日本を通過するが、近年は越冬する個体もいる。渡ってきた当初は堆肥の捲かれた畑や広い草地などで休息していることが多い。地面に伏せてといると意外と見つけにくく、体の色がカムフラージュになっているようだ。「キョビ,キョビ」というような声で鳴く。小笠原や沖縄では冬でも小群が見られる。

ちなみに、チドリ(千鳥)とは、数多くの鳥という意味であり、チドリが多数で群れるところから名づけられたと言われている。奈良時代から、チドリの名で知られ、万葉集にはチドリを詠った歌が220首ある。春と秋の渡りの時期に日本を通過するが全国的に減少の傾向にある。

姿形はよく似ているが、ムナグロとは別種のヨーロッパムナグロとムナグロの亜種であるアメリカムナグロが日本で記録されている。

 

自然の記録

 5月 1日 朝から赤山歴史自然公園予定地の造成地を歩いてきました。湿地ではキショウブ、オオカワジシャ、周辺ではナガミヒナゲシ、オッタチカタバミ、ハハコグサ、ハルジオンが盛り、クリムソンクローバー(ストロベリーキャンドル)というヨーロッパ原産のクローバーの仲間が一株咲いていました。アオサギ、コチドリ、タシギ、ツバメ、カワラヒワ、ムクドリ、キジバト、シジュウカラ、ウグイス、カワセミ等の野鳥や羽化したばかりのハラビロトンボの雄(川口市内では少なくなった)がいました。雄は羽化すると雌と同じように、黄色に黒い斑がある状態になりますが、尾部付属器が長いので雄とわかります。その他、ギンヤンマ、シオカラトンボ、アジアイトトンボ等のトンボ類、アゲハチョウ、クロアゲハ、ナガサキアゲハ、アオスジアゲハ、モンシロチョウ、モンキチョウ、ヒメアカタテハ、キタテハ、ベニシジミ、ヤマトシジミ、ムラサキシジミ等がいました。

ハラビロトンボ 姿勢のよいカワラヒワ クリムソンクローバー

 5月 2日 湧水公園を散策、ショウブが花をつけていました。ショウブと言ってもアヤメ科のハナショウブではなく端午の節句の菖蒲湯に使うショウブです。ショウブは葉だけを見るとハナショウブとよく似ていますがこちらはサトイモ科の植物です。ハナショウブは有毒成分があると言われており、皮膚炎を起こすこともあるようです。ショウブの花は目立たないので見過ごしてしまうこともあります。ガマの茎が1mほどに伸びてサンカクイも増殖してきました。コウホネの花も咲き始めました。池の周りではナガサキアゲハ、クロアゲハ、アオスジアゲハ、アゲハチョウ、ベニシジミ、ツマグロヒョウモン等の蝶に加え、キアゲハの雌がセリの葉裏に産卵していました。ギンヤンマも初認です。

 5月 3日 隣家のテイカカズラが咲き始め、庭ではオッタチカタバミ、カタバミが開花、見沼代用水沿いではコミスジが飛んでいました。

5月 4日 芝川で営巣中のイワツバメの観察に出かけました。古巣と合わせて7巣を確認しましたが、橋げたの中央付近は陸地からは見えないためにすべてを確認することが出来ませんでしたがイワツバメが前回同様に6羽飛び回っていたので、利用しているのは3巣かなと思っています。イワツバメの巣はツバメの巣と異なり、上の方に体が入る程度の小さな穴が開いています。

イワツバメの巣 ツバメの巣 イワツバメの営巣した橋桁

 5月 5日 庭のカタバミにヤマトシジミの雌が飛来して、しきりに産卵をしていました。小さなカタバミの葉に1mmにも満たない白色の卵がいくつもついていました。ピラカンサの葉上にはウメエダシャクの幼虫が沢山孵化して、木の下にはものすごい数の糞が落ちていました。ゲンペイコギクやカラスビシャクが開花しました。

 5月 6日 今日はさいたま市の秋ヶ瀬公園に出かけました。野鳥は少なく移動中のオオルリ、センダイクシクイ、キビタキ等で18種類でしたが、昆虫類のツマグロハナカミキリやヒメバチ科のオナガバチの仲間が色々観察できて、一つの倒木の周りで2時間以上も過ごしていました。尾の長いエゾオナガバチ、オオホシオナガバチ、名前不詳のヒメバチの仲間、ニホンヒラタタマバチ等、普段見ることのない昆虫類を楽しみました。(ツマグロハナカミキリとヤツボシハナカミキリはよく似ており、かつ個体差があるので識別が難しい)

エゾオナガバチの雌 ツマグロハナカミキリ ヒメバチの仲間

 5月 8日 湧水公園ではクロスジギンヤンマ、アオモンイトトンボ、シオカラトンボ等が飛び始めました。タコノアシも発芽して10pほどの高さに成長していました。早朝に庭のカキの木では羽化したばかりのナガサキアゲハの綺麗な雌が止まっていました。15時頃には雄のナガサキアゲハが飛んでいました。今年はナガサキアゲハの羽化が早いようです。今日もカタバミの葉にはヤマトシジミが飛来して小さな卵をたくさん産みつけていました。

 5月13日 昨夜の台風6号は何事もなく過ぎ去ってくれました。雨降り後の草木は生き返ったようにのびのびとしています。庭ではツマグロヒョウモン、ヒメジャノメ、キンケハラナガツチバチ、ルリチュウレンジバチ、オオクロクシコメツキ、オオナガコメツキ、クロウリハムシ、ホオズキカメムシ、等が活発に動き回っていました。

夜になって、20時過ぎにホトトギスの声が聞こえ5分ほど鳴いていたので、おそらく鳩ヶ谷中央病院当たりの林で鳴いていたのではないかと思います。市内でのホトトギスは久しぶりです。旧鳩ヶ谷市内では1995年5月30日、2008年5月8日に鳩ヶ谷中央病院の林での記録があります。

 5月15日 庭のビワの葉にアカジママドガという蛾の仲間が止まっていました。我が家の庭では初めてです。また、ツバキには7枚の葉上にチャドクガの幼虫が沢山並んでいました。道路際にあるので通行人に被害があるといけないので駆除しました。

 5月17日 午前11時過ぎに本町3丁目でカッコウが鳴いていました。カッコウの初鳴き全国調査によると、2012年は5月21日〜31日に集中している傾向がありました。

庭では今年4度目のアトジロサビカミキリとオオクロクシコメツキ4匹がいました。

 5月24日 久しぶりに赤山歴史自然公園予定地を歩いてきました。工事が進んでいないのでガマやヨシ等の水辺の植物の草丈が伸びてきていました。来月に入ると胸の高さを超えるようになるでしょう。ハラビロトンボ(15)、シオカラトンボ、オオシオカラトンボ、サトキマダラヒカゲ、モンキチョウ等の昆虫が目立ち、コジュケイ、シジュウカラの声がよく聞こえました。コチドリは3番繁殖しているようです。

 5月27日 飯能市と秩父市および東京都の境にある有馬山周辺を歩いてきました。ニホンツキノワグマ、ニホンカモシカ、ホンシュウジカの足跡が多く、キツネが歩いた後の臭気も所々でありました。ここでは、以前はスズダケが繁茂していましたが、気候変動による積雪量減少に伴う冬季のシカの死亡率の変化やシカの食害などにより、スズタケは殆どが枯死してしまいました。名栗湖のダム周辺ではニホンザル5頭にも出会いました。一つの植物相がなくなるだけで生態系全体に影響が出ることが一目瞭然にわかる場所でした。

ニホンツキノワグマの足跡 ビロードハマキ(蛾の仲間)

 5月28日 鳩ヶ谷本町2丁目の民家前の路上でオオスカシバが飛び回っていました。最近はクチナシを植える家庭が少なくなってオオスカシバも産卵場所に苦労しているようです。

 5月29日 安行の植物振興センターに出かけました。クロアゲハ、アゲハチョウ、アオスジアゲハ、モンシロチョウ、スジグロシロチョウ、ヒカゲチョウ、ウラナミシジミ等が飛び回り、クリの花にはサトキマダラヒカゲ、ツマグロヒョウモン、キマダラセセリ、アオカミキリ、オオミズアオ(水色の大きな蛾)の幼虫等が集まっていました。その他、ヤハズカミキリ、ヤマトシリアゲ等。ヤハズカミキリの名前は翅の先端が「矢筈(矢の弦に掛ける部分/矢羽)」に似ているところから名づけられたようです。

(口永良部島では火山性の水蒸気爆発があり、島民全体が避難、明け方には川口市では震度4の地震がありました)

 5月30日 自宅庭の枯れ木でアトジロサビカミキリ(5頭)、サトキマダラヒカゲが柿の木の周りを飛翔し、孵化直後のオンブバッタが玄関ドアに止まっていました。(夜になって8時30分頃に小笠原諸島でマグニチュード8.5の地震が発生して、川口市周辺は震度4〜5弱の揺れが数分間続きました。ここの所、関東地方も大きめの地震が発生しています)

ナガサキアゲハ(雌)  クロアゲハ(雌)

 

地球温暖化を考える(84)

川口市安行原の九重神社(通称 ひかわさま)の杜

川口市安行は大宮台地の南端に位置し地名の由来は「昔、中田安斎入道安行というものが領せし地なるをもって、実名を取りて名とすと云」(新編武蔵風土記稿)と伝え、中田安行は初期荘園開発当時のこの地の名主とみられている。現在名は安行内の旧原村で、徳川幕府の御領地となり、更に東叡山領(上野寛永寺)が置かれたと言われている。大宮台地が舌状に突き出た先端部に鎮座しているのが九重神社です。この丘を地内の人々は古くから久保山と呼んでいました。当社の創建は別当密蔵院の中興である第16世法印栄尊が享保年間(1716〜36)に、武蔵の国一の宮氷川神社(大宮氷川神社)の分霊を勧請したと伝えられているが定かではない。旧境内には樹齢500年以上のスダジイの大木が2本あり、大きく枝を広げています。川口市指定の保存樹木でもあり、内1本は幹回りが6.5mとのことで、記録されているシイの大木では埼玉県下第一とも言われています。この久保山一帯は野鳥の森に指定されています。以前は、御岳山の裏は林になっていましたが、現在は密蔵院から続く墓地となり明るく開けていますが、見通しが良くなった分、筑波山や日光連山が望める場所となっています。九重神社、密蔵院、安行小学校、安行原自然の森と続く緑地帯は川口市でも少なくなった斜面林の一角をなしています。夏の暑い日に、このあたりの緑地帯を歩くとさわやかな風に吹かれて、クーラーに当たっているよりもすがすがしい気分になります。これからの季節はこのような林の中で涼をとるのもよいかと思いますが、ヤブカが多いのが難点です。この地域には昆虫類も多く、野鳥ではオオタカをはじめフクロウ、オオコノハズクなどの猛禽類が確認されており、過去には埼玉県で1例だけ記録のあるマミジロキビタキも観察されています。

樹齢500年以上のスダジイ フクロウが営巣しそうな洞 御岳山